大の字
ブレイクとは脱がせること、あの人が言っていた言葉であり、その身を犠牲にしながらも教えてくれた技、あの人ならもっと簡単にできたのかもしれないが今の俺ではこれが精一杯か。
ブレイクにより腕の防具を外されたオーガを見据えながら次の段取りを考えて行く、とはいっても何度かブレイクで防具を駄目にし、後方にいるマジェの攻撃が効く様にするぐらいの考えしかないがその過程が何より難しい。
「グガァァァ!!」
降り降ろした棍棒と手に持つ盾を上に掲げながら吠え、横をすり抜けて背後に回った俺へと向き合い、視線が合う事でお互いに睨みつけ合う。
防具を付けているとう事はその部分の弱さを表している、その証拠に足には防具をつけていないのだ、つまり防具をはぎ取ってしまえばこっちの攻撃がちゃんと効くってこだ、ここまで来れば突破口は開いたも同じ、ならあとはこのまま流れを掴み仕留めるだけだ!
再び距離を詰め、殴り合う覚悟を決めて至近距離で立ち止まり、右手に持つ剣で斬り付けながら左手の盾で防ぎ、熾烈な戦いを繰り広げていく。
「うるぅぁぁぁぁ!!」
「ガァァァ!!」
盾で殴りくるのを手に持つ盾で防ぎきり、降り降ろされる棍棒を剣で軌道をずらす様に軽く当ててずらし、自分よりたっぱの大きい相手の攻撃を防ぎながら隙をうかがう。
「行くぞハミィ! 一気に叩き込むぞ!」
「わかった!」
後方からの掛け声と共に矢と魔球が解き放たれて防具を失った腕の部分に突き刺さり、爆散して傷を負わせていく、たまらず腕を庇う様に両手で防御に入るオーガの隙を付く様に脇に滑り込み、胴体を守っている鎖帷子のつなぎ目へと剣を振り払って壊し、追い払う様に振るわれた攻撃を盾で受けながら数歩下がる。
「いいぞ! このままいくぜ!」
「ああ! わかってる!」
気合十分なマジェとハミィが引き続き腕を狙い、その隙を付いて防具を壊す、その作業を何度も繰り返す事によってついに鎖帷子は壊れ、オーガの巨体からずれていき、重い金属音が響かせながら地面に落ちて行った事で残りの防具は左腕と腰、そして頭の部位だけになり、更に戦いを有利に進めて行く事が出来る状態になるが、同時に問題も発生していた。
「コウ! もう矢がなくなっちまったぞ! 言われた通りに一本は残してるけどどうするんだ!?」
何度も隙を作る為に攻撃をしていたマジェの矢がとうとう底をついたのだ、しかしそれは今の状態を作り上げる為に必要な事で、ここから先は自分の頑張りどころになる。
「いつでも撃てるようにしててくれ! タイミングは……すぐに解る!」
少し心配にはなって来るがそれ以上の言葉を伝える余裕はない、矢が飛んでこない事にオーガが気づく前に決着をつけなければ更に戦いが長引く事になる、そうなってしまえば俺の体力の方が持たない。
『行くぞぉ!』
念のためにハウルで注意を更に自分に向けて、防具がなくなった胴体を再び剣で斬りかかり、その体に一筋の切り傷を刻み込む。
「アァァァアア!!!」
斬られた事により雄叫びが上げながら振り被る棍棒を横に移動する事で回避して、返り血を浴びながら再びその体に傷を刻み、振り払うように繰り出された攻撃を、盾で頭部を守る様に上に構えて屈んで回避し、顔を上げると後を追う様に繰り出された木の盾での薙ぎ払いが目に入り、反射的に後ろに飛ぶが体の側面を殴打される事になり、吹き飛ばされながら地面に手を付いて勢いを止める。
そしてそこに至って判明した事が自分自身の寒気を引き起こす原因となった。
「く……いってぇ……」
間に自分の盾を挟んでいたというのに木の盾で殴られた衝撃は、体の芯まで響く様に伝わって行き、口の中に鉄の味が広がり口角から何かが流れ出る、その感触が気持ち悪く袖で拭った跡に目を向けると赤い液体、が付着しているのが解る。
『ヒール!』
後方に控えているカッチェからすぐに魔法が掛けられて動けるぐらいに回復するが、事態はおおよそ悪い方へと動いてしまっていた。
カードの効果がある時にくらった攻撃は痛みがなく、その衝撃も体に伝わってくる事が無かったが今は違う、痛みもあるし体の芯にまで来るような衝撃、それらが表す答えというのが。
「カードの効果が切れたか……」
「コウ! 大丈夫なの!? 今口から血が……!」
「大丈夫だ! まだやれる!!」
心配をして掛けられたハミィの声に答えながら地面から手を離して立ち上がり、次の手を考えていくが思い浮かばず、結局至近距離でやりあうしかないと結論付けて再び懐に入り込む為に走り出した時、後方から声が聞こえて来た。
「ハミィ! こっちは行けるよ!」
「私も大丈夫! 同時に行くよ!」
走りながら声の方へ視線を向けると、二人は杖を前に構えながら先に魔力を集め、いつでも飛ばせるという状態になっているのが垣間見える。
「「いけぇぇ!」」
そして二人の掛け声と共に放たれた青い光の魔球は狙い通りに飛んで行き、それを察知したオーガの盾で防がれ爆散する事で辺りに白いモヤを作り出し、絶好の機会を作り出して見せた。
「ここだぁぁ!」
思わず口から出た言葉を無視しながら作り上げられたモヤの中に入り込み、左手に持つ盾をオーガの顔に向けてワザと投げて視界を隠し、足元で剣を立てて膝を曲げ、一気に飛び上がり、剣を突き上げて串刺しを狙うが顔を逸らされる事で兜だけが打ち上がって宙を舞い、そして邪魔だとばかりに振り回された腕が腹部に当たり、地面に叩き落される事になる。
「グアァァ……」
「コウ! 離れて~!!」
地面に倒れた俺を見下ろしながら低く唸るオーガは右手にもつ棍棒をゆっくりと振り上げて行き、離れた場所からは走る音と共にハミィの切迫した声が聞こえ、こんな状態になっているにも関わらず焦ることなく俺は聞こえていると信じて口を開いた。
「ちゃんと仕留めろよ?」
「あったりまえだ!」
後方から聞こえて来た返事と同時に放たれた矢はオーガへと飛んで行き、まるで吸い込まれているかの様に眉間へ深々と突き刺さり、棍棒を振り上げていた態勢のまま重く地面に響き渡る音を出して仰向けに倒れて行った。
「よぉ相棒! 怪我はないか?」
地面から伝わる振動をお尻に感じ取りながら後ろから掛けられた声に首だけで振り返り。
「マジ疲れた……」
そう一言ぼそっと呟いて地面に大の字になり、達成感を感じていた。




