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迷宮3

 コーンとの戦闘は思いのほか早く終わりを迎えた。


 部屋の奥で二匹を抱え込み、向き合いながら攻撃を防いでいる間に一匹目をハミィが杖の先に魔力を集め、飛ばす魔法を後頭部に当て、前のめりに倒した所でマジェが急所である股の部分に弓矢を撃ち込む事で仕留め、その隣で一心不乱に俺を殴り続けていた二匹目は、いつの間にか後ろからダガーを抜き、コーンの足元にまで来ていたカッチェの急所滅多刺しにより腕を振り上げたまま体を震わせ、地面に倒れた。


 前に三人で狩りに行った時は地面に倒れている俺を殴り続けるコーンでカッチェのその様子を見ることは無かったのだが、今回は仲間の様子を見る事に気をつけていた事もあり、その様子を見てしまう事となる。


 足元に来ていたカッチェはダガーを両手で持ち、突き上げる様に何度も抜き刺しする事で顔にコーンの体液であろう透明な液体が掛かっている事にも気にせずに刺殺した、倒れているコーンの股や足は刺された事で流れ出た液体が付着していて透明であるが故にそれほどの悲惨さは無いがこれが赤色だった場合、惨殺事件の現場だと思われてもおかしくないだろう。


 「お疲れ様~、怪我とかは? 大丈夫~?」


 顔に付着している液体を服の袖で拭いながら先ほどまで殴られ続けていた俺への心配をしてくれているのだが、こちらとしては目の前で繰り広げられたあの様子を見てしまった後だと少し距離を取りたくなっても来る。


 「大丈夫だよ、何度か殴られはしたけど怪我とかはないかな!」


 「そっか~、良かった、これの素材は回収するの~?」


 地面に倒れたまま股に弓矢を指してる個体とその隣でいまだ股から体液を流している個体、その二体の素材をどうするかという事なんだろうが、そもそもギルドでクエストを受けていないし、素材の買い取りはしてはもらえないはずだ。


 「ラビでは素材は持って帰らないの、クエストを受けてないという事もあるんだけど、内部にある宝箱の中身を回収する為に素材とかはよっぽど貴重な物か、どうしても欲しい物以外は持たない様にしないと他が持てなくなっちゃうから」


 四人いるとはいえ、それぞれが持てる量にも限界はある、それに荷物が重くなるという事は自然と自分自身の体力も消耗する事になるし、動きも遅くなったり動きにくくなったりもするだろう、まだ全体の広さもわかっていない状態で必要以上の荷物を増やすのはよくはないというのもありそうな気がする。


 「ハミィの言う通り、素材は回収せずに行こう、まだまだ先は長いかもしれないしな」


 結論が出た事で先に進む為に再び部屋から通路を警戒し、左右に何もいない事を確認してから全員で先に進み、先ほどコーン達が来ていた通路の角まで来ると皆に止まってもらい、一人でその先の確認に行く。


 角を曲がった先も石造りな通路は続いているが一本道の途中で部屋と思われる場所の入り口が左側の壁沿いにあるのが見えた、通路にも敵が居る様子はなくそのまま進んでも問題はなさそうだと判断し、振り向いて合図を出した後先に進む事にした。


 「部屋みたいなのがあるっぽいから次はそこに行ってみよう」


 「またコーンが居たら面白いよね~」


 「もうコーンはいいんだよ! これ以上ケツを撃ち抜きたくないわ!」


 先頭を歩く俺の後ろではハミィがいつでも魔法を使える様にと気を張っていて、その後ろにカッチェ、最後尾にマジェというアルスタの洞窟で進んだ様な位置取りで先に進み、通路の途中にある部屋の入り口にまで来ると壁に身を寄せ、ゆっくりと顔だけを出し、中を覗き込む。


 部屋の中はそれほど広くはなく初めの部屋や通路と同じ様な石で出来た壁や天井で、特に何かが変わっているわけでもないく、敵もいない、ただ部屋の奥に箱がある、そんな部屋だった。


 「敵はいないけど箱があるな、あれがハミィの言ってたラビの宝箱かな?」


 「箱があるならそれで間違いないと思うよ、それ以外に何かあったとかは私は聞いた事がないしね」


 「そっか、大丈夫、皆中に入っていいよ、敵いないから」


 通路の壁にへばりつく様にしていた警戒を解き、俺を先頭に部屋の中へと入り箱の前まで移動する、部屋の奥にあった箱は石畳みの上に無造作に置かれている様で箱自体も木で作られていて、これといって何か変わっている所などはなかった。


 「これ開けていいの~?」


 「待て待て、ここは俺だろう? ダンジョンやラビの宝を開ける役目と言ったらハンターしかないだろう!」


 確かにこの世界の冒険者としての職種には盗賊などと呼ばれるものはない、一番それに近く、箱に何かあった時もなんとかしてくれそうなのがハンターだと思うのも間違いではないだろうな。


 「そうなの? それじゃぁマジェ開けちゃって~!」


 両手の指をパキパキと鳴らしながら箱の傍でしゃがみ込み、蓋に手をかけて一気に上へと開いた後、中を覗き込み、後ろにいる俺達三人に向けた顔はなにやら困った様な顔をしていた。


 「どうしたの~? 何も入ってなかったの?」


 「いや、入ってはいるんだけどこれ、何かわからん!」


 困惑しながらも再び箱の中にある物に視線を戻すマジェ、そのマジェに覆いかぶさる様に上から覗き込むカッチェ、仲いいな~と思いながらも邪魔にならない様に箱の側面へと移動し中を覗き込む。


 「オレンジ色の……水晶?」


 「なんだろこれ? ちょっと綺麗だね~」


 「な? わからんだろ?」


 確かにわからない、こんな物今まで見た事がないな、でも確かラビの中で手に入る物は冒険者が使う物が表れるという話だからこれもそうなんだろうか?


 「あ~、これは魔結晶だね」


 「「「まけっしょう??」」」


 「魔結晶は冒険者の装備に魔法的な効果を付ける時に鉄と混ぜて使われる物で、鍛冶屋とかには欲しがる人もいると思うよ」


 そうゆう事ならカマウリさんの所に持って行けば買い取りなんかはしてくれるかもしれないな。


 「あとは……何かのカード? なんだこれ?」


 「それは魔法の効果が込められているカードだね、使用者が手に持って念じるとカードに込められている魔法が発動する仕組みだよ!」


 つまりこのカードを持っていれば俺でも魔法を使う事が出来るという事か。


 「まぁこの手の物って補助効果の魔法が込められているからタンクさんとかが持っていたりする事が多いと思うよ!」


 タンクが持つのはいいのだけど戦闘中に使う事なんて出来ないし、どうすれば……あ、戦闘始まる前に使えばいいだけか。


 「それじゃそれは俺が貰ってもいいのかな?」


 「いいんじゃね? はいよ!」


 箱の中に手を突っ込み、カードを取ったマジェはそのまま俺へと手渡し、受け取った物を腰にぶら下げている袋の中へと終うことにする。


 「ここはこれだけか、そんじゃ次に行こうぜ!」


 「そうね、先に進んで他の部屋も見に行きましょ」


 覗き込んでいた箱から体を離し、次に進む為に一度周りを見渡すと何かが足りない、何故かそう感じてしまった、何かがおかしいと。


 「あれ? カッチェはどこ行ったんだ?」


 足りないと、何かがおかしいと思った原因、それはカッチェがいつの間にか俺達のいる部屋からいなくなってしまっていたのだとマジェの言葉で解った、今までここにいたのにいつの間にいなくなったんだ……?


 「今までここにいたよな?」


 「うん、確かにいたんだけど……」


 もしかして何かあったのか……すぐに探しに行かないと!


 部屋の入り口に走り出し、通路を通り、はじめにいた部屋に戻ろうと走り出そうとした時、俺達が進んできた通路の反対側、これから進むはずの方向からカッチェが部屋の中へと走って入って来るのが見えた。


 無事だった事に安心をしたが当のカッチェはそのまま部屋の奥に置かれている、今まで俺達が中を覗き込んでいた箱の裏側へと走り込み、身を隠す。


 (何やってんだ?)


 「みんなごめん~! やっちゃった~!」


 わけが解らずその内容を聞こうと声を出そうとしたとき、カッチェが走って来た方向の通路からは何かが走って来る様な足音が聞こえてきた。

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