45、王都クアーシュ・その一
「……う~ん」
王都クアーシュ到着の翌日、朝から街を見て回ったのだが……。
「いまいち活気がありませんね」
とフェリが言うとおり、何だか街に元気がない。
「冒険者が少ないかな?」
「……商人も少ないようですね」
と言うのはカーラとリリィ。
事前にアリスから聞いていた話によると。王都クアーシュ周辺は魔物が少ないため、冒険者への魔物討伐依頼はほとんど無い。そのため、王都に居る冒険者のほとんどは、住んでいるのではなく商人の護衛として立ち寄った者たちだ。
ということで、活気がない理由は。
「王都に来る商人が少なくて経済が回ってないってこと?」
というヒカリの説が有力だと思われる。
「……かな?」
王都は、豊富な海産物を仕入れるために多くの商人が訪れる都市。少なくとも数年前、故郷を訪れた商人からアリスが話を聞いた頃はそうだったらしい。
(問題は、なぜ商人が来なくなったのか、だね)
ちなみに、クアスル王国に入ってからそれらの話を嬉しそうに聞かせてくれたアリスは、現在オレの腕にしがみ付いて不安そうにしている。
(故郷が飢饉になったときに雰囲気が似ているのかな?)
他の娘たちもいまいち冴えない表情で、せっかくのよそ行きのお洒落着が台無しである。
(少し調べてみるか)
べ、別にアリスのためとかじゃないんだからね!
ーーーーーー
「あぁ、商人たちか。何か税が上がってな」
昼食を買うついでに屋台のオヤジに聞いてみると、商人が来なくなった理由はあっさり分かった。
「ほう、税が」
「そうなんだよ。俺たちのも上がったんだが、商人が都市から持ち出す物にかかる税がバカみたいに上がったらしい」
「なるほどね。オヤジさんの商売は大丈夫なのかい?」
「まぁ、今のところは、だな。このまま行くとちょっと厳しいだろう」
「ちなみに、税が上がった理由とかは?」
「いや、お偉いさんが何を考えてるかなんて俺らには分かんねぇよ」
どうやら、輸出税? のようなものらしい。
税が高い、すなわち悪。ではないことは分かっているが、現状を見る限り、税の使い道も不明で良い政策ではなさそうだ。
「よし、城に行ってみるか」
王都クアーシュは、その面積のほとんどが埋め立て、と言うか石積みの土台だ。そして、その中心にある唯一の陸地である小さな島、そこに王城と貴族街がある。
これまで訪れた都市に関しては一般人の立ち入りが出来なかったこともあり、城や貴族街に近付くのを避けてきたのだが、今回はあえて潜入してみようと思う。
「税の使い道を調べるつもりなの?」
「そうそう。まぁ、簡単に分かるとは思ってないけど、とりあえずお偉いさん達がどんな話をしてるのか聞いてみようかと」
と、聞いてきたヒカリには答えたが。
(肥え太った王様とか、横領してそうな貴族が居たら退場してもらおうかな)
と思っている。
知らない王侯貴族の命よりウチの娘たちの笑顔、なのだ。
「じゃあ、午後はみんなでお城見学ということで」
「「はーい」」
まだ見ぬ城内への期待か、アリスも少し元気が出たようだ。
ーーーーーー
「グフフ、上手く行っておるな」
……アウトっぽい奴もあっさり見つかってしまった。
クアーシュ王城は、華美な装飾も無く落ち着いた雰囲気の城で、王様は健康そうな老人だった。そんな中、あっさりアウトっぽい奴に見当がついた理由は。
「はい。もうウーファ様に逆らえる者は居りません」
こいつが居たからだ。
財務大臣のウーファ様とやらも、ブクブク太ったいかにもという感じのクズだったのだが、それ以上に問題があった。
財務大臣の付き人であるそいつの特徴を表すのはただ一言、無個性。そして、オレはこいつを知っているのだ。
(どういうこと?)
ウルーク王国の城塞都市ハルエヌ、そこで自爆しやがった印象の薄い狂信者。どこからどう見てもそいつにしか見えない。
〈どうかしましたか?〉
狂信者の顔をまじまじと確認して動きを止めたオレに、アリスが念話で話しかけてきた。
今いるのは城内の一室、財務大臣の執務室と思われる部屋。二人一組で手分けして情報を集めている途中、見つけたゲス顏の脂肪の塊を追いかけて今に至る。
ちなみに、全員『光学迷彩』で姿を消しているし、侵入者探知や魔法検知などのシステムも無いようだ。
〈いや、ちょっと見覚えのある生き物だったからね〉
似たようなのが何人もいるかもとは思ったが、まさかの同じ顔。ひょっとしたら双子というオチもあり得るのだが、ここは異世界。人間ではない可能性も考えておいた方が良いのではないだろうか。まぁ、そもそもの話、オレ的に狂信者は人間に分類されないのだが。
「グフフ、ワシが次の王となるのだ」
いろいろ考えているうちに話が進んだようだが、最後の発言だけでもアウト認定出来そうな気がする。
〈みんな、情報をまとめにいったん戻るよ〉
〈〈了解〉〉
〈街に元気が無かったのはこの人たちが原因のようですね。……罪を償ってもらいましょう〉
どうやらアリスさんがお怒りのようだ。




