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死んだ幼馴染を救うために選んだ道は異世界タイムスリップ  作者: 相田ノブ


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8/14

ここが今日からあんたの家

 

「で、何をすりゃいいの。」


 俺が紙にサインしてからは早かった。

 すぐさま俺は部屋を出され、夏乃に道案内をされながら2人で何個か階段を降り、扉が多い長めの廊下を進んでいき、その内の一室に入った。


「今日のあんたは休むの。さっき団長にもお願いしてきたから。」


 部屋の中には、奥に小さな机1つと椅子が1つ。

 生地が薄めの二段ベッドが二つ左右の壁に面していた。彼女は右のベッドの上にお尻を置いて話し始めた。


(団長って誰だろ。上司かな)


「あんたも座りなさいよ。」


「ん、おう。」


 俺は奥に行き、椅子に座って彼女の方を向いた。


「いい?ここが今日からあんたの家よ。」


「なんと!住居を恵んでいただけるなんて!ありがたやーありがたやー」


「「恵み」じゃないからね。あんたはこの部屋を「借りてる」の。」


「そりゃそうだけどさー」


「お金もかかるからね」


「そこは頑張って仕事していっぱい稼ぐよ!」


「…………そう。それでいいよ……。」


 (……なんか所々元気ないんだよな、夏乃。なんかあったのかな。いや、俺のせいか。)


「それじゃ、私は仕事してくるから。」


「今から?変な時間から始まるんだな」


「言ったでしょ。抜け出して来たって。」


「そっか。頑張れよ。」


「あんたもちゃんと休みなさいよ。」


 ガチャ


 扉が閉まって、この部屋には俺1人。異世界に来てから初めてのプライベートだ。俺は他愛もない事を考えながら机に肘をついてダラダラしていた。


 (廊下の壁とか、ちゃんとした素材でできてたけど、ここって地下なんだよな……。)

 (異世界でも地質検査とかしてんのかな…。)

 (そろそろ腹減って来たな。こういう時どこ行けばいいんだろう。社員食堂とかあんのかな、金ないけど。)

 (風呂入りてぇなあ。)


 シュルリ シュル ギギギギギ


「……!」


 音が鳴った。この部屋からだ。


 咄嗟に椅子から立ち上がってしまった俺は、バランスを崩して後ろから倒れてしまった。後頭部強打。本日2度目の気絶開始。



 ——————————————


「ねえ、ねえ!ねえってば!」


 視界がぼやけて、意識が朦朧としながらも、聞き覚えしかない声が何か言っている。少しうるさいけど、その声は俺を心地よい眠りへとさらに導いていく……。


「いつまで寝てんのよっ!」


 パチィンッ!


「っぁぁあ!」

 腹を平手打ちは少々過剰じゃないか?わざわざその部分の服をたくし上げて叩くなんて、これが男女逆だったら絶対大炎上するだろうに。


「やっと起きた。行くよ、ユーサー。」


(ゆーさー…………。あ、俺か。)


「行くったってどこに。」


「お風呂よ。」


 その瞬間、俺の脳裏には、小2まで続いた、夏乃と風呂場で互いの体洗いっこの記憶が走馬灯のように蘇り、つい気絶………………はしなかった。


______________________

 

長い廊下を夏乃と進み、また階段を降りていった。


(おいおい、まだ下があるのかよ)


 どうやらタオルなどのは全部向こうにあるらしいので、俺は手ぶらでついていく。


「なぁ、着替えって俺持ってないんだけど……」


「あ、確かに。今日は同じの着て我慢しなさい。」


「まじかよ……。」


 どんなにその日疲れても、お風呂には必ず入る俺にとって、入浴後同じ服を着る事は大分心にきた。


「大丈夫。服は明日、上の売店で買えるから、洗濯するところも風呂の帰りに寄るから覚えといてね。」


「おう。ありがとう。本当何でもそろってんなここ。」


「そうだね。嫌ってぐらい全部……。」


「……?」


 (嫌ってなるのか?こんな充実してんのに。どういう事だろう……。)


「ほら、着いたよ。じゃ、私は右だから。また後で。」


「うん。また。」

「ほー、ここが。」


 銭湯じゃん。右と左に、多分男女で分かれていて、入り口にそれに合った色の暖簾(のれん)。


 銭湯じゃん。中に入ると右には扉がついてないタイプのロッカーがずらーと並び、入り口の左側には多分体拭く用のタオルが積まれている。


 銭湯じゃん。服を脱ぎ、部屋(脱衣所)の奥にあった重めの扉を開けると、そこには温泉……じゃない!?


 俺の目に飛び込んできたのは、見たこともない膨大な水量を叩き下ろす巨大な滝だった。


 正確にいうと、滝は50m程離れたところにある。その滝を受け止めるような大きな岩場があり、そこに下るような橋というか、板が扉と岩場を繋いでいる。板の左右では溢れ出た水が真っ黒の地下空洞へ落ちていく。


「ひいー!あんだこれー!?この扉までで予算使い切ったんか!?」


 (この滝がもう少し近かったら、岩場がもう少し小さかったら。入った瞬間水の流れで、下に落っこちんじゃねえのか!?)


 高所恐怖症とほんのり潔癖症が戦った結果、俺は恐る恐る岩場へと足を運んだ。


 (右側にずっと壁あるけど、滝の真ん中を壁で割って男女を分けてんのか。その木材足場に回せよ。)


 随分ワイルドな水浴びを行った。首がいたい。


 そろそろ出ようと、滝から離れ、板を上がり、扉を閉めようと、後ろを振り返ると、滝の中から誰か出て来たのが見えた。


 (誰かいたのか……!水量が半端なくて、視覚も聴覚も機能してなかったから、気付かないのが普通か。)


 (それにしても……)


 すごい筋肉だ。これがジャパニーズガチムチってやつか。

 生で見ると同じオスとして尊敬してしまう。


 遠目で見ても、190はありそうな巨大な男には頭に獣のような耳があるのが見えた。


 (おっと、他人の裸なんてジロジロ見るもんじゃないな)


 筋肉と同じくらい頭の獣耳が気になったが、夏乃と待ち合わせしているので、俺は脱衣所へと入っていった。

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