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ありふれた異世界転生もの  作者: てきとうな人
ウルーク王国編
22/104

22、ナルチ村

 

 

「私たちは堕落してしまいました」


 オーガを討伐した翌朝。三人はオレより少し遅れて食堂へ下りてきたのだが、元気なく席に着くと、代表するようにアリスそんなことを言う。

 話を聞いてみると。


「毎日お風呂に入らないと、なんだか気持ち悪いです」

「温水洗浄便座とトイレットペーパーなしの生活には戻れなくなってしまいました」

「あの包まれるような、ふわふわふかふかのベッドが恋しいです」


 と、三人それぞれの言葉に、それぞれ同意するようにうんうんと頷いている。

 昨夜は久しぶりにシェルターを設置せず、そのまま宿のベッドで寝た。しかし、シェルター内の便利な生活に慣れてしまった三人は、もうこの世界の生活水準では満足出来なくなってしまったようだ。

 個人的には、お風呂とトイレはともかく、ワラを敷き詰めたベッドはなかなか寝心地が良く、ワラの香りも悪くないと思う。もちろん、清潔に保たれている宿のベッドなら、という条件はつくが。

 まぁ、これに関してはオレがどうこう言っても仕方ないと思い、放っておくことにしたのだが……。落ち込んでいる三人に引きずられ、オレも最近悩んでいることが顔を覗かせる。

 結果、朝から全員でため息をつくことになってしまった。


「「……ふぅ」」


 どこまでも落ち込みそうだったので、気分を変えるためにも今日の予定を話す。


「宿泊費は村長持ちだし。せっかくなので、もう一泊しようと思う。で、今日はゆっくりするつもりだけど、その前にアリスの両親のお墓参りに行くから、朝食後に着替えておいでよ」

「「……はい!」」


 少し間をおいて、やけにハイテンションで返事が返ってきた。


(なんで? ……まぁ、気分を変えれたのなら良いか)



ーーーーーー



 そして食事後。シェルター内のリビングで待っていたオレの前に現れたのは、普段見ないスカート姿の三人だった。


(……おぉ、なんか新鮮)


 ついボケーっと眺めていると。


「ど、どうですか?」


 チラチラこちらを見ながら聞いてくる。


「お、おう。三人ともすごく似合ってる。可愛いよ」

「「えへへ♪」」


 三人とも嬉しそうな良い笑顔。どうやらオルテスで買った服を着て見せたかったようだ。こんなことで朝の落ち込みから復活してくれるのなら安いものだ。

 早速出かけようとしたところで、また問題発生。宿屋を出ると、村長が待っていたのだ。


「アリス、お前に話がある……」

「私は何も話すことはありません」


 アリスは、食い気味に拒否して先に進む。

 昨日のケチくさい態度によって、村長への信頼は地に落ちた。さらに、アリスに声をかける前に、ご主人様であるオレに断らなかったところも、アリス的に気に入らないのかもしれない。


「これ、待たんか!」


 村長が、背を向けたアリスを振り向かせようと肩に手を伸ばす。が、アリスはその手を見もせずに避ける。

 無意識のうちに普段の感覚で避けたのだろう。いつもの装備なら、それで何の問題も無かった。しかし、いつもの装備とは違う、柔らかくなびいた袖に村長の指が引っかかり、袖の生地が裂けてしまったのだ。


「え?」


 そのわずかな引っかかりを感じたアリスが、村長の指によって生地が裂けていることに気付く。


「……あぁ」


 その瞬間、ほんの一瞬だが、物理的な圧力を感じるほどに濃密な殺気が、アリスから放たれた。


「ヒッ……」


 それを真正面から受けた村長は、あっさり意識を手放し崩折れる。


(アリス凄いな。どこぞの戦闘民族みたいだ)


 逆立つ髪と黄金に輝くオーラが見えそうな感じだった。

 そして、このあたりが最近オレを悩ませているところだ。

 つまり……。


(どう考えても、オレが一番弱いんだよね)


 ということだ。

 もちろん、神(?)から貰った《無限の魔力》などのチートな能力で力押しをすれば勝てる。しかし、純粋な才能において、オレは三人に全く及ばない。

 接近戦でアリスが、弓でフェリが、魔法でカーラが、それぞれ見せる才能は素晴らしいものだ。それに比べて、オレは器用貧乏街道をまっしぐらな感じだ。


(何か、チートを使わずに三人を上回るものがないと、自信を持って偉そうに出来ないではないか!)


 ふ~、やれやれ。と、ハラハラと涙を流すアリスを抱きしめる。

 フェリとカーラも、白目をむいて地面にシミを広がらせている村長を介抱する気はなさそうなので、それに関しては異変を察知して出てきたバイヌさんにまかせた。


(それにしても。一瞬とはいえ、我を忘れるなんてアリスらしくないな。そんなに気に入っていたのかな?)


 などと思っていたら。


「ご、ご主人様に、買って貰った、服が……」


 オレに買って貰った、ということが重要だったらしい。

 ……これはたぶん、全く同じ服を創って渡してもダメなやつだ。

 そこでふと。


(魔法があるじゃないか)


 と思いつき、早速実行する。

 生物を治すことが出来るのだ。服の生地を直せないはずがない。


「……『生地回復』」


 (やわ)らかい光がアリスの服を包む。


「あ……」


 切れていた繊維が繋がり、裂けていた生地が痕跡を残さずに修復される。そして、古着だった服が新品のように綺麗になっていた……。


(……って、あれ~?)


 込める魔力が多過ぎて、服全体の目に見えないレベルのほつれや毛羽立ちなども修復した結果、このようになってしまったらしい。


「……直ってます。ありがとうございます!」

「さすが主様♪」

「くすくす♪ 贅沢な魔法の使い方ですね」


 アリスに笑顔が戻り、フェリとカーラも安心したようだ。


(ほっ。問題なかったらしい。それにしても、服……か。ちょっと破けたくらいで泣いてしまうとは思わなかった。沢山持っていれば大丈夫なのかな?)

 

 

ーーーーーー

 

 

「本当に申し訳ない」


 お墓参りから帰ってきたオレたちを出迎えたバイヌさんが、顔を見るなり深々と頭を下げた。

 慌てて顔を上げてもらい、話を聞くと。案の定と言うべきか、村長のことに関してだった。

 そもそも、今朝何をしに村長が来ていたのかと言うと。昨日、アリスがオーガを圧倒したことをニークから聞き、村の防衛戦力としてアリスを村に留めようと考えたらしい。そして、オレに所有権の移譲を要請するときに、アリスに説得を手伝わせようと考え、その話をしに来ていたようだ。しかも、その代金は、討伐代と一緒に宿泊費でツケにするつもりだったらしい。

 オレ自身はアリスたちを奴隷だと思っていないだけなのだが、それが奴隷を大切にしているチョロい奴に見えたのかもしれない。そう思うと、かなりイラッとしたのだが。


「はあ……。嘆かわしい」


 昔はあんなヤツじゃなかったのに。そう言うバイヌさんの悲しそうな顔を見ると、文句を言う気にはならなかった。

 どうする? と三人を伺うと。


「放っておいて大丈夫だと思います。オーガみたいな、手に負えない相手はそうそう現れませんし。時間がたてば村長も冷静になるでしょう」


 オーガという、かつてない脅威にさらされて混乱しているだけですよ。と、ニコニコ顔のフェリとカーラの横でアリスが言ってくるが。アリスは、そう言う間も締まらない顔でニヤニヤしっぱなしだ。

 昨日バイヌさんたちにも言ったのたが。一つのケジメとして、アリスの両親のお墓にも「アリスを幸せにします」と言ってきたのだが……。その後ずっとこの調子だ。


(大丈夫なのかね?)


 そんな状態のアリスの判断だったので心配になったのだが、普段は本当に平和な場所で、ごく稀にゴブリンが四、五匹現れるくらいだったらしい。


「大丈夫だ。手に負えないようなのが来たら逃げれば良いさ」


 アリスの様子に毒気を抜かれたのか、バイヌさんも最後には笑顔を見せていた。

 

 

ーーーーーー

 

 

「工業区画~」


 そう言って新たな扉を創って設置する。

 場所はシェルター内の玄関前ホールで、訓練場の扉の反対側。扉の中は、とりあえずバレーコート二面分くらいの体育館のような高さのあるスペースになっている。

 今回、女心が分かっていないことを痛感したオレは、まずは服を作ることにした。

 ということで。


「立体縫製機~」


 工業区画内に、タッチパネル式のモニターと取り出し口がついた、一辺が2メートルくらいの立方体の装置を創る。


(これは、無限に出てくる各種天然繊維を選択し、立体的に生地を織ることで縫い目のない服を作ることが出来る画期的な装置なのだ!! さらに、金具や、貝殻の成分で作られたボタンなども自動で付けてくれる素敵仕様でもある!)


「今回も広い空間ですね」

「まぁ、主様ですから」

「相変わらず、どうなっているのやら」


 シェルター内という人目に付かない場所なので、今回も自重せずに創ったのだが……。そろそろ慣れてきたのか、サラッと流されてしまった。ちょっと寂しい。


「はい、これ使ってね」


 気を取り直して説明ついでに操作し、あっという間に作られて出てきたパジャマと下着を渡す。

 女性ものの下着に関して。今までは、上はサラシみたいな布に、下は腰の所に通してある紐で縛る、ぴっちりしたトランクスのようなものだったのだが。今回、オレの趣味でブラジャーとパンティを作ってみた。

 ちなみに、ゴムはまだ見つけていないのであえて使わず、必要な部分は伸縮性のある織り方で代用している。と言っても、《世界の理による最適化》によって、品質の良いゴムと変わらない感じに出来上がっているようだ。


(ひょっとしたら、魔力さんが仕事して、繊維がゴムに近い性質を獲得している可能性もあるね)


 下着の着け心地を三人が気に入るかどうかは分からない。しかし、一度でも身に付けているのを見られれば、オレのエロ心的に満足であr……。


(ゲフンゲフン。……しかし、元の世界で洗練された機能性があれば、こちらを常用してくれるようになるに違いない!)


 パジャマに関しても。シェルター内は温度も湿度も快適に保たれるし、汚した物は次の瞬間には自動的に綺麗になるため、ほぼ毎晩あんなことやこんなことをした後、そのまま裸で寝ているので必要ではないかもしれない。しかし、パジャマは萌え的に必要であr……。


(ゲフンゲフン。……しかし、……まぁその、風呂上がりの部屋着的な?)


 ……閑話休題(今のは無かったことに)


「モニターの前で作りたい服を思い浮かべれば、立体的に表示されるから。それで大丈夫なら、モニターの右下に出る実行ボタンを押す。すると、そのデザインを元に、着心地の良い服が作られて出てきます」


 ウチの娘たちに、パジャマと下着の説明をした後、服の作り方を教えると。


「これなんてどうですか?」

「いえいえ、ここはこうした方が」


 なんて、楽しそうにモニターをいじりだしたのだが。


「アキラ様は、どういうのが好きですか?」


 とカーラが聞くと、「それだ」みたいな感じで、アリスとフェリが驚愕の表情で振り向く。

 そして、オレが三人の服を作ることになったのだが……。


(いやいや、女性の服のことなんてオレが知っているはずないじゃん)


 ということで、知識の指輪で地球の女性ファッション誌の情報を見て作りました。

 知識の指輪さん、グッジョブ!!

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