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ありふれた異世界転生もの  作者: てきとうな人
ウルーク王国編
11/104

11、三人目

 

 

「では、こちらが報酬になります。そして、ランクアップおめでとうございます」


 大猿討伐から五日。目立つかもしれないが、さっさとランクアップするために、毎日一件のDランク討伐依頼をこなした。

 強くなるため、連携の確認をするため、といった理由だけなら、依頼を受けずに勝手に狩れば良かったのだが。後々お金を稼ぎやすくするという目的もあり、ランクアップに踏み切った。


(とはいえ、ちょっと拙速過ぎたかも)


 とは言え、こんなに急いだのにも理由がある。

 いつまでもフェリのいた森にジャバウォックが(とど)まっているとは限らない。もういない可能性もあるので、急いだ方が良いだろうということになったのだ。


「かなりハイペースでしたが、無理はされていませんか?」


 分かっていたのだが、やっぱり急ぎ過ぎたらしい。聞いてみると、普通は討伐依頼は十日に一回くらで、間に雑用系の依頼をはさんだりするという話だった。


「ありがとうございます。少し張り切りすぎましたね」


 と言ってカウンターを離れる。

 今日は宿の食堂で夕食にしようか。そんな会話をしながら冒険者ギルドを出ようとすると……。


「ハッ! 奴隷なんか連れて冒険者ごっこか? どこの坊っちゃんだ?」


 ガラの悪い三人組に進路を塞がれた。

 奴隷二人、しかも一人は高価なエルフを連れている若い男。金持ちのボンボンだと思われても仕方ないのかもしれない。

 ここで、ちらっとカウンターの方を見るが、冒険者同士の揉め事には不干渉らしく、おばちゃんは申し訳なさそうにしている。

 ここは、おばちゃんに免じて穏便に済まそうと思い。


「申し訳ない。不快な思いをさせてしまいましたか? すぐに出ますのでご容赦下さい」


 と、さっさと立ち去ろうとしたが。


「ククッ。悪いと思ってんなら、ちょっとその二人を貸せよ」

「ギャハハ。それ良い考えだな。安心しろよ壊れる前に返してやるよ」

「どうせお前が使い潰すつもりだったんだろう?」


 どうやら失敗だったらしい。どこにでも湧いて出るようなクズを、ただ調子に乗らせてしまっただけのようだ。

 後ろで、アリスは動じてないが、フェリが身を強張らせたのが分かる。


(おやおや、フェリは貸し出されるとでも思ったのかな? まだまだ信頼が足りないらしいね)


 今夜はいじめちゃうぞ、なんて思いながら『思考速度上昇』を発動し、正確性を高めた拳を振るう。

 打撃音がほぼ一つに聞こえる三連撃で下から顎を打ち抜くと、三匹同時に白目を剥いて崩れ落ちた。

 今は、普段から意識せずに発動しているレベルでの『身体能力強化』でこのくらいの動きが出来るようになっている。


(うん、強くなってる)


 確かな成長を実感していると、待合室にいた連中から喚声が上がる。どうやら賭けをしていたらしい。喜びを表しているのは極少数のようだが、今回もやり過ぎとは判断されないようだ。


(こちらの力量を測れなかったこいつらが悪い。ってことになるのかな?)


 かなり儲けたらしい数人が、こちらを見て片手を挙げるのに挨拶を返してギルドを出た。

 

「明日、セルエムを()とう」

「はい」

「……いよいよ、ですね」


 アリスとフェリも、強くなった実感があるのだろう。力強い同意が得られた。

 とそこで、少し後から冒険者ギルドを出て、慌てたようにオレたちを追って来る気配。

 そして、オレたちの前に回り込んだ少女が。


「わたしを、買ってくれませんか?」


 なんて、とんでもないことを言う。

 オレの胸くらいの背丈の彼女は、その背丈を越す長さのねじくれた木の杖を持ち、ローブを着ていることから魔法使いなのだろうと思う。


(刈って? いや買って、か。 オレがこの娘を買う? ……はっ! そうか、cowね。って、いやいやそれは無い)


 確かに、アリスやフェリより存在感のある胸をお持ちだが、牛というほどではない。

 何かを聞き間違えたのだろう。


「パードゥン?」

「え?」


 またまた間違えた。

 授業ではそう習ったが、実際に使うと生意気な感じになると聞いていたのに。……どうやら突然の出来事に動揺してしまったらしい。

 HAHAHA、困ったものデスネー。


「ご主人様~」

「主様、……主様~」


 はっ! 何の話だったっけ。え〜と、……そうそう。


「買ってくれ? ってどういうこと?」

「あの、実は――」


 彼女の名前はカーラ。十七歳の魔法使い。肩まである軽くウェーブのかかった赤髪を、上目遣いで見上げるパッチリとした大きな目の上で真っ直ぐ切り揃えている。

 個人的な印象で言えば、図書委員さん。という感じだ。

 両親共に魔法使いで、彼女も幼い頃から魔法語を習い修めてきた。しかし二年前、両親が魔法実験に失敗し、死亡。後には借金が残った。


(で、冒険者になってなんとか借金を返してたけど、つい最近、立て続けに依頼に失敗して進退窮まり、残す道は奴隷落ちのみとなった、と)


 これが彼女の第一声の理由となる。

 つまり、今ならオレは、彼女の借金を肩代わりすることで奴隷商人から買うよりはるかに安く、冒険者として役に立つ魔法使いの奴隷を手に入れられる。そして彼女は、この世界の常識的にあり得ないほど奴隷の待遇が良い主人を得られる。ということらしい。


「笑顔でいるお二人が奴隷だなんて、いまだに信じられません」


 前々から聞いていたが、この世界の奴隷の待遇はあまり良いものではないらしい。それを考えれば、彼女にとってはまさに死活問題だろう。


「ちなみに、残りの借金はいくら?」

「……金貨四枚、です」


 ……払えないことはない。だがしかし、どうしたものか。


(魔法語には興味があるんだけど、……これ以上増えて守りきれるのか?)


 う〜ん。と考え込んでいると。


「どうかお願いします」


 目をうるうるさせながら改めてお願いされてしまった。


(まぁ、これも何かの縁。オレが、困ってる可愛い女の子を見捨てることなど出来るだろうか。いや、出来はしない!)


 決して! 決して!! 夜の生活において、胸の大きい()が欲しいなんて思ってないんだからね!


「分かった。キミを買おう」

「……あ、ありがとうございます!」


 その後、商人ギルドへ行き、借金の返済と奴隷契約を済ませ、宿へと帰った。


(わざわざ奴隷契約しなくても良いかもだけど)


 つい先日も考えたが、先輩のアリスとフェリが奴隷なのだし、女性陣の人間関係的には奴隷になってもらった方が良いだろう。それに、そこまでお金が惜しい訳ではないが、絶対に踏み倒されないと信じられるほど、この娘を知っている訳でもない。

 この時カーラにもステータスを創り、ついでに全員のを確認した。



アキラ

レベル:20

体力:100/135 魔力:∞ 筋力:50 敏捷:55 器用:47 知性:40 精神:43 幸運:100


スキル:柔術(1)、剣術(20)、魔法(12)、性技(18)、格闘(5)、探知(8)、隠密(8)、弓術(5)(new!)


アビリティ:アイテムボックス、学習能力上昇、魔力操作、妊娠操作


ギフト:創造、無限の魔力



アリス

レベル:13

体力:85/100 魔力:55/90 筋力:35 敏捷:36 器用:37 知性:32 精神:31 幸運:40


スキル:家事(8)、槍術(17)、剣術(2)、魔法(6)、性技(10)、探知(7)、隠密(5)、弓術(2)(new!)


アビリティ:学習能力上昇、魔力操作



フェリ

レベル:5

体力:70/90 魔力:45/80 筋力:26 敏捷:33 器用:32 知性:30 精神:28 幸運:20


スキル:弓術(10)、剣術(4)、魔法(5)、探知(3)、性技(5)(new!)、隠密(2)(new!)


アビリティ:学習能力上昇、魔力操作(new!)



カーラ

レベル:1

体力:30/65 魔力:90/100 筋力:15 敏捷:18 器用:16 知性:32 精神:32 幸運:15


スキル:魔法(10)、家事(5)


アビリティ:学習能力上昇



 カーラは魔法使いって感じのステータスだ。

 それにしても、オレはかなり強くなった気がする。筋力なんて初期値の五倍。体も細マッチョになっている。

 強くなったと言っても、油断するつもりはないが。


(……って、強敵を呼ぶためのフリみたいじゃん)

 

 

ーーーーーー

 

 

「……こんなものが存在するなんて」


 宿の食堂で夕食をとったあと、部屋に設置したシェルターに降りてきたカーラが、壁や床を確認しながら呟く。

 魔法語を修め、自分が魔法で出来る得ることを理解しているからこそ、余計にこの空間の異常さが分かるのだろう。


「カーラ、主様のなさることには非常識なことが多々あります。気にしない方が良いですよ」


 フェリはサラッとディスり、アリスはうんうんと頷いている。

 

(ぐぬぬ。今夜は容赦しませんからね!)


 そこでふと。


(……あれ? なんだろう、……この光景どこかで見たような?)


 なんて思ったが、おそらく気のせいだろう。よくあるデジャヴというやつだ。


「カーラ、これを身に付けておいて。お守りみたいなものだから」


 と言って、フェリと同じイヤーカフを渡したのだが……。


「ん? ……気に入らなかった?」

「……あ、いえ。ありがとうございます」


 いまいち反応が鈍い。


(……うん。女性の考えてることは分からん)


 なにしろ、まだ会ったばかりなのだ。考えるだけ無駄だろう。


「アリス、フェリ。カーラにお風呂の入り方を教えて来てよ」


 最近は、お風呂でイチャイチャしたりもするのだが、今日はカーラがいるし、何よりもやりたい事がある。

 三人がリビングから出て行ったのを確認し、動き出す。

 ……そう、今日はプリンを作るのだ。


(さて、と)


 本来の材料は①砂糖と②卵と③牛乳。

 この世界で手に入ったのは……。


①黒砂糖。精製された砂糖はないようだが、これで問題ないはず。


②ランバーの卵。ランバーって何? って感じだが、一つで鶏卵三個分くらいの大きさの卵。黄身は黄色いし、生で食べたことはないが火を通した後の味は変わらないので多分大丈夫。


③テリーアの乳。これもテリーアって何? って感じだが、味は問題ない。


 地球の材料を創る事も考えたのだが、なんとなくこの世界の材料で作ることにこだわってみた。

 そして、しばし作業に没頭するも。


(あれ? どうしようかな)


 問題無く原液は出来たのだが、冷やす手段がない。

 普段、食材はキッチンにあるアイテムボックスと同じ性能の貯蔵庫に入れてある。しかし、アイテムボックスと同じということは、これに入れておいても状態が維持されるだけで冷える訳ではない。


(……創るか)


 シェルター内で自重する必要は無いだろう。

 ということで、小型の冷蔵庫を創ってプリンを収納。なんとかアリスたちがお風呂から上がってくる前に、片付けも含めて作業を終えることが出来た。


(ククク、明日が楽しみだ)

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