プロローグ
———彼女は死んだ
あっけなく、あの夏の日に姿を消した。
「今から7年前ぐらいだったな」
学校や友達、親戚、みんな彼女を探した。
「それも3年前に終わってる」
彼女とは幼稚園からの幼馴染だった。
うちの幼稚園では、お祝いの日には甘いお茶が配られる。
彼女が、俺に自分の分のお茶を分けてくれたときからこの気持ちは始まったのかもしれない。
「ガキの恋愛のはじまりなんてそんなもんだ」
そこから、俺たちは家が近くで、小中高全部同じ学校という典型的な幼馴染として過ごした。ずっと黒髪、肩下のセミロングを気に入っており、俺もそれが好きだった。
「ちゃんとアタックすべきだったなー」
高校では、彼女はバレー部、俺は陸上部に入った。
中学では同じ陸上部だったが、「得意な種目ない」と言って彼女は、高校では別の部活を選んだ。
彼女が髪を家以外で束ねているのが新鮮だった。
屋内と屋外だからあまり見る機会は無かったけど、よく家で話しながらバレーボールをオーバーで宙に上げていたのを覚えている。
「一回それで自分の部屋の照明ぶっ壊して泣きながら言い訳してたの面白かったな」
彼女が大好きだった。
「………うん」
あの夏休みの朝、合宿から昨日の夜帰ってきてまだ疲れてた俺は彼女からの朝の散歩の誘いを断った。
「……」
昼におばさんから電話がかかってきて、彼女がまだ帰ってきてない事を聞いた。
俺は「どうせ途中で友達と偶然会って連絡するのを忘れるほど楽しんでるんだろ」と彼女の日頃の行いからそう考え、
軽く散歩の事を話してから、溜まってる宿題を横目にまた
寝始めた。
あの日から7年間彼女は行方不明だ。
「……」
もうみんな死んだと思っている。
俺も含めて
「でも、彼女は今俺の前にいる」
俺の家の玄関に立っているのは、ぼさっとした前髪で顔のほとんどを隠し、ぱっと見で義足と分かる左足に、
古めかしいというより少し小汚いローブを纏った、
幼馴染 仙波夏乃を名乗る女だ。




