出航
「この格好で……何処に行くって?」
「ですから、今回私達を招いた王国にです」
「…………何の為に?」
「そうですね、その件について説明しておきましょう。
まず、王国の招待状には、私達の戦いを賛美する詩と、闘技場で戦った戦士は王国に来て、今回の件についての話をしたい。
という内容が書いていました」
「今回の件?」
「招いた理由と、私達を王国がどう使うか…………
端的に言うとそう言う話でしょうね」
へぇ…………随分と上から目線な物言いだな。
「それがどうしたんだよ?」
「かなり上から目線な物言いです。
何でだと思いますか?」
「うーん。王族だからか?」
「それもあるでしょうが、恐らく私達が人間では無いからでしょう」
「あぁー、ナルホド。メンドくさ」
人間扱いじゃなくて、獣扱いってわけだ。
「はい。このままでは非常にメンドくさいです。
そこで、モフさんの出番というわけです」
「……どういうことだ?」
「私達が迫害されるとしたら、狐の耳や、尻尾、鬼のツノ等が原因です。
ですが、モフさんは額に札を貼ってるだけで、それ以外は人間です。
周りに最も溶け込みやすいでしょう。
更に、女性になる事で殿方の心の隙間に入り、情報などをもぎ取れるわけです」
なるほどな。流石妖狐。王様も真っ青な腹黒っぷりで。
「………分かったよ。
その代わり菓子は沢山奢ってもらうからな」
俺がそう言うと、タマモは満面の笑みになって、俺に抱き着く。
「はい!勿論奢らせていただきますよ!!
では早速行きましょうか!!!」
はぁ。調子良いなぁ…………。
「話終わった?なら急いで行くわよ。
船が出ちゃう前に」
「船?船で行くのか?」
「えぇ。ローゼンタリア王国は西の大海を越えた先ですからね」
「……行きたくなくなってきた」
船は嫌いだ。酔うからな。
「モフ君、酔い止めの魔法要る?」
「そんな魔法あんのか?」
「まあね、回復は私の専門分野だからね!!」
「え?お前って鞭みたいな武器使ってなかったか?」
「ああ、あの武器はねぇ、飽きたから捨てちゃった」
おいおい。相変わらず適当だなぁ。
………それにしても、二つ名持ちクラスの実力者が戦闘スタイルを変えて、まだその地位に居られるってのは相当凄い事だぞ?
もしかして、灰トってめちゃくちゃ強いんじゃ…………
まあ、今はどうでも良いや。早く酔い止めの魔法かけて貰おう。
「はい。掛け終わったよ」
「おお。スゲェな詠唱無しか」
「ふっふっふ!!まあね!!私の得意魔法だからね!!」
「ところでタマモ。船は何処だ?」
「ハクアの大森林を越えた先ですよ。
招待された他の皆さんはもう先に行ってます。私達も急いで行きましょう」
「了解。お前等、刀に戻っとけ」
大森林に入る以上は、モンスターと戦闘になる為、ドクロ達に刀に戻るよう伝える。
「「「了解」」」
ハクアの大森林。
《大》と付くだけあり、この森林は非常に雄大であり、危険に溢れている。
そんな森の中に、四人の少女が侵入した。
侵入を検知した森は、四人の侵入者を見極める。
そして、沈黙する。
普通なら、森中の魔物達に命令を下し、侵入者を喰らうように言うだろう。
しかし、彼女達の内の何人かは、既に何度もこの森を訪れていた。
それ故に、森は彼女達が森に害をなさないことも知っていた。
故に森は静観し、彼女達は特に問題なく森を抜ける。
「おーーーい!!!!!この船だぁぁあああ!!!!」
森を抜けた後直ぐに、聞き覚えのある漢の声が響き渡る。
声が聞こえて来た方角にある船に飛び乗ると、白い鎧を着た男と、黒い鎧を着た漢に遭遇する。
「よぉ!!月兎!!!」
「タマモから聞いていたが、本当に女性になれるんだな」
この姿を女性って言う奴初めて見たわ。
「……本当に着替えさせられたのか。
災難だな、御雷」
「どうせ、菓子辺りで釣られたんだろう」
「わーいお菓子。モフさんお菓子大好きー」「女の声の筈なのに、お前だって一瞬で分かるのは何でだろうな」
「海斗さん今日は良く喋るね?何か良いことあったの?」
「海」
「把握」
そういえば海斗の奴、海と船旅大好きだったっけ?
確か昔、家族で自家用のクルーザーで旅行した時に気に入ったとかなんとか……
この金持ちが。
「全員乗りましたかぁ!!??
では、出航しますよー!!」
「ヤベッ、もう出航すんじゃん。
じゃあ俺は船内で寝てるから、着いたら起こしてくれ」
「あぁ、バカ兄寝不足なんだっけ?」
「おう、お前等のせいでな」
『あれは自業自得だと思うよ』
『反省して下さい』
手厳しいなおい。
「月兎、この後ギルドマスターで会議を行う。それが終わるまで寝るな」
「会議?何の為に?」
「俺等が行く国が如何にクソ胡散臭え国を知っといた方が良いって、妖狐の野郎が言ってたぞ」
そういや、俺これから行く国の事全く知らねぇな。
別にどうでも良いしなぁ。お菓子以外。
「お菓子以外の事も知っとかないと流石に困りますからね。
何せ相手は国ですから」
「その言い方だと、まるで戦争するみたいだな」
「逆ですよ。
戦争だけは起こしたくないんです。
此方は大規模イベント程度かもしれませんが……
相手側は死んだら終わりですからね。
たとえゲームの世界の住人でも、感情があり、生活している以上、殺せば殺人です。
つまり、戦争になれば、私達はfree onlineを辞めざるを得ません。それは嫌でしょう?」
…………タマモの奴、ちゃんと考えてるんだな。
女装させてきたりしてたから、正直旅行気分だったが……
確かに今回の件は、今後のイベントや、このゲームの存続に関わる事なのは、確かだ。
今回は余り勝手に動き回らないようにするか…………。
妖狐の決意に感動し、怒られた小学生並みの決意を固める月兎だった。




