表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/104

58、決着

 

 

「……完全復活!」


 Aランクチャラ男との対決から二日。起き抜けに、元気いっぱいな宣言をするカーラ。

 昨日は一日ゆっくりした。……そう、ゆっくり(たっぷり、ネットリ、時には他の嫁たちを交え、カーラと致)した。ステータスによって高まった体力値などの恩恵を存分に感じる、有意義な一日だったと言えよう。


(出発前にイジメるって言っといたからね!)


 実際、今日のカーラは晴れ晴れとした表情をしている。何も問題は無い。

 そんな感じでシェルターを出て、騎獣に跨る。


「よし、じゃあ行こうか」

「「はい!」」


 どうやら、こちらの存在を知られてしまったようだが、ソーグノ教を潰すという方針に変更は無い。


(むしろ好都合かもね)


 狂信者が一人も帰って来ないことで、警戒して戦力を集結してくれれば、それは一気に殲滅するチャンスとなるだろう。


「そういえば、チャラ男が運んでた荷物って何だったの?」


 チャラ男が受けていた冒険者ギルドの依頼は完了しておかないと、誰かに迷惑がかかってしまう。


(オレたちが運べば、襲われる可能性も低くなるかな)


 まさかチャラ男以外の人間が運んでいるとは思わないだろう。


「アキラくん……」


 なぜだろう、ヒカリが呆れたような顔をしている。他の嫁たちを見るが、カーラ以外には気まずそうに目を逸らされてしまう。

 どうやら、同じく分からないらしいカーラと目を合わせ、一緒に首をかしげる。


「アイツ、それらしい物は何も持ってなかったわ」

「どういうこと?」

「つまり、私たちがその荷物で、まんまとここまで運ばれて来ちゃったってことよ」


 ということらしい。


「あー、なるほどね……。あっはっは、それはまんまとやられちゃったね」


 そもそも、オレたちをここまで連れて来るのがチャラ男の目的だった訳で、そのために本当に依頼を受けておく必要はない。

 少し考えれば、分かりそうなことだった。自分がボケ過ぎていて、騙してくれたチャラ男に腹も立たない。


「さすがに、丸一日はヤり過ぎだったのではないですか?」


 頬を染め、アリスが申し訳なさそうに言う。

 昨日も、他の嫁たちが混ざりに来ていたと思っていたら、心配して様子を見に来ていただけだったらしい。

 再びカーラと目を合わせ。


「「ごめんなさい」」


 揃って謝った。

 これが色ボケというやつだろうか。

 

 

ーーーーーー

 

 

「で、どんな感じだった?」


 適当な建物の屋根の上に設置したシェルター内。それぞれが得てきた情報を聞く。

 今日は、メンヒスを出発してから十六日目。昨日一日で二日分の距離を駆け抜けると、気配を消し、夜闇に紛れて防壁を越え、都市国家・ソーグノ神聖王国に入った。


「王城には狂信者が一人来ました。朝に登城して王の近くに控え、日が暮れると帰って行きましたね」

「城内の様子は少し暗い感じです。全ての人が、何かに怯えた様子でした」


 と、アリスとフェリ。


「街も暗い感じです。活気がなく、疲れた様子です。スラム化している地区もありました」

「……市場の商品ですが、高い税がかかっているそうで、どれも割高です。ここが交通の要衝でなければ、とっくに破綻していますね」


 と、カーラとリリィ。


「都市への人の出入りなんだけど。リリィが言ったように訪れる人は多いんだけど、ここを迂回する人たちもかなり居たわ」


 と、最後にヒカリ。

 オレは大聖堂の様子を見て来たのだが、市民へ粗末な食事を施していた。


「それにしても、炊き出しですか」


 呆れたようにアリスが言う。

 都市に入る前から、Aランクチャラ男など及びもつかない強さの気配を感じていたが、それが居るのは大聖堂の中。そして、登城した狂信者が帰るのもまた、大聖堂である。


「とんだマッチポンプなんだけど」


 と言うヒカリも呆れた表情。

 この国で、政策とソーグノ教が無関係だと思っている人は居ないだろう。市民に恩を売る手段として、あまり賢いやり方とは思えない。


(何がしたいのか、いまいち分からないな)


 狂信者の宣教師バージョンの方が終末を説き、無個性な狂信者が争乱を起こそうとする。一見、良くありそうな感じなのだが、ソーグノ教の場合、ここに救いをもたらす気があるとは思えない。


(直接聞くしか無いか)


 と結論。


「じゃあ、二日くらい様子を見ようか」


 もともとの到着予定が今日になるので、数日は敵戦力の動きを見てみよう。

 

 

ーーーーーー

 

 

「じゃあ、行こうか」

「「はい!」」


 深夜、日付が変わる頃、一旦都市外に出てから隠密を解除。気配を抑えめにして、再び防壁を越える。

 二日、様子を見たが、都市にも大聖堂にも変わった様子は無い。そもそも、この都市に来た時から、大聖堂内には大きな気配と狂信者しか存在していなかった。


(待ち構えているのか……)


 ただ単に、ホムンクルスという、絶対の忠誠を持つ物以外を信用していないだけか。


(まぁ、どちらでも良いか)


 大きな気配ではあるが、今なら苦戦するほどのレベルでもないのだ。取り巻きが居ようが居まいが問題無い。もしも、秘めた力なんてものを持っていたとしても。


(その時は、チートで押し通る!)


 決意を新たにしながら(?)、建物の屋根から屋根へ跳び、真っ直ぐ大聖堂へ向かう。


「さて、何が出るかな」


 大聖堂正面の入り口をくぐりながら呟くと。


「アキラさんの敵となったことを後悔させてあげます」


 殺る気のアリスが答える。

 中央通路を半ばまで進んだところで煌々と明かりが(とも)り、正面の奥、十段ほどの階段で高くなった祭壇に立つ人影を照らしだした。


「ふむ、入り込んだネズミを見に来てみれば、まだ子供ではないか……。我こそは神なり。無知なる者どもよ、礼儀を(わきま)えよ」


 偉そうに(のたま)い、ジワリと威圧感を強める自称神(笑)。見た目は、四十ほどの貧相な学者という感じだ。


(う~ん……、裏側が見えてると興ざめだね)


 暗い中をいそいそとスタンバる自称神(笑)の姿や、コソコソと明かりを点ける狂信者の姿が、探知によって丸分かりだったのだ。少し申し訳ない気さえしてくる。


「バ、バカなー。まさかバレていたなんてー」


 アリスさんェ。照れるくらいなら、配役に立候補しなければ良いのに。


「アキラさん! これは私たちでは無理です。早く逃げましょう」


 対して、フェリはノリノリで演じている。

 そう、これは今回の作戦の一つ。


(不利なフリして本音を聞こう大作戦だ!)


 ヒーローが追い詰められた時、悪役は饒舌になるものなのだ。この作戦を告げた時の嫁たちの温かい視線が忘れられない。


「フフフ、ハァッハッハッハ。無駄だ、愚か者め」


 自称神(笑)の言葉と共に、オレたちを囲むように姿を現わす狂信者が二十匹。これも、明かりを点けた後、ダッシュで配置に着く様子が分かっていた。


「あー、もうダメよー。逃げられないんだわー」


 アリスが真っ赤になって頑張っている横で、オレは『不発領域』を展開。


「ここまで、か。なぁ、なぜ魔物を操り、争いを起こそうとするんだ? (お前が)死ぬ前に教えてはくれないか」


 アリスの照れがうつって、声が震えそうになった。あまりアリスに文句を言えない。

 なんて思っていると。


「ククク、哀れな虫ケラよ。良かろう、話して聞かせよう」


 どうやら語ってくれるらしい。


(おお、こいつノリがいいな)


 意外と良いヤツかもしれない。

 

「理由は簡単なこと。虫ケラどもの苦しみ、悲しみ、怒り、それこそが我にとって何よりの喜びだからだ。そして、それは我から近ければ近いほど、より強く感じる」


 前言撤回。こいつクズでした。


「そもそもの起こりは、およそ千年ほど昔になるか――」


 自称神(笑)が語ったところによると。

 かなり昔に生まれ、錬金術を生業としていたらしい。そしてある時、狼が魔狼に成るのを目撃。人もまた、より高みに至れるのではと考える。

 そして、その時の狼の手段を真似て、人を大量虐殺。


「そして、我は超人となった」


 と、ドヤ顔の自称神(笑)。


(超人は却下だな。魔人と言う方が相応しいだろう)


 そのあたりで、流れ込む周囲の人々の悪感情に喜びを感じるようになり。その後、老いなくなった体で錬金術の研究を進め、ホムンクルスを完成。より効率的に悪感情を集めるために国を起こしたそうだ。


(誰かに聞いて欲しかったのかね?)


 話の途中で立ったまま寝始めるカーラに時々念話で注意しつつ、聞いた内容がそんな感じだった。


「つまり、すべては人々を苦しめるためだった、と」

(しか)り。今では、進化をもたらす秘薬さえも錬成に成功。そして、我はさらなる高みへと至り、神人となったのだ! さあ、我が子らよ。今こそ、その力を解き放ち、この虫ケラどもに超人の力を見せてやるがよい!」


 自称神(笑)の言葉を聞いた狂信者どもは懐から取り出した何かを口に含む。


「「ぐ、ゥウ……」」


 苦しみだす狂信者ども。次の瞬間、先ほどまでの自称神(笑)を超えるほど気配が大きくなる。しかし、それは二十匹のうちの十五匹で、残りは弾け飛んで壁と地面にシミを作っている。さらに、進化(?)を果たした十五匹も、その姿は人の形を逸脱している。


「チッ……。魔物なら正当な進化をするのだが。やはり超人からの進化でなければ負担が大きすぎるか」


 ボソッと呟く自称神(笑)の言葉が聞こえた。


「まあ良い……。さあ、絶望を我に(きょう)せよ」


 恍惚とした表情を浮かべる自称神(笑)。正直、気持ち悪い。


「なるほど、ね」


 と、わざわざ大きめの音を出して剣を納める(・・・・・)

 つまり、このままレベルアップを続けると、オレたちも魔人に、さらには神人に成り得るということだろう。


(まぁ、それはどうでも良いか)


 フェリより先に死なないという約束は、目処が立ったと言えよう。

 魔人に成ると強制的にクズに堕ちる場合は問題があったが、自称神(笑)はもともとがクズだったようだ。心配はいらないだろう。


(老いないというのは、イコール死なないという訳ではないよね)


 終われないというのは苦痛でしかない。何より、今から自称神(笑)を殺さないといけないのだ、死んでくれないと困る。


「なん、だ? お前、今何をした?」


 自称神(笑)が、やっと気付いたようだ。オレが、直前まで抜いていなかった剣を納めたことに。

 その瞬間、狂信者十五匹がそれぞれ八分割され床に落ちた。


「なんだ!? 何が起きた!!」


 レベル10の『身体能力強化』と『思考速度上昇』の併用による『光速行動』だ。今の所、毎秒六十回の斬撃までは、「北壁」を斬った超破壊が起こらないことを確認している。


「あーあ、アキラくん」


 戦えないことを残念がるヒカリには悪いが、自称神(笑)の心を完全に折る必要があると感じたのだ。


(精神生命体かな?)


 オレが知るファンタジー知識によると、他者の悪感情を喰らう存在と言えばそれだ。そして、それを滅する手段の一つとして、絶望を与えるというものがある。


「おのれ虫ケラが! 良かろう、お前を脅威であると認めよう!」


 自称神(笑)の気配が爆発的に膨れ上がる。その強大さは、自らを神と称したくなるのも分からなくはない。

 だが……。


「ぐばぁっ!」


 自称神(笑)が縦に真っ二つになる。

 ステータスのシステムで効率よくレベルアップし、《無限の魔力》というチートを持つオレの脅威ではない。なにより、近接戦闘するタイプでもなさそうだ。

 それよりも。


(痛みを感じている?)


 ということは、半精神生命体というところか。

 肉体という(かせ)があるが、絶望のみでは滅ばない。そんな感じだろう。

 と、見る間に体が繋がり再生する。


「ぎゃ! ヒギッ! がぁっ!」


 タイムラグ無く『光速行動』を発動しては解除し、両断、再生、両断、再生、両断、再生。


「馬鹿な! あり得ない! グハッ! やめっ! ひぃっ!」


 少し休んで、両断、再生、両断、再生、両断、再生。


(どのくらいで滅んでくれるのかな?)


 少し休んで、と、ここで自称神(笑)が何か筒状のものを咥えて吹く。


「クハハ、馬鹿め。余裕ぶりおっt……ゲッ! がっ! コッ!」


 両断、再生、両断、再生、両断、再生。


「話を聞かんか!」

「……何だ?」

「これが何か分かるか? 犬笛という物だ。そろそろ噂くらいは聞いていよう。そう、「北壁」が割れたという話だ。今、それを成した我が眷属を呼んだ。その後、どこかフラフラ遊びに行ったようだが、これで呼べば直ぐに来る!」

「……ほう」


 そもそも、魔狼に成るのを見た狼というのは、自称神(笑)が飼っていたらしい。その用途は、錬金術の実験に使った人体の廃棄用だったそうだ。


「ヒヒヒッ。最近、世界に満ちる正の感情が強くなっておった。それをひっくり返すのに最適な物が「北壁」の向こうに眠っておるのだ」


 自称神(笑)が文献から得た情報だが。

 はるか昔、五千年以上昔の話だ。当時は戦乱が多くあり、魔人、神人も多く居たらしい。そこに大きな脅威が現れ、神人、魔人が総力を尽くして北に追いやり、「北壁」で封じ込めたのだそうだ。


「ヒヒヒッ。「北壁」さえ物ともしない我が眷属、神狼によってその脅威を管理すれば、永く虫ケラどもに苦しみを与えられるだろう」

「神狼、ね」


 アイツの事だろう。

 確かに、防御フィールドをあっさり嚙み砕ける攻撃力の持ち主だ。時間をかければ、「北壁」に穴を開けることも出来たのだろう。

 しかし。


「そいつ、オレが殺したわ」

「……は?」


 いろいろ面白い話も聞けたが、もう十分だろう。

 自称神(笑)を蹴り上げ、その半分を巻き込むように、上空に超破壊を起こす。


「ぐ、おぉぉおぉ……。馬鹿な……、まさか本当に?」


 落ちて来た自称神(笑)が再生を始めるが、その半身は大聖堂の上部と共に消滅したためか、再生に時間がかかりそうだ。


(いや、端から崩れてるか?)


 試しに、とオレが剣を突き付けると。


「ひ……」


 一瞬で崩れ去った。

 綺麗に気配も消えたことから、ちゃんと心折れて滅んでくれたようだ。


(やれやれ)


 と振り返ると。


「あぁ……、アキラさん」


 大聖堂に空いた穴を見つめて、カーラが悲しそうにしていた。


「……残りはカーラが壊して良いから」

「約束ですよ!」


 さて、第二の作戦を発動しないとね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ