マジェのトラウマ
ビビりながらも入り口を潜った先には石畳で出来た床があった、壁の方に目をやると壁も同じ様に石で出来た壁で天井までもが石で出来ている、入ったことは無いがどこかに神殿があって、その内部ならばこんな感じなのだろうかと思わせる造りになっていた。
「ここがラビリンスの中か、意外とちゃんとした造りで出来た場所に出るんだな」
「そうだね~、思ってたよりかは綺麗な場所だね~」
「まぁあっちこっち壁がはがれてる様な所があるけどな」
辺りを見渡すとマジェの言う通り、所々壁の石がはがれている様な所がある、年数といっていいのかわからないがどこか古い場所の雰囲気を漂わせていて実際に自分たちの世界のどこかにある場所に飛ばされて来ているのかと思ってしまう。
「ここどこら辺なんだろうな? なんかだだっ広い部屋の様にも見えるけど……」
マジェの言葉を聞き、辺りを見渡すと石で出来てはいるが床や壁などから確かに部屋の様にも見える場所に俺達で出てきていた、前方には部屋の出入口の思われる壁にぽっかりと出来た空間、その向こう側に通路の様に見えるものも目にはいる。
「はーい皆、ちょっと話聞いてね!」
呆気に取られている俺達の前に出て全員の視線を集め始めたハミィは流石に来たことがあるというだけあって全く気にもしていない様だ。
「まず説明するね! もう分かっていると思うけどここはもうラビの内部ね、ラビって呼び方はラビリンスだと長いから省略されてこう呼ばれているのも覚えておいてね」
確かにラビリンスだと長い、誰が言い出したかはわからないけどいい省略の仕方だ。
「それでラビの内部の話なんだけど、今私たちがいるこの部屋みたいな所が通路を進んだ先に何か所かあってそこに宝箱なんかがあったりするんだけど、当然敵もいるの、もちろん部屋だけじゃなく通路にも徘徊しているから移動する時は気をつけてね!」
どんな敵がいるかはまだ分からないけど通路で戦っているときに他の奴が徘徊してきて増えるとか考えたくもないな。
「最後に大事なのがラビの内部に入ると出口と呼ばれてる場所以外からは外に出る事が出来なくなるの、私達が入って来た入り口はもう閉じちゃってるからね」
そんな馬鹿な、今さっきだぞ入って来たの、消えるにしてもそんなに早く消えたりはしない――消えとる!! 本当にもう消えてしまっている!
ハミィの言葉を聞き、またまた~俺達を驚かせる為の冗談だろと入って来た場所を見る為に後ろを振り向くと、あったはずの光で囲まれた空間はきれいさっぱりと消えてしまっていて壁しかなかったのだ。
「マジでなくなってやがる! これ大丈夫なんだよな?」
「大丈夫、ちゃんと出ることは出来るよ! でも出口を探さないと駄目だけどね」
ラビに入る入り口、出る出口は基本的に一方通行でそれ以外の手段がないか、少し不安にはなるが出口はちゃんとあるみたいだし今はそれでいいだろう。
「続き話すけど、出口の場所は星石で決まっているみたいで同じ場所にあるみたいだから皆で覚えておけば次に来るときに探さなくても済む様になるよ、説明はこれぐらいかな、何か聞きたい事はある?」
「いや、特に今は何もないかな」
「俺もないな~、カッチェは?」
「私? 何もないよ~!」
「そっか、なら早速攻略を始めよう! コウ、先頭と敵を釣るのよろしくね!」
まぁタンクだし自然と先頭を歩くことになるよね、しかしハミィ、釣るって敵を引っ張って来るとかそうゆう事だろ? それも俺がやるのか……
「たのんだよ~コウ! 怪我だけは治してあげるからどんどん行こう~!」
いや、あまり怪我とかもしたくはないんだけどね、まぁ言ってもしかたがないだろう、タンクなんだしな。
半ば諦めながらも部屋を出て通路に出る為に歩きだし、通路に出る手前でゆっくりと様子を窺う様に部屋の外、通路を見る、部屋の中と同じで通路も地面や壁、天井までもが石で出来た物で形創られ、自分達が今いる部屋の前の通路は左右に道があり、どちらでも進める様になっている。
「これどっちに進んでもいいの? 二通りの道があるんだけど?」
「どっちでもいいよ! コウにお任せする!」
任せると言われてもそれはそれで責任重大な気がするのだが……。
「まぁ気楽に行こうぜ! 後ろからで悪いけどサポートはするから後ろは任せろ!」
そうだな、後ろを任せて気にしなくてもいいと思うだけでも少しは緊張感も和らぐ、任せると言われたからには決めないとな。
どちらに進むか、それを決める為に両方の通路の奥の様子を窺う、右の通路は少し離れた所まで道が続いていてその先に角が見えるようになっていたが分かるのはそこまでだ、次に左の道を確認する、左の道も右の道と同じ様に少し離れた所に道の角が見え、どちらも全く同じ様に思えるが若干左の方が近い、そう感じた。
進むならまず近い方、左がいいような気がする、そう思い部屋の中にいる皆に伝えようとしたところで左の通路の角から見覚えのある奴が歩いて来ていた、どうやら徘徊していたようでゆっくりと歩きながらこっちに来る。
「左に行こうと思うけど敵がこっちに来てる、あれ倒してから進もう、この部屋の中におびき寄せるけどいいかな?」
「任せとけ! 俺が仕留めてやるぜ~!」
マジェと同様にハミィとカッチェも頷き返す、いつでもいいと言ってくれているようだ。
「わかった、それじゃぁ行ってくるよ、皆は壁際にいてくれる?部屋の奥に引っ張って行くからよろしくね!」
釣って来たはいいが部屋の中に入った途端にみんなの方に行ってしまうのは避けたい、部屋の奥まで引っ張り、後ろから一気に倒してもらうのが一番安全な気がするからな。
「ハミィ、行くよ!」
部屋から通路に出る前に声を掛けるとハミィがシールドの魔法を唱え、俺の全身が淡く光り、なんとなく撃たれ強くなった気持ちになり、そのまま部屋を出て通路を走る、今見えているのは二体だけ、しかし徘徊している事も考えると部屋に戻る前に出会ってしまう可能性もある、出来るだけ急いでやる必要がある!
通路を走り、近づいて来る俺を敵も見つけた事でその二体は俺に向けて走り出した、ある程度までお互いの距離が近づいたのを確認して後、再び来た道を戻り、部屋の中の奥を目指す、戻る際に反対側、右の通路に目をやるが敵が来ている様子はなく、このままで問題ないだろうと判断し一気に部屋の中へと滑り込む様に入り、奥で迎え撃つ。
俺に遅れる様に部屋に入ってきた二匹の狙いは俺から移ってはいない様で真っすぐに向かって来た所でハウルを使い、皆に合図を出した。
『頼んだぞぉぉ!!』
ハウルの効果はちゃんとあった様で俺に向けて来るその敵意が増した様に感じ、それと同時に皆が後方からの攻撃を開始する、それに合わせる様に一匹目の攻撃を左手で持つ盾で防ぎ、二匹目の攻撃を右手に持つ剣で防ぎながら後方の様子を見る。
「コ、コウ! なんてもの連れて来やがんだよ!!」
地面に片膝を付き、弓を限界まで引き絞り狙いを付けているマジェの叫び声にも近いものが部屋の中に響き渡っていた、敵を釣る前にあえて言わなかった事、この二匹の敵の正体は――。
「お、おま、お前~!」
「それ、コーンじゃねぇかよぉぉ!!」
そう、釣る前に言ってしまえば必ず嫌だと意見が出たであろうコーン、それが左の角から歩いて来ていた敵の正体だったのだ。
「仕方ないだろ! どっちみち倒しておかないとあとで後ろから来たらめんどうだろ!」
「そうだけど、そうだけどぉ!!」
「あ~もうマジェうるさ~い! さっさとやっちゃってよ!」
「お前~! また俺にあんな事をしろって言うのか!」
「マジェはさっきからなんであんなに怒ってるの?」
コーン二体の攻撃を何度か食らいながらも左の盾と右の剣で受け流し、受け止めながら早くしてくれよ~と心の中で思いながら戦闘は続く。




