別れ
「ゆうちゃんめっちゃ変わったね。」
「お互い様だろ」
「背もすごい伸びたし、髪型もイメチェンしたんだね」
「高校の途中からやっと伸び出したよ。あの頃はまだお前の方が背高かったな。」
「……あのさ、ありがとね」
「急になんだよ」
「七年行方不明だったやつがいきなり泊めろなんてさ。
今さらちょっと申し訳なく感じちゃってきて。」
彼女はベッド、俺はクッションを枕に床で寝ている。
この部屋が浴室付きでほんとよかった。
彼女の髪は少しばかりあの頃のツヤを取り戻したかのようで、「やっぱりこっちのリンスとシャンプーは最強だね!」と、すごく喜んでいた。
「別にいいって。しゅんってなんなよ。」
「……やっぱ持つべきものはゆうちゃんだね。」
「私を拒絶しないでくれて、私を夏乃って信じてくれて、それから……」
「信じてない」
「え」
「まだ信じ切ってねえよ」
本音だ。今までは勢いで喋ってはいたが、今になって頭が冷えてきた。「7年前に行方不明になったと思ったら異世界に行ってました。」そんな短い文章で片付けられる程この7年間は単純じゃなかった。
どんだけ探しても髪の毛1本見つからない、ふと考えると悪い想像ばかりしてしまう。ひとり、またひとりと捜索をやめていく中で、俺や夏乃の家族はずっと諦めなかった。
俺も最初の2年は必死に探したが、大学受験と浪人の期間の2年間は、学業を優先し、捜索に協力出来なかった。
しかし、2年ぶりに彼女の家を訪ねたとき、誰もまだ諦めていなかった。俺もまた捜索を再開して3年。今に至る。周りの人間から、何度も「諦める決心をすべき」だの「あなたの人生を大切にして」だの言われたが、彼女なしでは俺の人生は作れないほど彼女が俺にとって大きい存在だと俺は知っている。
「……そっか。そうだよね……。」
(だから明日も沢山話そう。今まで一緒に過ごしたはずの時間を全部埋めるくらい。そして俺にお前が仙波夏乃だと信じさせてくれ)
いつのまにか意識が沈んでいた。懐かしい人と久しぶりに会えた日だからか、とても昔の夢を見た気がする。
「ヴゥゥゥゥ ヴゥゥゥゥ」
「んー」
アラームのバイブ音が鳴った。朝7時だ。
まずは二度寝しないよう、音楽をかけて……
「っ違う!」
俺の部屋のベッドには昨日からもう1人住人がいたはずだ。
「夏乃ー?」
返事がない。
床に寝っ転がったままではアングル的に彼女の姿が見えなかった。
「よいしょっと」
まだ寝てるんだろ。彼女を起こそうと立ち上がったが、
俺のベッドには誰も寝ていなかった。
俺は長い夢を見ていたのか。でもそしたらなぜ俺は床で寝ていたのか。家中を探したが、彼女の姿はどこにもなかった。しかし、明らかに量が減ってるシャンプー、リンスが昨日、彼女がここに来て、シャワーを浴びた事を示していた。
彼女を探すがてら俺は日課の散歩に出かけた。
彼女が死んだと電話を受けたのはそれから3時間後のことだった。




