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ありふれた異世界転生もの  作者: てきとうな人
ウルーク王国編
24/104

24、深夜徘徊

 

 

「今日はこの辺りで休もうか」


 ナルチ村を出発してから五日目。

 いつもより少し早い時間に、今日の旅程の終了を宣言した。なぜかと言うと、三人よりほんの少し広いオレの探知範囲の端に、人の集団を発見したからだ。

 気配があるのは、街道を外れた山の斜面の中。おそらく洞窟の中にいるのだろう。さらに、十六人という人数と、周囲に魔物の気配がないことから、冒険者である可能性は低いと思う。

 ということで、おそらく盗賊だ。


 いつもなら全員で行くのだが、今回はオレ一人で行くつもりだ。実戦は何よりも大きな経験になるだろう。オレが強くなるための糧になってもらう。


(……って。狙われもしないうちに、こちらから全滅させに行こうとするとはね。オレもかなりこの世界に染まって来たのかな? )


 今さら盗賊ごときの命なら、奪うことを躊躇したりはしないが。元の世界にいた頃のオレが赦せないような、そんな人間にはなりたくないものだ。

 

 

ーーーーーー

 

 

「さて、行きますか」


 そして夜。

 三人を寝かしつけてから出てきたが、早めにシェルターに入ったおかげか、まだ日が変わって間もないくらいだろう。

 暗視と身体能力強化を発動して移動すると、五分ほどで洞窟が見える場所に着いた。

 洞窟の前に焚き火があり、見張りが一人。入り口は板で塞がれ扉が付いているようだ。


(さて、どうしたものかな)


 可能性は低いと思うが、盗賊ではなかったら困る。


「……『幻影変装』」


 ここは素直に姿を現わすことにした。ただし、村娘のような服を着たアリスの姿で。


「誰だ!」


 ガサガサと大きな音を立てながら姿を見せたが、洞窟の中に知らせる様子はない。


「……申し訳ありません、明かりが見えたもので。あの、道に迷ってしまったのですが」


 さらに近付く。

 他の気配は入り口から離れた所に居る。声が届くとは思えないので、何か知らせる手段があると考えた方が良いかもしれない。


「ほう、上玉じゃねぇか。ククッ、わざわざ盗賊の隠れ家まで犯されに来るとは物好きなヤツだな」


 左手に持っていた紐を離し、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべると。


「こっちに来な、お嬢ちゃん。逃げたら殺しちまうぜぇ」


 ゆっくりと見せつけるように剣を抜き、突き付けてくる。


(はい、アウト~。で、左手に持ってた壁から出てる紐が、奥に知らせるためのものだったと……)


 あぶないあぶない、と少しホッとしながら剣を抜き打つ。


「今いるヤツには飽きていたからちょうど良……、え?」


 盗賊が、頭を失った自らの体が崩折れるのをキョトンとした顔で見ている。地面に転がってからも少し意識があったようだ。


(今のは我ながら綺麗に斬れた気がする♪ って、それどころじゃないな、最後に気になることを言ってた)


 どうやら囚われている人が居るようだ。一つ、他より弱い気配があるので、これではないだろうか。


(面倒なことにならないと良いのだけれど……)


 変装を解き、改めて気配を殺すと、音がしないように気を付けながら扉を開けて中に入る。

 人の手で整えらたと思われる真っ直ぐな洞窟を進むと、分かれ道なく扉に到達。扉から近い気配は十二。気配の散らばり方から、広い空間があると思われる。


(気配は低い位置にあって動きはないし、何よりも、いびきがうるさい。間違いなく寝てる)


 少し扉を開けて中を覗き、寝ているのを確認。床に枯れ葉を敷き詰め、その上に汚い布を乗せて寝床にしているようだ。

 一番近い所から順番に、剣で首を突いて息の根を止めていく。


(残る気配は三つ。一番奥がボスかな?)


 広間の奥の扉の先はまた通路になっていて、途中の左右に扉が一つずつ。その左の扉の向こうに、弱い気配ともう一つ別の気配。


(先にこっちかな?)


 左の扉の中を確認しようとすると、気配が扉に近付く。ちょうど良いタイミングで出て来るようだ。

 扉は内開きのようなので、取っ手側の壁に身を隠す。

 先に見えたのは、ねじくれた木の杖。続いて、目深にフードを被った薄汚れたローブ姿が出て来る。


(魔法使いか!)


 話を聞くには向かないと判断して、横からサクッと首を貫く。

 貫いたままの剣で魔法使いの体を支えて部屋の中に入ると、音がしないように魔法使いの体を転がす。

 すえた臭いのする部屋の隅には粗末なベッドがあり、そこには、手足を半ばから断たれた裸の女性が縄で固定されていた。


(チッ! もっと苦しめてから()るべきだったか)


 濃青色の髪と瞳を持つ女性は、際立った特徴を備えていた。それは、犬のような耳とフサフサの尻尾。そう、獣人さんなのだ。


(うわ~、もったいない)


 その顔は薄汚れていてもなお、美しいことが分かる。その失われた笑顔は、どれほど魅力的であっただろうか。


(それにしても、理解出来ないな……)


 女性の首には奴隷の印である青い線がある。動けなくする必要があるとは思えないのだが。

 そんなことを考えながら拘束を解き、体の外も中も魔法で洗浄して清めてから、超再生回復薬を創って口に流し込む。

 さらに、創った清潔なローブで包んでから清めたベッドに横たえる。


(さて、どうしたものかな……。大丈夫か? などと問う訳にもいかないし)


 大丈夫なはずはない。何よりも、目は開いているのだが、(手足の再生も含めて)処置する間まったく反応がない。

 光を失った目で、ただボンヤリと天井を見ているだけなのだ。


(とりあえず、後回しにするか)


 まだ一人残っているのだ。そちらを先に処理しよう。

 動く様子のない女性をベッドに寝かせたまま、その部屋を出る。


「ここまで気づかれるほどの音は立ててないつもりだけど……」


 通路を奥に進み、最後の気配がある扉の向こうを伺う。

 ちなみに、通路の右の扉は食料庫だったが、良さそうな物はまったくなかった。


(……うん、大丈夫。こいつも寝てるな)


 スルッと中に入ると、寝ている盗賊の両腕を立て続けに剣で貫いて目を覚まさせる。


「……がぁっ!?」

「やあ、おはよう。ちょっと話を聞かせてもらえるかな?」

「テメー! こんなことしてタダで済むと……ぎぃっ!」


 ――剣で貫いた傷をグリグリしながら聞いたところでは。

 盗賊団は全員で十五人。長いこと、ここをねぐらに上手くやっていようだ。

 獣人の女性は行商人の娘で、母親は居らず、父親は襲撃した時に目の前でいたぶって殺したらしい。

 先ほど殺した魔法使いの契約魔法は、本人の意思を無視して奴隷に出来る。しかし行動の抑制に関しては、自殺を防ぐことしかできない。そのため、力が強い獣人は、手足を切り落としてから犯すことにしているとか。


(契約魔法が不完全なのは魔力不足のせいかな?)


 この世界の魔法の魔力消費量は、その呪文の長さに比例する。おそらく、本人の意思を無視する部分の呪文が長くなり過ぎたのではないだろうが。

 他にも、お金のある場所を聞いて回収したり隠し部屋が無い事を確認したりで、臨時収入が金貨三十二枚、銀貨七十枚。盗賊、オイシイです。


「……『大地の手』」


 頭を部屋の奥に向けて四つん這いの状態で床に盗賊を固定し、女性の居る部屋へ戻る。


「……『奴隷契約』」


 そして奴隷契約を上書き。

 強引な上書きなので元契約を超える魔力量が必要となるが、《無限の魔力》を持つオレには関係ないし、この程度の消費量ならアリスでも余裕だろう。


(雑魚な魔法使いとは違うのだよ)


 とはいえ、商人ギルドに登録していない人間が契約魔法を使うと犯罪になるので、人前では使えない。


(まぁ、商人が来るのを待てなくて、自分で三人の奴隷解放をやっちゃった訳だけど……。ここでも役に立ったし、結果オーライ!)


 そんなことを考えながらカードを確認。



名前:アキラ・サトウ(♂)

年齢:17

出身地:イーサリー地方

犯罪歴:なし

所持奴隷:リリィ(♀、年齢:19)

冒険者ランク:D



(……思ったより若い、か?)


 疲れ果て、全てを諦めたその表情(かお)が、彼女を老いて見せるのだろう。

 そんなことを思いながら、リリィをベッドから起こし。


「リリィ、ついてきて」


 そして再び奥の部屋へ。

 再生回復薬ですっかり健康になったはずだが、ぎこちない歩き方で後ろをついて来る。

 リリィの背丈はオレの目線くらい。160センチくらいあるだろうか。胸はカーラと同じくらいに見えるのだが、背が高いぶん単純な大きさでは優っていると思う。


「君の父親を殺した盗賊団のボスだよ。好きにするといい」

「……ぁ」


 リリィの前には、良い感じに蹴り上げられるように、四つん這いになった盗賊の股間がある。それを認識し、少しだけ目に光が戻る。


「ひぃっ! やめろ! 助けてくれ!」


 そして次の瞬間、骨と骨がぶつかるような硬質な音に混ざって、何かが潰れるような音がした。

 それは、リリィの全力の蹴りが盗賊の股間に向けて放たれた結果だった。


「……っ、ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」


 ――リリィが五分ほど蹴り続けた頃には、水の入った皮袋を蹴るような音しかしなくなり、盗賊は血の泡を吹いて事切れていた。


「はい! そこまで!」

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「これ以上は足が()たないよ」


 腫れた右足に回復魔法をかけ、リリィを促して洞窟を出ると、魔法で働きかけて洞窟を崩して埋める。

 さて出発。というところで。


「……死なせて、下さい」


 リリィから、絶望に満ちたお願いをされてしまった。


(……まぁ、そうだよね。でも、その目は駄目だよ)


 例え大きなお世話だったとしても、過去に救われた経験を持つオレは、その絶望に染まった目を何とかしてあげたい。

 なによりも、せっかく知り合えた綺麗な犬耳の獣人さんなのだ、オレのものにしてしまいたいとも思ってしまう。

 以前は人数が増えることに関して、守れる自信が持てずに迷いを持った。しかし、オレもかなり強くなっている。一人増えるくらいなら問題なく守れるはずだ、とも思う。

 ならば。


「キミは、オレのおかげで仇を討てた。つまり、オレに恩返しする必要があると思うんだけど」

「……恩返し? ……何を望むの?」


 無表情なまま首をかしげるリリィに。


「オレのものになれ!」


 身勝手だと自覚するオレの希望を突きつけると、ほんの一瞬、悲しそうな表情を見せた後。


「……あなたも盗賊と変わらないのね。……好きにすればいいわ」


 再び光の消えた目でそう言ってくる。


(まぁ、最初は仕方ないけど……。必ず堕として「生きたい」と言わせてみせる!)


 犬の獣人さんは食いしん坊に決まっているのだ。それに、伊達に高い性技スキルは持っていなi……。


(ゲフンゲフン。……そう、元の世界の食文化の素晴らしさを味わえば、きっと心変わりしてくれるはず!)


 決意を新たにするが、……当面の問題は。


(三人に何て説明したものかね?)


 三人を奴隷から解放してすぐに、夜中に黙って抜け出したあげく新たな女奴隷を連れて帰るのだ。問題にならないということがあるだろうか。……いや、ない!!

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