表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/49

それぞれの思い

 心地よいまどろみの中、体に伝わってくる柔らかく暖かい感触、それらはさらに深い眠りにへと導いてくれるのだが何かに体を揺さぶられているような感覚、それが深い眠りへと落ちる俺の意識を引き留めているようで、途端にその眠りを妨げる原因に苛立ちを覚えながらも自分の今の状態がおかしい事にも気づく。


 「あれ……?俺なにしていたんだっけ?? 確か蠢く者と戦ってて……終わった後で体に力が入らなくなって……」


 そこから先は覚えていない、それに気づき何となく横になっているんだろうと感覚で感じていた体の上半身を勢いよく起こし、まだ眠気ではっきりしていない目を擦りながら周りを見渡して戦っていたダンジョンではないことは理解できた。


 自分の今いる場はどこかの部屋のようなのだが得に特徴がなく、部屋の中にあるのは自分がいままで寝ていたんであろうベットだけで他にはなにもない、殺風景な部屋。


 「起きた? 体大丈夫?」


 部屋の様子を見ていた俺の横から聞こえた声はハミィのもので、ベットの横にある椅子に座りながら俺の様子を見ていたようだ。


 「ここはどこだ? 俺あれからどうなった?」


 倒れる前に、体から力が抜けて行ったところまでしか自分の記憶がない、その後も誰かの声が聞こえていた気がするのだが思い出せない、何故自分はここにいるんだろうと考えるがわかるわけがなかった。


 「どこまで覚えてる?」


 「体から力が抜けていった所までかな、そこから先が全くわからない」


 「そっか、あの後の説明聞くよね?」


 自分の今いる場所がどこなのかすらわからない今の状態ではあの先の出来事などわかるわけがないが隣に知っている人がいて、その人物が仲間であるならその人から説明をしてもらいたいと思う。


 「そうだな、知っているなら教えてほしいな」



 俺が倒れた後、サイモンさんが俺をおんぶして町にまで戻り、そのうち目を覚ますから大丈夫だと適当な宿に部屋を取り、寝かせてどこかに行ってしまったとハミィは言うのだが。


 フルプレートのサイモンさんに背負われて気を失っている俺、それを想像するだけでもなんだがげんなりしてしまうのは何故だろうか? 面倒を見てくれていた事には感謝するのだがその絵ずらが酷く情けなく思ってしまう。


 「そいうえばなんでサイモンさん達があのダンジョンに来たんだ? 何か用事でもあったのかな?」


 町の広場で別れる前、自分達がどこに向かうかも言った覚えがないし、偶然なのだろうか?


「それについては町に戻って来る間にシーラさんが話してくれたよ!」


 広場で別れた後、俺達の後ろ姿を見送っていたサイモンさんはどうやらかなり心配してくれていた様で、本来の目的地に向かう前に俺達の後をこっそりとついて行き、出て来るまで待つつもりでいたのだがダンジョンの中からあふれ出る不気味な気配を感じて突入してきたらしい。


 「フフ、いい人だね! サイモンさん」


 確かにいい人なんだが……変な人なんだよな~。



 師匠とも言えるあの人に対する感想を考えていると部屋の扉から軽く乾いた音が響き渡り、開かれた扉の向こう側からマジェとカッチェが部屋へと入って来ていた、この二人の場合ノックをするなんて事をするようには思っていなかったのだが、さすがにそれは失礼過ぎたようだなと反省する。


 「お! 起きてるなコウ、大丈夫か?」


 「よかった~、心配したんだよ~!」


 どうやらハミィだけではなく二人も俺の看病をしてくれていた様で、腕に抱えている紙袋からして丁度買い物から帰てきた所のようだ、倒れてしまう前も二人の様子を見る余裕はなく、気がついた後でもその姿が見えないとなると少し不安があったのだが マジェともかく、カッチェの骨折はシーラさんの『ヒール』でちゃんと治っていたようで両腕には怪我の痕などもない事が見えた、俺のこの心配は不要なようだ。


 「コウ、ごめんなさい! 私達、何もできなかった……」


 突然発せられた謝罪の言葉、その言葉を口にしながら頭を俺に下げて来る二人に続き、ベットの横にある椅子に座っていたハミィが立ち上がり、二人の横に並びながら頭を下げる。


 「私も何も出来なかった、コウがあんな目にあっているのに動けなくて、見ている事しか出来なかった、ごめんなさい」


 ベットの上で体を起こしてはいるものの、並んで三人に謝られるとなんだかこっちが悪いことをしてししまった様な気分にさえなる、謝る必要なんてない。


 「やめてくれ、皆は悪くない、悪かったのは……俺だ」


 下げていた頭を上げた三人の顔は困惑しています、と取れるような表情を作っていて何故ベットの上にいる人間が謝っているのかがわからない、そう訴えかけていた。


 「俺がもっとちゃんと役割をこなせていればカッチェは怪我をしなくてすんだ、もっと動けて判断が速く出来ていればみんなを逃がせたかもしれない、こんな目に合わせなくて済んだかもしれない」


 目を閉じると蘇るあの瞬間、最深部の入り口に人を見つけた時、あの時に……


 「あの時に俺が迷わず、皆の事だけを考えて引き返していれば蠢く者なんて化け物に出会う事もなかったかもしれない、すべては俺の判断ミスなんだ、皆は悪くない謝るのなら俺の方なんだ、ごめん」


 ベットの上ではあるものの、頭を下げて三人へと自分の間違いを告白した、あの時の自分の行動と判断、そのすべてが皆の身を危険に晒してしまった。


 「やめて!! コウのせいじゃない! コウは頑張ってくれてた、必死で守ろうとしてくれていたのがわかった、何度も殴られてボロボロになってもまた立ち上がって戦ってくれていたじゃない!」


 部屋の中に立ち込めるかの様な暗い雰囲気、それと同じ様に三人の顔にはそれぞれの苦悩が表れている、各自が自分には何も出来なかったと、後悔をしてそれは俺自身も同じ事だと収拾がつかない状態になっている、このままでは駄目だ。


 「――――それなら、また皆で頑張ろう、今は駆け出しだけど強くなってまたあんなのと戦う事になったとしてもちゃんと向き合って戦える様に、一緒にがんばろう」


 あの約束を果たす為にも、強くなろう。


 「コウ……わかった、一緒に頑張るよ! 次は骨折られない様にするよ!」


 カッチェ、なんかがんばる所が違う気がするぞ?


 「そうだな、また頑張ろう、俺もラグさんみたいになれるようにやってみるぜ!」


 握りこぶしを作りながら決意を表すマジェ、今回の戦いはマジェにとっても目標になる物を見つけれる戦いになっていたようだ。


 「私も! 今度はコウを倒れさせない様にやってみる!」


 殺風景な部屋の中、ベットの上にいる俺と向かい合う三人は先ほどの暗い雰囲気からやる気を感じさせる様に次はどうすればいいかを話し合い、お互いの決意を固めて行くように見え、俺は静かに目を閉じてあの人の言葉を思い出す。


 どれだけ殴られても何度倒れようと、たとえボロボロになって無様な姿を晒す事になろうとも、タンクには倒れて諦める事は許されない、タンクの俺が倒れてしまう事は仲間を死なせてしまう事に繋がる。


 何も出来なかった、誰も守れなかった俺と一緒に頑張って行こうと言ってくれた仲間を俺は守りたい、これからも冒険をして行きたい。


 仲間を、皆を守れる盾。


 どんな相手であろうと、とてつもない絶望的な状況になろうとも守り抜く、そんなただ一枚の盾に俺はなろう。


 あの約束を必ず果たすためにも………



 部屋の中で繰り広げられる話を聞きながら静かにではあるが俺も一つの決意を固めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ