迷宮4
通路から聞こえて来た足音の主達は部屋の中へと入って来ると、突然の出来事に戦闘態勢に入れていな俺達を無視し、一直線に部屋の奥に置かれている箱の裏で身を隠すカッチェの元へと勢いを殺すことなく走って行き、このままでは不味いと思ったのか箱の裏で身を隠していたのを辞め、部屋の中を走り回るカッチェを追いかけ始めた。
「た~すぅけ~て~ぇぇ!!」
顔を引きつらせながら部屋の壁際を走り回り、追いかけられているカッチェの悲鳴が部屋の中に響き渡る。
「なぁ、あれどうしようか?」
「どうするって、助けるしかないだろ?」
「いや、そうじゃなくて、どうやって助けるかだよ、あの数は流石にコウも耐えきれないだろ?」
部屋の壁際をカッチェが走り回っている事により、自然と残りの俺達は部屋の中心部で守りを固める、そんな俺達の視線はカッチェを追いかけまわす敵の数を問題にしていた、その数コーン2匹、ハニービー六匹というとんでもない数だった、基本的に初めに標的にされた人は他が手を出さない限り狙われ続ける、それは外での事だったのだが、ラビの内部にいる敵もどうやら同じ様で部屋にいる俺達には見向きもしていない。
「確かにあれ全部はキツイな、一匹ずつ釣って倒すしかないだろう」
「はぁ~や~く! だすけ~てぇ~」
どうやって倒すかを話し合っている間にも引き攣らせていた状態から今にも泣きだしそうな顔へと変化させながら叫び続ける声が響き渡る。
「今助けるからしばらくの間追いつかれない様に走り続けろ!」
「た、たすげて~!!」
ついには泣き始めたカッチェを見ながら助けてやりたいが一気にその数は無理がある、少しの間耐えてもらうしかないだろうと早めに倒してあげる事を考える。
「マジェはハニービーを打ち落としていって! ハミィはコーンを釣ってくれる? こっちに来た所を俺が敵意稼ぐから!」
「あいよ!」
背中に背負う様に持っていた弓を左手に持ち、右手で矢筒から矢を取り出し、走り回るカッチェを追いかけるハニービーに狙いを定め、一匹ずつ撃ち落とし始めたマジェの横で杖の先に魔力を集め、飛ばして当てる事でコーンの敵意を稼いで見せたハミィを庇う様に左手で持つ盾を構え、近寄って来た所を右手で持つ剣で斬り付け、敵意を稼ぎ、俺へと狙いを変えた事による腕での殴り付けを盾で防ぐと同時に足の部分を斬り、地面に倒れさせ、急所を攻撃する事で倒す。
「こっちは終わったぞ!」
ハニービーを順番に撃ち落としていったマジェは俺がコーン一匹を倒している間に全て撃ち落としていた様だ。
「カッチェ! こっちに来い! 後は引き受ける!」
部屋の中を走り回っていたカッチェに声をかけるがその時にはもうすでに俺達の方へと走って来ている姿が見え、そのまま壁にするかの様に俺達の後ろ側へと走り込み、身を隠した。
後を追って来たコーンに盾を構えたまま体ごとぶつかり、勢いを殺した所を右手で持つ剣で足を斬り、倒れさせた所をマジェが仕留め、思わぬ戦闘は一段落ついた。
「ごわかった~、ありがと、ありがとね~みんな~」
「何やってんだよ、なんであんな事になったんだ?」
「うぅ……みんなが宝箱に集中してたから周りの警戒を誰かがしてた方がいいんじゃないかって思って通路に出たら見つかっちゃったの……」
全員が箱に気を取られてる状態で後ろから襲われたら確かに危なかったかもしれない、でもそれは本来俺がやらなければならなかった役目の様な気もする、皆の事を思って動いてくれた事に関して怒るなんて事はできはしない。
「そっか、ありがとう! でもその役目は俺がやらなければならなかった事だと思う、それをそっちのけにして箱を見ていた俺も悪いけど、カッチェも次からは気をつけてな」
「わかった~」
「怪我は? 見た感じ走り疲れてるのかなってぐらいしかわからないしハミィ、見てあげて!」
「うん、今見てるからもうちょっと待ってね」
涙で濡れた顔を拭きながらカッチェに怪我がないかを確認していくハミィを見ながら、次からは仲間に箱は任せて自分警戒に専念しようと決めた。
自分は何でも出来る様な人間ではないんだ、何かを捨てないと色々な物を零してしまう、その結果、守りたい者を守れなかった、そうなってしまう方が怖いのだからと。
「うん、大丈夫! 怪我はないよ、カッチェ歩ける?」
「うん~、もう大丈夫~」
「えっと、一様話しておくね、ダンジョンでもそうだけど、ラビの中でも基本的にはタンクより先行しない様にしてね、もし敵に絡まれたらタンクも自分に敵意を向けさせるのに時間がかかるし、危ないから」
「うん、ごめんね」
「いいさ、俺も含めてみんなまだ駆け出しなんだ、焦らずにゆっくりでいいから一緒に覚えて行こう」
「そうだな! 俺達は俺達なりにゆっくりでもいいからやって行こうぜ!」
焦らずゆっくりでもいいから確実に、誰も死なない様に、強くなろう。
「そろそろ行けそう?」
「うん、大丈夫! ごめんね、ありがとう!」
「おっし、それじゃぁ先に進むとするか!」
気を取り直し、先に進む為に部屋から通路の様子を窺い、何もいない事を確認してから石畳みの通路、その先に進んで行く。
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一本道を歩き進め、途中にあった部屋で何度か戦闘をして箱の中身を回収し、出口まで後どれぐらいなのかと考えながら進んだ先、そこは行き止まりだった、しかし普通の行き止まりではなく、石畳みの通路の真ん中に丸い円状の物体があるのが見える。
「やっとあったね、あれが出口よ!」
一列に並びながら進んできた俺達の前から二番目、俺の後ろにいたハミィが円状の物体を指して言った。
「やっとかよ、けっこうラビって大変なんだな~」
「私達は全く慣れてないしどこに何があるかも分かってないからどうしても時間はかかっちゃうよね」
「それでどうするの? このまま出るの~?」
出口が見つかったならそのまま出ればいい、そうなのかもしれないがここに来る手前にあった部屋、その中の事を考えると足踏みしてしまう。
「みんなはどう思う? 出口は解ったし、このまま出るか……あの部屋に行くか……」
「俺はどっちでもいいぞ? ここのまま出るのも物足りない気もするしな!」
「私も任せる、コウが行くって言うならついて行くよ」
「ん~、カッチェも任せる! 一番大変なのってやっぱりコウだと思うしね!」
全員の意見を聞いた後、通路の安全を確認してから腕を組み、目を伏せながら考える。
今の自分達には足りない物、それを補う為にはどうして行けばいいのかを、それを考えると、出て来た答えは一つだけだった。
「……俺達には実戦経験が全然足りない、ラビの知識も全くない、だから……行こうあの部屋に、経験を積む為にも強くなって行く為にもあれは避けて通っちゃ駄目だと思う」
「いいぜ! それぐらいじゃないと楽しくないしな!」
「そうだね、皆で行こう!」
「うん!」
行き止まりにある出口、その場所を確認したにも関わらず、俺達は通路を少し戻った先にある部屋へと向かう事を決めた、経験を積む為に、強くなって行く為に、俺達が侵入したこのラビリンスの主がいる、その部屋へ。




