手続き
「あなたはどちらを選びますか?」
目元を赤く腫らしたまま、未だおさまりきかない喉の痙攣をぐっと殺して俺は問い返した。
「どういう事だ。」
「そのままの意味ですが。あなたは選ばれました。」
「人間は死ぬと、魂も死ぬ。正確には我々の部下達が処理します。輪廻転生なんてありません。しかし、億に1人、稀にあの世界に近しい性質の魂を持つ人間がいます。それがあなたであり、彼女もでした。」
「あなた達のような人間は死ぬと魂だけになるのですが、正直、あなた方の魂の処理は我々にとってはイレギュラーであり難しいのです。」
「比喩でいうと牛の解体業者に時限爆弾解体しろって言っているようなものです。」
「なので我々は、専門家に任せる事にしました。」
「あなた方を向こうの世界に送って、そちらで死んでもらい、処理してもらおうと。」
「さすがにこちらが頼む側ですので、向こうの世界で役に立つものを何でも1つ差し上げますよ。」
「どうです?向こうの世界で、今までできなかった事をパァーとやりたくないですか?」
「いやって言うなら仕方ないですけど……。向こうの神から一応あなた方用の魂取り扱い説明書をもらってはいますが。
すんごい手間暇かかるんですよねぇ。」
「普通の人間の魂なら1秒もかからず処理できるのに、私たちがやるとなるとあなたの魂の処理が終わるのは180年後ですね。終わるまでずっと意識ありますよ。辛いですよ。」
「あいつの時もこうだったのか。」
「知りませんね。私がこの担当を引き継いだのは5年前です。当時の担当だった先輩に聞いてみないと分かりません。」
「………………。」
「なにか特別な考えがなければ、異世界で何をやりたいか考えて、どんな力が欲しいか教えてください。」
(これでもう終わりか。22年……、後半からすげえ辛かったけど、最後にあいつが帰ってきてくれて、良かったな。)
——あの子は自殺ですよ
「…………違う。あんなの”帰った”なんて言わない。」
「どうしましたか?」
「俺を異世界に送ってくれ」
「はい。では……」
「7年前の!あいつが来てしまった……あの日の異世界に」
「……無理ですよ。」
「常識的に考えて時間逆行なんてさせる訳ないじゃないですか。」
「”させる訳ない”って事は方法はあるんだな。」
「頼む!このままじゃ死んでも死にきれねえ!」
「……」
「お願いします。俺があいつを救える希望があるなら、もう諦めたくないんです!」
自然と額は地面につき、人生初めての、いや死後初めての土下座が自然とつくられていた。
「あいつが傷つけられる前に!早く!俺はそこに行かないといけないんです!」
「どんな罰も受けます!俺の全てを捧げます!だから……!」
「神の前でそんな言葉、言うべきではありません。」
「ですが、神の前で言うという事はその言葉は嘘ではないのでしょう。」
「分かりました。あなたには罰を受けてもらいます。」
「……あぁ。」
「いえ、”罰”は語弊がありますね。"代償"です。あなたには時間逆行に等しい代償を払ってもらいます。」
「ですが、1人の人間に払えるものなんてたかが知れてます。」
「なのであとはあなたのプレゼン力ですね。」
「さあ、神をどう説得しますか?」
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俺は神に3つの代償、というより契約を交わした。
3つ目の代償を言い終わった時、
神は顔を気持ち悪いぐらいに歪ませ、
声をあげて笑っていた。




