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(完了) 元マフィア、異世界で屋台を始める   作者: 星海凡夫


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第118話「最後の晩餐」


その日、屋台にはかつてないほどの人だかりができていた。といっても、いつもの常連客の列ではない。本店と二号店の前に集まったのは、これまで共に旅をし、戦い、料理を作り続けてきた仲間たちだった。


将軍が両店舗の厨房を往復しながら特大の粥鍋を抱え、グレゴールとエレナが長テーブルに所狭しと漬物の甕を並べる。ゴルドアとマクシミリアンは広場の椅子をすべて集め、ギリアムは久しぶりに大剣を背負い直して、少しだけ緊張した顔で立っていた。ヴァルケンと戦士たちは今日も包丁を握り、それぞれの得意料理を振る舞っている。シノは弟子の子供たちに最後の仕上げを教え、サジョウは一人で粥をよそい、アリシアは養生スープの寸胴を囲んで微笑んでいた。


「リクから届け物だ!」

広場の入口に現れたのは、東方の旅装束に身を包んだリクだった。手には母の鉄鍋と、村で水揚げされたばかりの新鮮な魚やアオサの大袋が提げられている。

「師匠、村から持ってきました。今日のために取り置きしてた最高の食材です!」

「よく来たな。道中はどうだった」

「順調です。村の屋台も、弟分に任せてきました。今日は——みんなと一緒に、最後の晩餐を囲みたくて」

「最後じゃない。一区切り、だ」

「……はい!」


リクが厨房に駆け込むと、サジョウがほっとした顔で出迎え、シノが「待ってたぞ!」と包丁を掲げる。アリシアが静かに微笑み、ヴァルケンたちが手を振った。


夕暮れ、長テーブルに料理が並べられた。将軍の粥、ヴァルケンたちの味噌汁、グレゴールの出汁巻き卵、エレナの漬物、シノと弟子たちの卵かけご飯、サジョウの粥、リクの潮騒の味噌汁、アリシアの養生スープ——そして、俺の焼きおにぎり。本店と二号店、これまでに生まれたすべての味が、一つのテーブルに揃っていた。


「よし、食え。遠慮するな」

俺が声をかけると、全員が一斉に箸を手に取り、思い思いの料理を口に運ぶ。広場に笑い声が溢れ、将軍が「粥の塩加減はこれでいいか」と尋ね、シノが「弟子たちの卵かけご飯、うまくなったでしょ」と誇らしげに言い、リクが村のアオサの出来を語り、サジョウが「私の粥、今日は自信があります」と微笑む。


リリアが茶をすすりながら、テーブルの端でその光景を眺めていた。

「賑やかだな」

「ああ。これが、俺たちの屋台だ」

「そうだな。これが——私たちの場所だ」


そこへ——ふわりと、見知った二つの気配がカウンターの隅に現れた。トシが扇子を広げて笑い、グーラが静かに一礼する。

「やあ、カズマ。最後の晩餐だって?俺たちも混ぜてくれよ」

「最後じゃない。一区切りだ」

「そうか。じゃあ、一区切りの晩餐だな」

「好きに食え。焼きおにぎりはまだある」

「ありがたく」


トシが焼きおにぎりをかじり、グーラが静かに粥をすする。シロガネとクロがくぅんと鳴き、ガルムと喪犬がテーブルの下で丸くなった。


夜が更けて、宴が静かに終わりに近づく。誰もが少しずつ酔い、笑い、そして静かに明日のことを考え始めていた。


「なあ、カズマ」

リリアが茶をすすりながら言った。

「明日も、屋台は開くんだろ」

「ああ。明日も明後日も、焼きおにぎりを握る」

「そうか。じゃあ、私もいるよ」

「ああ。ここにいろ」


カウンターの隅の小さな扇子が、かすかに風に揺れている。その絵には今、この広場に集うすべての者たちの姿が描かれていた。


(第118話 終)

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