表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ありふれた異世界転生もの  作者: てきとうな人
ウルーク王国編
17/104

17、蹂躙

 

 

「ご主人様。どうなさいますか?」


 チルテ村を出発して四日目。

 この世界が惑星であると確認した次の日の昼過ぎに、木がまばらに茂る高原のサバンナ、そんな風景の中を進んでいる時だった。

 探知している範囲の中に、二百以上の集団を発見したのだ。最近分かるようになったのだが、この感じは、おそらくゴブリンだろう。


「……大集団だね。これもネシアスから流れて来たと見るべきかな?」

「そうですね。集団の中心辺りに、ゴブリンに似た強い気配があります。おそらくゴブリンロードなのではないでしょうか。数が多いのも、それなら納得出来ます」


 オレの問いに、前に乗っているアリスが答える。

 一昨日のカーラ以降、「包まれている感じがする」と、前に乗るのが流行っているらしく、昨日、山を下りるときのフェリもオレの前だった。個人的には、革鎧を外して背後(うしろ)に乗ってもらえると、いろいろ嬉しいのだが……。


「ゴブリンは見かけたら全滅させなければならないと言うし、作戦はどうしようか?」

「そんな話は聞いたこともありませんが、どうしましょうか」


 などと言っていると。


「四方から囲みましょう」


 と、ランバーを操り、寄せてくるフェリ。

 

「魔法で薙ぎ払いましょう。ちょっと試してみたい魔法があります」


 これは、フェリの背後に乗っているカーラ。


「カーラ、試したい魔法って、囲んだ後でも問題なさそう?」

「はい。大丈夫です」

「じゃあ、配置に着いたらオレが周囲を囲む。そしたらカーラの魔法。その後、残ったのを殲滅で。討伐確認部位は、とりあえず気にしないでいこう」


 探知で分かる範囲ではゴブリンしかおらず、集団の中にも(とら)われた人などはいないようだなのでわオレたちの戦闘が人に見られる心配はない。つまり、手加減する必要はないのだ。

 さらに言うと、こちらは全員が探知でお互いの位置を知ることが出来るので、魔法や飛び道具での同士討ちの危険もないだろう。


「作戦開始」

「「はい!」」


 手綱を持っていたオレとフェリが、気配を消してから、現地点から遠い配置にランバーで移動。そこでランバーから降りると、集団から10メートルほど離れた場所の茂みに身を隠す。

 ゴブリンどもは、寝転がったりして休んでいるが、この場所に集落を作るつもりはなさそうだ。


(移動中の小休止といったところかな?)


 全員が配置に着いたのを探知で確認して、逃亡防止用に、半径200メートルくらいを高さ2メートルの『防御障壁』で囲む。


(さて、お手並み拝見)


 その数秒後、地面から無数の土の槍が突き上げる。

 土の槍は、高さ1メートルほどまで伸びた次の瞬間には消え去っていた。後に残ったのは、まさに死屍累々という光景。運良く槍と槍の隙間にいたゴブリンは生き残っているようだが、無傷のゴブリンはほとんどいないのではないだろうか……。


(カーラさん、マジパネェ)


 傷つき倒れて呻いているゴブリンにトドメをさし、呆然としている無傷のゴブリンの首をはねながら中心へ向かう。

 そこには、身長2メートルくらいの大きなゴブリンを中心にして、五匹が集まっている。中心の大きいのがゴブリンロードだろう。


(デカいな……)


 以前見た集落のボスとは、あきらかに違う。

 と、見ている間に、近くで倒れて呻いていたゴブリンが淡い光に包まれ、その後すぐに起き上がる。どうやらゴブリンロードが回復魔法を使ったらしい。


(ぐぬぬ。オレが最近ようやく使えるようになった回復魔法をゴブリンごときが。……許せん!)


 ごく個人的な逆恨みと共に、一気に距離を詰め、首を狙って剣を振るう。

 が、ゴブリンロードは身を反らせて躱すと、あまり手入れがされていない錆の浮いた大剣を片手で横に振ってくる。


(くっ!)


 剣を戻して片手で受け止めると、刃と刃が噛み合い力が拮抗する。

 驚愕の表情を見せたゴブリンロードが一度大剣を引くと、上段から、今度は両手持ちに変えて振り下ろしてくる。

 だが、オレはそれも片手で持ったままの剣で受け止める。


(躱すし、大剣なんか片手で振るから警戒したが、大したことはないな!)


 普段の『身体能力強化』で十分だ。


「ガァッ!!」


 ゴブリンロードが叫び、更に力を入れようとするのに合わせて、オレの剣を傾けて大剣を横に流すと、そこから剣を振り上げ、体勢を崩し、丁度良い位置に差し出されたゴブリンロードの首を刎ねた。


(落ち着いて考えてみると、普段から発動している『身体能力強化』で、片手で大剣を振り回すゴブリンロードの力を上回るということか……)


 なんて分析しているうちに、周りの生き残りも全て倒されていた。


「ご主人様、終わりました」

「ゴブリンロード、けっこう強かったですね」

「アキラ様、わたしの魔法はどうでしたか?」

「みんな、お疲れさま。

 ロードに一撃目を躱されたのは予想外だった。

 カーラの魔法は、あの範囲いけるとは思ってなかった。凄かったよ」


 何もない所から魔力で作り出すより、すでに()る物を変形させる方が魔力の消費は少ない。しかし、今回カーラが使った魔法は、何もない所から魔力で土の槍を作るものだった。

 地面を変形させて槍を作ると、その後、変形したまま残る土の槍が邪魔になる。そのため、魔力で作り出す方にしたのだろうが、《無限の魔力》というチートを持たないカーラが、あの範囲に魔法を発動出来たのは驚きだ。


「えへへ〜。ギリギリまで硬度を下げて、具現化する時間も最短に抑えることで、範囲を広げる分の魔力を確保しました」


 どうすれば最大限殺せるか、良く考えられていると言えよう。


(カーラ、……恐ろしい子!)


 その後、個々のサイズは小さい魔物だが、さすがに放置するには数が多過ぎるということで。討伐確認部位の耳を集めてから、高さ2メートルの『防御障壁』をゴブリンがいた範囲ギリギリに張り直し、外から魔法で炎を撃ち込んで焼き尽くした。

 集まった討伐確認部位は百九十六匹分プラス1。


(さすがゴブリンロード。耳もロード級の大きさだね)

 

 

ーーーーーー

 

 

「主様、今回は私に任せて頂けますか?」


 ゴブリン大量討伐の翌日。

 明日には交易都市オルテスへ着く予定なのだが、二日連続で敵に遭遇した。


(今度は盗賊か)


 街道を見張っていたとみられる気配が、離れた場所にいた六人の集団に合流して岩陰に隠れた。おまけに、殺気を隠しきれていないのだ。たとえ盗賊ではなかったとしても、ろくな集団ではあるまい。


(殺気を隠しきれていない。とか、我ながら厨二っぽいと思うんだが……)


 感じるものは仕方ない。


「話を聞きたいから、一人は生かしておいてね」


 と、ランバーを寄せてくるフェリに告げる。

 ちなみに、今日一緒に乗っているのはカーラだが、今日は後ろに乗ってもらっている。

 ……決して! 決して!! 三人の中で一番大きい胸を背中で楽しみたかった訳ではない!!


「はい♪ お任せ下さい」


 オレが何かに言い訳している間に、フェリはその場で弓を構えると、ほぼ真上に向かって矢を放つ。立て続けに放たれた矢の数は十本。あっという間に見えないほどの高さに飛んで行く。

 どうやら無詠唱で魔法を発動したようで、矢が風を纏っていたのが分かった。

 それから間もなく、放たれた矢は見事に盗賊たちに降り注いだようだ。七人中六人の気配が消える。

 盗賊たちは200メートルは離れていたし、気配でなんとなく場所が分かるとはいえ、岩陰にいたのでその姿は見えなかった。いったいどう狙うとこんな事が出来るのか、オレにはさっぱり理解できない。


(フェリさん、マジパネェ)


 ひそかに戦慄しながら、こちらに頭を向けてランバーをぴったり横に付けるフェリの頭を撫でる。


「凄いよフェリ」

「ふふふ、それほどでもありません♪」


 岩陰に行くと、六人は脳天を貫かれ、残る一人は四肢を貫かれている。


(ナルホドー、矢が十本必要な訳ダネー)


 あの距離で、この正確さ。


(フェリ、……恐ろしい子!)


 本当に、いったいどう狙うとこうなるのやら。


「さて、話を聞かせてもらおうか」


 気を取り直して話を聞く。


「ひいっ! ……な、何なんだよお前ら」

「素直に話せば助けてやるけど?」


 もちろん嘘だ。オレは、犯罪者にも人権があると考えるほど博愛主義者ではない。

 そして話を聞いて分かったのは、やはりネシアス帝国から流れて来たらしいが、今回は脱走兵ではなく、根っからの盗賊だったということ。そして、まだこの国には来たばかりで、近くの洞窟に残り十人と盗賊団のボスが居て、それで全員らしい。

 動けない生き残りにトドメをさし、立ち上がる。


「じゃあ、洞窟に行こうか」


 探知によって、すでにそれらしい集団がいる所は分かっているのだ。


「はい、今度は私にお任せ下さい」


 今度はアリスがやるらしい。

 洞窟という環境的に、大人数で行く利点は少ないと思うし、後ろを守っていれば問題ないだろう。

 

 

ーーーーーー

 

 

 そして、洞窟前。

 気配を消して近付くと、見張りが二人、入り口左右の岩に腰掛けている。しかし、かなり気を抜いているようだ。頻繁に欠伸をしている。


「では。行ってきます」


 そう言ったアリスは、瞬く間に見張り二人の中間地点へ移動し、槍を横薙ぎに一閃。同時に二人の首を刎ねる。

 よほど綺麗に切れたのだろう。二人とも音もなくその場に崩折れた。洞窟の壁にも切れ目が入っていることから、盗賊の背後の岩盤ごと斬ったのだと分かる。


(アリスさん、マジパネェ)


 その後も、一方的な虐殺だった。

 気配を消したまま近付いたアリスが、気づかれる前に首を刎ねて行く。

 おそらく、一番奥にいたのが盗賊団のボスだったと思われるのだが、その他の雑魚と全く変わらず首を刎ねられて終わった。

 その静粛さ、速さ、正確さの前には、ボスの威厳も何もあったものではない。


(アリス、……恐ろしい子!)


 撫でろ、とばかりにニコニコ顔でこちらに差し出されるアリスの頭。それを撫でながら、ウチの娘たちには逆らうまいと改めて思った。


「よし、盗賊のお宝拝見♪」


 気を取り直して、お楽しみの時間。結果は、なんと金貨十五枚(千五百万円相当!)。それと大量の食料だった。

 ネシアス帝国で得た宝を、全て貨幣に変えて持ってきたのだろうか。正直、美味しすぎる収穫だった。

 今度から積極的に盗賊を狩ろうと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ