ブレイクとは脱がせる事2
全身を包み込んだ光は身に付けている防具へと吸い込まれる様に集まって行き、全身に着けている防具が淡く輝いている、その光は優しく温かさを感じさせてくれるもので、どやら悪い効果ではなかったようだ。
「行けそうか?」
カードを使った俺に向き合う様にいたマジェから確認の言葉が聞こえて来る。
「ああ、問題なさそうだ! 行くぞ!!」
石造りでできた部屋、その前の通路で座り込み、作戦会議を行っていた俺達は立ち上がり、部屋の奥で箱に腰掛けているオーガを見据えながら一気に中へと走り出し、距離を詰めて行く。
走りながら一撃目の攻撃をどんな風にするといいか考えるがいい案は浮かばない、それならと右手に持っていた剣を両手で持ち、全身の力を伝える様に一気に振り抜く事をえらんだ。
対するオーガは俺達の接近を察し、腰かけていた箱からその身を上げてその場で右に持つ棍棒を肩に担ぐようにし、腰を落とす、どうやら向こうも初めの一撃目から全力で来るつもりのようだ。
お互いに目を合わせたまま近づいていく距離を意識しながら気功を使い、全身に力を行きわたらせて少し多めに息を吸い込み、歯を食いしばる。
『うおぉらぁぁ!!』
「グガァァ!!」
間合いに入る、その一歩で地面を踏みつける様に力を加え、後の事も考えてハウルを混ぜながら雄叫びを上げて腕だけではなく、全身で振る様に振り被った剣を振り降ろす、体の軸がブレて居ることも気にせずに降り降ろした一撃は自分とオーガの間でオーガが降り降ろした棍棒とぶつかり合い、重く響く音が辺りに広がる。
ぶつかり合った剣は棍棒に食い込んではいるが棍棒自体の太さか硬さ、もしくはその両方の効果で斬るどころか折れる状態にもいたってはいない、踏ん張りを効かせて両腕に力を更に加えて棍棒を押し返す。
「フン!」
「あっぶね!!」
押し返す事に気を取られている俺にオーガは頭突きを繰り出し、体ごと首を横に動かしてなんとかかわす、そうしている間にも棍棒に食い込ませている剣は逆に押し返されてしまい、仕切り直す為に振り払う様に剣を動かして後ろに素早く飛び下がる。
「大丈夫か!」
「ああ、問題ない!」
視線はオーガに向けたまま後ろから聞こえて来るマジェの声に返事をし、自分で思っていたよりも息ずかいは荒くなっているのを感じとり、深くゆっくりと呼吸をして息を整える。
「ガァァ!!」
「させるかよ!!」
息を整える俺に向かって距離を詰めようとした所をマジェが弓で足を狙い撃つ、放った矢はオーガの足の甲に当たりはするが矢の先が少し刺さる程度で止まってしまい、ダメージらしいものはほとんどない、裸足であるにも関わらずその程度で止まってしまったのだ、しかしけん制の効果はあった様で俺との距離を詰めようと動いた所を下がらせる事には成功していた。
「くっそ、こいつの足どうなってんだよ! 硬すぎるだろ!」
「他の所を狙うしかないよ! 足止めにはなっているみたいだけどコウが動けるように隙を作らなくちゃ~!」
「そうは言うけど足以外は結構防具で固めてやがんぞ!」
部屋の入り口で見えていたオーガは箱に座っていたのもあり、その身に着けている全身の防具を見る事までは出来ていなかった、だが今の立ち上がっている状態で改めてその体に目をやると足以外は鎖帷子をはじめに腕や脛当て、それに兜に至るまでそれなりにちゃんとした物を身に纏っていたのだ。
「これは……少しだけ長引く事になりそうだな……」
あわよくば初めの一撃でダメージを与えて一気に畳みかける、そんな甘い考えを抱いていた事自体がまず間違いだったとここに来て気づかされる。
少し広い部屋の奥でお互いに左手に持つ盾を体の前で構えて腰を落とし、肩幅まで足を広げた状態でにらみ合い、すり足で横に移動しながら相手の出方や隙を伺う。
今のこの状態で後ろにいる皆に攻撃が向かないという事は、それなりに敵意を俺に向ける事には成功しているという事だろう、それならこの状態を維持しながらなんとかするしかないか、問題はカードの効果時間だけど……。
戦闘に入る前に使ったカード、その効果は余り長くはないだろうとハミィが予想していた、出来れば防具に効果が残っている間に流れを作っておきたい。
「マジェ! 俺がやりあっている間にどこでもいいから矢を撃って少しでも隙を作ってくれ!」
「それはいいけど防具着けてる上にコウが近くにいたんじゃきわどい所を撃ち抜く事なんてできねぇぞ!?」
「それでいい! それと矢は最低一本残していてくれ!」
「一本!? 一本だけ残してどうしろってんだよ!」
「信じろ! 俺もお前を信じてる!」
「な!?」
オーガとにらみ合っている今は他の所に目をやる暇はない、それでも少し離れた後ろの方でマジェの驚く様な声はちゃんと聞こえて来た。
「カッチェは回復に専念、ハミィはマジェと同じ様に少しでもいいから隙を作ってくれ! でもやりすぎないようにな! そっちに敵意を向けられると取り返すまでに時間がかかると思うから!」
「「解った!/うん!」」
作戦はある、けど今のこの状態からどう動くかだ、向こうも攻撃して来ないってことは多分同じ様に攻め切れないと思って動けないからかもしれない。
相手の動き一つ一つに注意を払いながら間合いを取りあう今、うかつに攻めるのは良くないだろう、でも動かなければ有利になるかもしれない条件の一つ、カードの効果が切れてしまう、それならこっちから動くしかない!
にらみ合うままの状態で一度浅く息をしてから肺の中に程よく空気を吸い込み、息を止めて肩幅に開いた足に力を入れながら地面を蹴る様に走る。
一歩一歩踏み出すごとに足の指で靴の底を掴む、そうする事によって地面を蹴る際の加速力を上げてお互いの距離を一気に詰め、右手に持つ剣で掬い上げる様に斬り上げる。
「ガァァ!!」
短い雄叫びを上げながら接近した俺に向かい棍棒を高く上げて降り降ろし、お互いの武器は又しても間でぶつかり合う、しかし先ほどとは異なり、剣の方が押し負けて弾き飛ばされそうになるのを歯を食いしばり、剣を握る手に力を更に込める事でなんとか取り落とすのを耐えた。
「行くぞハミィ!」
「うん!」
後方から聞こえて来た声と同時に矢が飛んでオーガの肩に当たり弾かれ、魔力の塊であろう薄い青色の光の球体は左腕に当たり乾いた破裂音を響かせながら散って行き、何事も無かったかの様に遠距離から攻撃した二人に見向きもしないオーガはそのまま左手で持つ木の盾で剣を取り落しそうになり、意識をそちらに向けてしまった俺の側面を殴り付け、強い衝撃と物がぶつかる事で生じる独特の音が体に伝わり、ぶつけられた勢いで横に滑る様に動かされる。
「く……いった、くない?」
『ヒール!』
後方から飛んできた回復の魔法、オーガに向けた視線を少しだけ後方に向けるとカッチェが杖を両手で前に構えて魔法を使っているのが解り、すぐにオーガへと視線を戻す。
カッチェが回復してくれたけど、今痛くなかった、もしかしてこれがカードの効果か? 防具にその効果があるという事はそのまま、防御力が上がっていると思っていいのか……?
「コウ大丈夫!?」
「大丈夫だ! カードの効果があったらしい!」
簡単にではあるが、心配してくれるカッチェへと返事をしながらどう攻めようかと考えようとした時、殴る事で横に振り抜いた盾を戻し、大きく一歩踏み込んで再びオーガは盾で殴りかかり、咄嗟に盾を体の前に構えて右手に持つ剣を持ちながら盾を支えて衝撃に備える。
ぶつかり合った盾から辺りに響き渡る音が発せられるが先ほどの攻撃よりも力がかかっていないのか盾を支える腕ごとではあるが少し押し込まれる程度で済み、上半身を守る様に構えていた盾を少し横にずらし、剣で斬りかかろうとした時、オーガは棍棒を振り上げて今にも叩きつけようとしているのが見えた。
「や……っばい!!」
なりふり構わず横に飛び去り、自分がいた位置から轟音と共に衝撃が地面を伝わるのを肌で感じながら地面を転がり、片膝と剣を握ったままの拳を地面に付け、オーガを見ながら態勢を急いで戻す。
「くっそ、やっぱ効かねぇ!」
「こっちも効いてないみたい!!」
飛びのいた俺のカバーに入る為に矢と魔力で何度も攻撃をする二人から焦りとも取れる声が上がる。
「グゥゥ……」
二人の後方からの攻撃が効かないにしてもうっとおしくなったのか、俺と向き合い、俺だけを見ていた視線を二人に移し、オーガは待ち望んでいた隙を露わにさせる。
(今だ!!)
地面に付けていた拳と膝で地面を押し返す様に勢いを付けて体を起こし、足の裏で地面を蹴って走る。
後方にいる二人に少しだけ敵意を移してみせたオーガは、勢いよく動き出した俺への反応が遅れ、それでも棍棒を振り上げて叩きつけ用とするが、その時にはすでに遅く、横をすれ違う様に走り抜けながら振り上げた腕の裏側にある、防具の留め具を剣で斬り付けて断ち切り、地面に砂埃を上げながら勢いを殺して振り向いた先には、腕に着けていた防具が地面へと落下し、辺りに甲高い音を響き渡らせていた。
「やっと……一つ!」




