脱衣1
以前にも思ったことではあるのだが世の中には色々な人がいるもんだな~と感心させられる時がある、今回の件もそのうちの一つに当てはまることだろう。
喧嘩をした相手が打たれ弱い格闘家だと誰が思うだろうか、その名前の響きからして格闘家ならこちらがやられてもなんらおかしくもないはずだろう、しかし結果はこのありさまで、こんな結果で喧嘩が終わってしまったのだから完全にこちらとしても煮え切らない、モヤモヤとした気持ちが残ってしまうのも仕方がないことだ、自称撃たれ弱いというところは本当のことだたんだな。
「コウお疲れ様~、見てただけだけどかっこ良かったよ~、ね? ハミィ」
そういいながらマジェとラミアスさんと共にベネットのそばで立ち話をしている俺達の所にいつのまにか手を繋いで歩み寄って来ていたカッチェは今回の被害者である彼女に微笑みながらも話を振るのだが。
「……」
うつむきながら顔を赤くさせている彼女を視界の隅に入れていた俺の気持ち的には、今はそっとしておいてほしかったと言いたい、外見が男と言うだけで中身は女性である彼女の仕草やその立ち振る舞いは、とても女の子としての雰囲気を醸し出していて、見た目も女であったらな自分自身、間違いなくやられていたであろう、そんな彼女に対する今の自分の気持ちはというとやはり見た目の性別などもあり、仲間として、相棒としての大切さが優先されている、というかされてなければヤバイ、でないと俺はいろんな意味で階段を一歩づつどころか駆け足で駆け上がってしまう事になるだろうしな。
「それでどうするよ? このまま転がしてほっとくのか?」
倒れてからそれなりには時間もたっているはずなのだがいまだに床ペロ中のベネットを見下ろしながらこれから先の展開を聞いてくるマジェだが俺自身どうしたものかと困ってしまう、何せこんな人間を相手にするのは初めての事なんだ、身近にいる人でこれ以上か、同等の変人なんてサイモンしか思い浮かばない。
しかしどうなんだろう、この身近で二人もの変人に出会うことになったのだから、それを世界程の広さで考えると他にも変な人はいるのかもしれないな、例えば攻撃が当たらない女戦士でその正体は金髪巨乳の貴族様でド変態とか、ウィザードという魔法職にも関わらず、使える魔法は一日に一発だけの変な名前の少女とか、役に立たなそうな宴会芸をマスターしているヒーラーなどなど、そう言った人達もこの世界のどこかには存在しているのかもしれないな。
「ん~ちょっと待ってくれ、考える」
マジェにどうするかと問われて思ったが、今回の喧嘩を買ったのは俺なわけで、今後の展開なども決めるのが自分の責任であるだろう、そう考えながら腕を胸の前で組み、顎に軽く手を触れさせて考えるがやはり気になるのは自分自身の気持ちにザワつきがある事だろう、今もなお脳裏に焼き付いて消える事のない彼女のあの姿、拳を震わせて望んでなったものでもないその容姿を、その呪いを晒しものにされ、笑いものにされた事に耐えるあの立ち姿、あんな思いを今後は彼女にさせない為にもここは動く所だと思ってしまう。
「コウ、私は大丈夫だから、コウももう気にしないで、私は大切な人達が私の事を知ってくれているだけで十分だから」
うつむいていた顔を上げてまだ少し赤い顔のままでそう言った彼女の言葉が耳に入ると余計にどうにかしたいと思ってしまう、しかしどうすれば……。
「ハミィはそれで本当にいいのか? あれだけ酷い事を言われて笑いものにされたんだぞ? こいつにも同じ思いをさせてやってもいいと思うぜ?」
「同じ思いって……、そう言われても思いつかないし、今も言ったけど私は皆が私の事を解ってくれているだけで十分だよ」
考え続ける俺をよそにマジェとハミィはお互いの意見を交換し合うがハミィ自身、正直な所どうすればいいのかわからないのかもしれない。
「…酷い事、屈辱、笑い物…か」
何となくではあるが考えながら口に出したその単語は結果としてある思い出を俺の脳裏に蘇らせた、思いでと言っていいのかどうかは微妙な所ではあるが、同じ目に合わせるとしたらこれしか思い浮かばないのも事実だな。
「……決めたよ、ハミィ! カッチェ! 二人はちょっと後ろを向いててくれ」
「え? いきなりどうしたの? どうゆうことコウ?」
「どうするかちゃんと考えて答えを出した、俺は大切な物や人を守る為ならこの身を犠牲にすることもいとわない!」
そう宣言した俺の言葉にいまいち理解できない三人はお互いの顔を見合わせながら首を傾げ、どうゆうことだと先を促す、そんな皆の顔から背を向けて、いつになれば起きるのかと少し心配になって来るベネットの向き直り大声で宣言をして覚悟を示してやる。
「俺は今から、ズボンを脱ぐ!」
「「えぇぇ~!?」」
「あ~なるほどな」
驚く女子二人と何故か俺の考えが解ったかのようなマジェの声がギルド内に響き渡っていた。




