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宿命報道#39 ■葉山豪若頭、登場!/「成敗して何が悪い」

「宿命報道」は、大神記者の調査報道デビュー戦。彼女の活躍は、その後、犯罪サイコパスと対決する「極限報道」、最凶権力と対峙した「暗黒報道」へと続いていきます。

(「宿命報道」は9月1日公開スタート。長編で、毎日更新。「極限報道」「暗黒報道」は公開済です)

 ホテルロビー奥に広がる喫茶店。

 木製のパーテーションがあって、個室のような感じの場所での対面だった。窓の外は、和風庭園が広がり、人工池に流れ込む幾筋もの滝の流れとその音が、涼しげな風情を醸し出していた。


 羽谷組側は、若頭の葉山豪と、伊藤太郎、さらに昨日会った若い男小渕良太もいた。

 全日本テレビ側は吉嵜、大神、高橋の3人だった。

 相手が反社勢力の極みの存在だとしても、取材を申し込んだのはこちら側なので、礼を欠くわけにはいかない。吉嵜は、その点を大神と高橋に事前にくどいほど伝えておいた。


「丸菱商事との関係なんて、いくらつついてもなにも出てこないぞ」と若頭。低くてよく通る声で言った。

「こちらの取材では、カーニバル社とあちこちで衝突していると聞いています」と吉嵜が言った。

「カーニバルってなんだ?」。若頭が伊藤に向かって聞いた。伊藤はすかさず、「共和会ですわ」と答えた。

「共和か。うちの若いもんがちょっと痛めつけているだけだろう。そんなちっこい話を俺に聞いてどうする」


「丸菱商事の利権をめぐる抗争という見方ができるのですが、真相は?」

「死人が出たんか。抗争とか大げさなものじゃないだろ。よくある若者同士の喧嘩のたぐいだ。利権とかそんな大げさなもんじゃない」


「マディ社の記者会見を妨害したのは羽谷組ですよね」

 大神が毅然とした口調で聞いた。


「お嬢ちゃん、怖い顔して何てこと聞くんだい」。睨みつけた顔に殺気が漂っていた。

「まあいい、教えてやろう。あれはうちの若いもんがやった。サツの調べにもその点はもう認めてる」

「なんであんなことをしたのですか。暴挙以外の何物でもない」


「動機か。サツに聞け。お前らの仲間だろ。マスコミってのは、上から目線で偉そうなことばかり言ったり書いたりしているが、いざ自分が当事者になるとワーワー被害者づらして騒ぎ出す。事件取材とか言っても、サツの陰に隠れてこそこそやっているだけだろう」

 そう言うとタカのように鋭く細い目を吉嵜ら3人に向けた。


「まあ、お前らは直接事務所に来るとか、いい度胸している。その点は認めてやってもいいがな。だから今日、会ってやることにした。吉嵜と言ったか。あんたの噂は聞いているぞ、相当しつこい記者らしいな」

 それを聞いた大神は、思わず噴き出しそうになった。この世界でも吉嵜さんのしつこい取材姿勢は有名なんだと思った。


 若頭はコップのビールを一気に飲み干すと、「結局、聞きたいのはマディ社の件か。アメリカあたりからやってきて、日本の企業を引っ掻き回すのはやめろっていうことだ。そうは思わないか。正義ヅラして記者会見なんぞ開いても、目的は株価操作だ。要は金儲け。そんな奴らを成敗して何が悪い」


「丸菱商事の過去の問題をマディ社が取り上げようとしたから、羽谷組が暴力をもって阻止しようとした。やはり丸菱商事と関係があると思われても仕方のない行動です」。大神が食らいついた。


「丸菱だろうがどこだろうが関係ねえ。成敗すべきだから成敗したんだ」

「それでも、なぜあそこで記者会見があることを知っていたのですか? 報道関係者以外には伝えていなかったはずですが」と吉嵜が聞くと、若頭は突然、大笑いした。


「それぐらいの情報、どこからでも入ってくるわ。情報収集なんて、あんたら報道機関の専売特許じゃねえよ」


「丸菱商事との関係は本当にないのですか。岡本貿易は羽谷組のフロント企業だと聞いています」と吉嵜。


「フロント企業? 聞いたことない言葉だな。わしらのことを叩くのは構わんが、まっとうに仕事をしている企業の邪魔はしないようにな。合法的に商売しているのに、暴力団があやつっているとかステレオタイプな表現はやめろ。マスコミの悪いところだ。取材もせずに警察の発表だけで書く。勝手に暴力団員だと認定して基本的人権まで否定する。まっとうに働くこともできん。大通りを歩くこともできん。『人権を守ろう』とか言っているあんたらにはわかってほしいもんだな。そういう視点で記事を書けよ。いくらでも協力するぜ」


「岡本貿易との関係について伺っているのですが」。吉嵜が再び聞いた。

「岡本貿易という会社は知っている。業務内容については調べているんだろ? 全く問題はない。お前らも、会社を直接訪ねたことがあるのか。社員はみなまじめに働いているし、相当な業績を上げている。最初から色眼鏡でみたらかわいそうだ。わしらもいい会社だから応援したんだが、前に出ると、あんたらに叩かれるから、しっかり距離を置いているよ」


 核心部分についてはうまくはぐらかす。別の話に巧みに切り替えてくる。

 吉嵜は、これ以上聞いても無駄だと感じ、取材を打ち切ろうと考えた。


 その時、大神が意表を突く質問を繰り出した。




お読みいただきありがとうございました。

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