【2】僕と君はお互い羨ましく思っている
次の日、学校に着くとクラス中が騒がしい。
ドアを開けて入ると隣の席が人で埋もれている。
「すご!」
「初めて見た」
周囲の反応を見る限り、どうやら珍しい症状のようだ。埋もれている隙間を覗いてみるがギチギチに詰まって何も見えなかった。
すると、1人が僕に話しかける。
「ねえ君、君って何の症状なの?」と。
「僕は無症状だよ」
そう返すと僕を珍しそうな顔で見て元に戻った。僕も珍しい人間なのに全然見てくれなかった。サビシイ。
賑やかな時間もあっという間に朝礼の時間になり、全員元の席に戻ったので横目で見てみると特に普通の人だった。
もしかしてこの人は僕と同じ境遇ではないかと思ったが、あそこまで盛り上がらないだろう。
そこからは休み時間ごとに隣が騒がしくなり少し羨ましく思いながら過ごしていればもう昼休みの時間になった。
昼休みは流石にゆっくり過ごしたいから弁当と飲み物を持ち、直ぐに人気のない所へ行った。
だが、メジャーな屋上は閉鎖され、中庭は満遍なく人がいて探すのが大変だった。
しかし、ようやく見つけることができた。そう、駐輪場だ!
飛んだり、高速で走ったりできる時代、自転車が今の人間に合わなくなったか、スカスカの駐輪場は静かで屋根もあり最高だった。
座る場所を探していると何かを踏んだ感触がする。
「痛い痛い!!」
慌てて離れるとそこにはいないはずの隣の席の人が足を痛がっていた。
だが、翡翠色の髪ではなく赤黒い色の髪をしていた。
「なんで踏むんだよ…」
「いや、え、そこに居なかっただろ」
隣の人はハッとした顔で髪の色を水色に変え謝罪をする。
だが、謝罪以前にこの人の症状に驚いてしまい、つい症状を聞いてしまう。
「それ何の症状?初めて見た。」
「これ?私は『爬虫類 カメレオン型』。とても珍しい症状らしいよ。」
気なる、とても気になる。未知の症状に僕はドンドンと質問してしまう。
「他にも色んな色になれるの?」
「普段ってどんな色??」
「色変わるってどんな???」
「あはは、また今度ね。今弁当食べてるし。」
慣れるような感じで僕の質問攻めを退ける。すると僕の弁当の方に視線を向ける。
「せっかくだし君も一緒に食べる?」
「いや、1人で食べたいんだけど…」
「まあいいじゃん?じゃあさっきの質問に答えてもいいけど?」
「1人で食べるのは寂しいからちょうど良かった。いいよ、食べようか。」
こうして隣の人と一緒にお昼を食べることになった。彩豊かな弁当と僕のゼリーだけの弁当。比べるだけで少し惨めな弁当だと思った。
さっきの質問を答えて貰うと分かった事がある。普段は翡翠色の髪と目を持つけど、感情によってそれらが勝手に変色すると言う。
本人曰くコントロールも出来ないから不便になる時が多いと言う。
しかし、僕は一番聞きたいことを単刀直入に聞いてみる。
「透明ってなれるの?多分さっき多分透明になっていたと思うけど」
間を置いて少し言いずらそうな顔をして答えてくれた。
「まぁ…なれるよ。1人になりたい時とか。」
「へぇ…じゃあさっきもしかして1人になりたかったの?」
「うん、そう。」
少し暗い顔をしたので聞いた事に後悔を持つ反面やっぱり羨ましく思う。こんなに人気になれる症状に。ただ、多分この人自身、この能力を要らないと思う。
すると、逆質問をかけてきた。
「朝の時間に聞こえたけど、君って『無症状』なのでしょ?」
「うん、早く感染したいと思うよ。飛んだり早く走ったりしたいよ。」
そう言うと驚いた顔で返事をしてきた。
「まあ、確かに何も無いって不便だけど。私はそれが羨ましく思うよ。」
予想外な答えが飛んできたが、それ以上返す気がしなかった。聞き返せばまた暗くさせてしまいそうだから。
その後は、出身中学や好きな教科の話をで短い時間に話をした。
楽しかった。久しぶりに楽しい会話をしたと思う。しかし、無情にも時間はそれを奪ってしまう。
「もうこんな時間か…」
「ホントだね。そうだ、君また明日も一緒に食べない?」
その言葉に僕はこう答える。
「いいよ、明日も一緒に食べよう。」




