7年振りのあなたと
「はぁ…!はぁ……!」
(やっと…会える……!)
私は今夢を見ているのだろう。この夢を何度見てきたかもう分からない。夢から覚めて何度絶望し、目を腫らしたかもう分からない。あの日から、全てを失った私の心の支えだった景色が見えてくる。
大きなビワが実る公園の木々、中学校の頃引っ越しちゃったあの子のアパート、小さい頃蜂の巣だと思ってビビりながら通った蓮の花托。全部大切で一度も忘れたく無かったもの。
「あと少し……!」
あと三回の曲がり角であそこに着く。
1番大事な人達がいるところ。
「はぁ……!はぁ……!」
笑みが溢れて止まらない。
玄関まで来て、一瞬インターホンを押そうとした。
(何やってんだ。自分家でしょ)
私はずっと開きたかった扉を開いた。
「ただいま!」
「それで、お前を娘の振りをする不審者だと思ったおばさんに罵詈雑言を言われて涙ながらに逃走、そしてここに来たって訳か」
「……ゔん゙」
「そりゃまあそれが普通の反応じゃないか」
「だっ゙でぇ……」
「改めて聞くけど本当に夏乃なんだよな」
「あとティッシュ」
「ズズッ、そうだよ゙……?」
「信じられない」というのが本音だ。
俺がこんな冷静でいられるのはその気持ちと、突拍子の無さすぎる事が起こると笑ってしまう性分からだろうか。
彼女は異世界から帰ってきたらしい。
「いろいろ聞いてもいいか?」
「いいよ。別に。」
スッスッ
「なんか近くないか」
「だって7年振りだよ!ゆうちゃんにもめっちゃ会いたかったんだから!ほら、つめてつめて♪」
近くにきてから疑いが確信に変わった。
「お前なんか匂い変わった?」
ビクッ!
「……何が言いたい」
「ツンとするというか、お前ちゃんと風呂入ってんの?」
「こいつやば!そういうの平気で言うタイプだったの忘れてたわ!終わってるよ!」
「しょうがないじゃん…向こうは毎日風呂っていう文化じゃなかったし、それにこれの匂いじゃないの?!」
彼女が自分の左足を指差す。左足、というより左足の代わりをしているソレは俺が知ってるものとは違い、随分メカメカしい見た目をしている。
「……それについて聞いてもいいのか」
「だからいいよ。別に。」
「どうしてそうなったんだ」
「どうしてって、理由はあんまり言いたくないなぁ。
ちょっと仕事でしくじってそれからこれでやってる。
これでも5年は壊れてない優れものなんだよ?」
(5年……。5年前ってことは17からずっと義足なのか……。)
「あとはねぇ……これかな。」
彼女はその右側だけ長めの前髪をあげた。
そこには、なにもなかった。
「…………。」
「あのね……これもさっきと同じ理由。こっちは代わりを買う値段が足より高すぎて、手が出せなかったの。まぁ足ほど不便はしないけどね。」
何も言いたく無かった。これ以上聞くとさらに辛い事を教えてくるのではないかと思い、何も言えなかった。
「……ごめんね!暗い話ばっかりして。そっちはどんな感じだったの?」
「……俺はいつも通りだったよ。お前がいなくなっても、今まで通り登校して、大学受験して、一回落ちて浪人して、
なんだかんだ言いながら、第二志望のところに受かって
今大学2年生。」
「陸上は今も続けてるの?」
「いや、今は山岳サークルとか、軽音サークルとかをやってる。陸上はやってない。」
「そっか。」
「……」
「これからどうすんの」
「んーー、わかんない。とにかく帰らなきゃ!っとしか思ってなかったからなあ。どうしよう。」
「……今日泊めてくんない?」
「いいよ」
「いいの?!」
「別に、しょっちゅう互いの家泊まってたじゃん。
めっちゃ近くなのに。」
「親と喧嘩した日とかねー。帰りたく無かった日は泊まってたなー。」
「まぁこの家は俺の一人暮らしの家で実家じゃないし、泊まるのは初めてだけど、まぁいいっしょ。」
「てかよくこの家が分かったな。俺は引っ越したの大学入ってからだぞ」
「んー、なんて言えばいいんだろう……。ゆうちゃんのチカラの流れがここに続いていた的な。」
「分からんな」




