59、降臨
「おぉ、ある意味凄いなー」
狂信者の残骸を分解処理した後、大聖堂の裏側、住居部分に入ってみたのだが……。
「何というか、派手派手ね」
金ピカ、ゴテゴテで、ヒカリの言う通り派手派手な趣味の悪い感じだった。
「何がしたかったんでしょうね」
「もっとマシなお金の使い方がありそうですけど」
アリスとフェリも戸惑い気味だが。
「このまま壊すと後で回収するのは無理ですね」
「……ご主人様、これらの素材となっている貴金属は有用では?」
カーラとリリィは見る角度が違うらしい。
「そうだね、やってみようか」
壁に手をつき、建物全体に魔力を通す。
イメージとしては、『土槍』などの物体の形を変えて攻撃する魔法。
「「おぉ~!」」
壁や柱を彩っていた貴金属が、宝石が、液体のように形を変えて流れ落ちる。それらはオレの足下に集まると、あっという間に貴金属のインゴットと宝石の山を築いた。
「結構あったね」
全部合わせるとトン単位の重さがありそうだ。こんな事が出来るのも、《無限の魔力》というチートと、レベルアップで高まった知力値による処理能力があってこそだろう。
「これだけあれば大丈夫そうですね」
「うん、心配が一つ減ったかな」
ソーグノ教を潰した後の、この国の行く末が心配だったのだが、この財貨があれば何とかなりそうだ。アリスも一安心という感じだった。
「じゃあ、次行ってみよう」
それらをアイテムボックスに入れてしまうと、「ネコババしちゃダメよ」なんて悪そうな顔で言うヒカリの頭にチョップを落としながら、さらに奥へと向かう。
「うわー。ここも凄いな」
そこは、この大聖堂の地下、自称神(笑)の研究室だった。
定番とも言える、試験管やビーカーのような物から、ガラス製の管などを組み合わせた実験器具らしい物などが雑多に置かれている。しかし、やはり目を引くのは、一番奥に備え付けられた物だろう。
アニメや漫画などでは、大きなガラスの水槽があり、作りかけのホムンクルスなどが浮いていたりしそうな場所。技術力の問題か、残念ながらそこにあるのは巨大な木製の樽だ。しかし、縁付近までの足場が組まれていたり、幾本もの管が繋がれていたりする様子は、なかなか雰囲気がある。
と、ここで。
「ここで様々な改造人間が生み出されたのですね!」
こちらをチラチラ見ながら、そんなことを言うフェリ。どうやら渾身のボケを披露してくれたようだが。
「……ごめんフェリ。それ、ツッコミにくいわ」
狂信者という、やられたら爆発する改造人間もどきが、実際に作られていたであろう場所。あながち間違ったことも言っていないのだ。
「まだまだ甘いわね、フェリ。見てなさい」
と言うヒカリ。
「ここが、本郷◯が改造された場所なのね!」
「いやいや、ここ◯ョッカーの秘密基地じゃないからね!」
そのヒカリのボケに、思わずツッコんでしまった。それが面白いかどうかはともかく、やはりこの辺りは同じ世界出身のヒカリと一番波長が合うようだ。
「くっ……。まだまだ勉強不足でした」
がっくりと項垂れるフェリ。
後で、その勉強は止めるようにお願いしておこう。ヒカリみたいなのが二人になると手にあまる。
そんなことをしていると。
「う~ん……。あまり使えそうな物はありませんね」
嫁たちの中で唯一、錬金術に理解のあるカーラが色々と見て回った結論がこれ。
錬金術において卓越した技術を持っていた自称神(笑)。しかし、卓越し過ぎていたがゆえに、その設備は他者には利用出来ない、価値の無い物になってしまっているらしい。
(研究内容も問題がありそうだしね)
人体実験をしていたとも言っていたし、世に広めて良さそうな物でもないだろう。
「こんなところかな」
巨大な樽の中も空だったし、はるか昔の文献にも興味があったのだが、それも発見出来なかった。
もう一度、壊すとマズい物や価値のある物が無いか確認しながら大聖堂から出ると、少し離れた背の高い建物の上へ。そこで『光学迷彩』を発動し、オレたちの姿を消す。
「じゃあカーラ。派手にやっちゃって」
「お任せ下さい!」
そろそろ夜が明けそうな時間帯。
「~~『蒼き轟炎』」
ちょっと中二の気配漂うカーラの魔法が発動。超高温をイメージしたのであろう蒼い炎が、瞬く間に大聖堂を焼滅させていく。まだ薄暗い空に、轟音を響かせながら立ち昇る蒼炎は、さながら光の柱のようにも見える。
その発動時間は、五分にも満たなかっただろう。しかし、十分に人の目には触れたようだ。窓を開けて見ていた人々が、家から出て集まり始める。
そこで。
(……『整地』)
大聖堂跡地に残る熱を消し、押し固めて真っ平らに均す。
(次はこれ)
続いて、はるか上空に創った物を加速して落とし、均した地面の中心に打ち込む。
再び響く轟音、そして舞い上がった砂煙りが晴れた後、そこには高さ2メートル、幅50センチの柱があった。
「……な、何が」
「おぉ、大聖堂が……」
集まった人々が騒めく中、再び光の柱が現れ。突き立った柱を中心に天と地を結ぶその中を、輝く人影がゆっくりと降りてくる。
そして、柱の上に降臨したのは、煌めく黄金の髪を持ち、翼を広げた美しい女性。
「人々よ、お訊きなさい――」
そう、これが第二の作戦。
(神が居ないのなら、作ってしまえば良いじゃない大作戦だ!)
信仰とは、根の深いものだろう。それを無かったことにするのは難しい。ならば、新たな信仰の対象を作ってしまえば良い。この作戦を告げた時の嫁たちの(ry
「――神を騙った罪人は、ここに滅しました。しかし、そのことで迷える人々が出るのを我が主は望まれません。然れば、ここに道を示しましょう」
天使を模した彼女は、あらかじめ作っておいた精霊だ。知識の指輪から得た政治関係の知識を詰め込んであり、大聖堂で得た財貨もすでに渡してある。後のことは任せて大丈夫だろう。
本当は、神を演じてもらうはずだったのだ。しかし、「自分はマスターの使いです」と、頑として譲ってくれなかったのだ。面倒事を丸投げしている自覚があったため、あまり強くも出れず、天使役ということになった。
(これが、反抗期の子供を持つ親の気持ちというやつだろうか)
そして柱の方だが、素材は白金で、不壊と位置固定、さらに、「近寄ると少し体調が良くなるかな?」というくらいの治癒(弱)を付与。地下10メートルの深さまで刺さっていて、地上に出ている面には良さげな言葉を刻んでおいた。
一、一日に一度は他者の役に立ちなさい。
それは巡り巡ってあなたに返ってくるでしょう。
一、自分がして欲しく無い事を、他者に行ってはいけません。
自分がして欲しい事を、他者がして欲しいと思うとは限りません。よく考えなさい。
……などなど。かなりウザい気もするが、それが神の言葉となれば、また違う気持ちで見れるだろう。……たぶん。
この柱のある場所が聖地的な扱いになり、観光地になる事を期待してやってみた。
「じゃあ行こうか」
「「はい」」
神々しい光を放って都市中の怪我人と病人を癒したことで、かなり本物感も増したことだろう。
(北に封じられた脅威、か)
本来なら、もう少しここで様子を見たかったのだが、自称神(笑)の残した言葉も気にかかる。五千年以上前に封じられたものが、今どうなっているのか不明だが、見に行かない訳にもいくまい。




