金宮姉弟
『さあ、やって参りました!!!三大ギルドvs屍兎、最後の勝負!!!
妖狐&魔狼vs.月兎&蒼銀!!!
千年京の二つ名持ちが二人居るとの事で、
一週間前に行われた屍兎の二つ名持ちの魔術師同士である、炎精vs.蒼銀の勝者蒼銀とお馴染みの月兎がタッグを組んで戦います!!
実況も此れまたお馴染みの屍兎所属の隠密、隠者がお送りしまーす!!!
解説は……今日は居ませんね。
残念ながら』
会場は熱気に包まれ、観客は待ち切れないとばかりに歓声を上げている。
その観客席には、白盾と黒剣の姿もあった。
二人の騎士の顔は、自らを負かした強者と、
一週間前、自分達の斬撃をあっさりと止めた魔狼の何方が強いかを知りたくて待ち切れないとばかりに、
ウズウズとした顔で場内に眼を向けていた。
『いやぁ、皆さん待ち切れない様子なので、早速選手紹介をするとしましょう!!!
先ずは、北の門から来たるのは!!!
自らが新しく作った魔術系統、氷属性を操り、一週間前炎精と凄まじい魔法合戦を繰り広げてくれた天才魔術師!!!
今回は月兎とどんな戦いを繰り広げてくれるのか!!??
プレイヤーランキング第五位、蒼銀こと、
チルトォォォォオオオオ!!!!』
『狼牙は俺がブッ殺す。
お前は、タマモの相手を頼むわ』
昨日、作戦会議中にタマモが入って来て、狼牙の話をした。
その話は、俺にとっては驚くべき事実だった。
だが、御雷は、タマモが来た瞬間狼牙の事について聞こうとしていた。
御雷にとって、具体的な内容は想定外でも、思い詰めてる事自体は想定内らしい。
いや、彼奴は何か諦めた様な顔をしていたとか言っていたな…………。
確かに狼牙は自分を隠すのが上手いが、
それでも彼奴が悩んでいる事に気づいてやれなかった事に対して、正直情けない気分になった。
だが、御雷は気づいていた。
買い被り過ぎなのかもしれないが、彼奴なら狼牙の悩みを何とか出来るだろう。
ブッ殺すというワードが気にならなくはないが、狼牙に関しては御雷に任せるとしよう。
とにかく俺がやる事は一つ。
タマモの奴に、今だけは勝負に集中させてやる事だ。
『続いて東の門より来たるのは此の人です!!!
最早半分ラスボス!?前々回は技術で、前回は殺意で、会場を静寂に塗り潰した此の男!!!
プレイヤーランキング一位!!!
月兎ィィィィイイイイ!!!!』
(先輩には悪いッスけど、モフ太郎は余りにもカッコ悪いので言いたくないッス)
慎吾の野郎、後で覚えとけよ……。
まあ、俺が忘れると思うけど。
『モフさん!!お願いします!!狼牙を……助けて!!』
まだ付き合いは短いが、姉弟揃って隠し事が上手い奴等だ。
何歳からかは知らないが、家の事情で汚い大人と話す機会が多かったのが原因か同年代の奴等、
いや普通の大人よりも公私の区別がハッキリとついてるんだろう。
狼牙はタマモの護衛だと言っていたし、喋らずにポーカーフェイスを保ち、常に冷静に護衛対象であるタマモの安全を確保するのが役目なんだろう。
彼奴の表情は俺よりも変わりにくい……と思う。
タマモは表情豊かだ。
アレはあの年齢の少女として違和感のない明るさと、見た目の良さを最大限見せつける色仕掛け。
そして、身内にその辛さを見せない為の仮面だ。
恐らく、心配してくれる従者達を気遣う為だろう。
……器用な様で酷く不器用だ。
きっと、彼奴が産まれた時から見て来た人達や、ずっと護衛してる狼牙には気づかれてたんだろうな。
そんな不器用な、それでいて意地っ張りな仮面。
今後人生において剥がす事など数回しか無い筈の未熟な仮面が、昨日アッサリと剥がれた。
酷く衰弱した顔で、子供みたいに涙を流して弱味を見せた。
そこまで追い詰められた奴を見たら助けてやらねぇとな。
なあ三人共。
【もちろんだよ!!あのワンワンをパパッと助けてタマモちゃんに元気になってもらおう(`・ω・´)】
うん。ワンワン?まあ良いや、とっとと元気にしてやらねえとな。
【女を泣かせるなんて駄目なことです!!
マスター!!あのワンワンをぶっ飛ばしましょう!!】
えーっと、ハク?何かキャラ変わってない?
レッツ……ゴー…………
お前に関しては最早何なんだよ?殺意のカケラもねぇじゃねえか。
…………まあ、良いや。
実際ブッ殺すのは事実だしな。
あのバカの目はとっとと覚まさせるに限る。
そんで、あの二人には何時も通りの顔してもらわねぇとな。
『屍兎の陣営が揃ったところで!!!
南の門より来たるのは!!
第二世代中心のギルド千年京を最大手ギルドまで成り上がらせたギルドマスターにして、
千年京の二つ名持ち姉弟の姉!!!
可愛いものには目がない、妖艶な美人!!!
プレイヤーランキング第六位!!!
妖狐こと、タマモォォォォオオオオオオオ!!!』
はぁ、やっぱり相談するべきでは無かったでしょうか……。
折角の勝負に水を差してしまいました。
でも、今回の件は私にはどうする事も出来ません。
自分の不甲斐なさにほとほと愛想が尽きそうですが、
今は狼牙が助かる事を祈りましょう。
モフさん。ウチの弟を……お願いします。
「何かマスター何時もより雰囲気変と思わへん?」
「やはりそう見えるか?私もそう思っていたんだが、何かあったのだろうか?」
「昨日も何時もよりも圧倒的に早めにログアウトしてしまいましたしね」
千年京の幹部達が妖狐の様子に気づき始める。
コレは彼女が弱味を隠し切れていない証拠であり、其れは彼女が精神的に弱っているという証拠でもあった。
「心配やねぇ。普段は弱味を見せなさ過ぎて心配やけど………」
「あぁ、此れは此れで心配になるな………」
「マスターのケアはベオウルフさんが一番上手いですけど、今回は大丈夫でしょうか……」
『さあ!!続いて西の門より来たるのは!
千年京のもう一人の二つ名持ち!!!
普段は花屋をやっており、pvpの回数は二つ名持ちの中でもダントツで少ない男!!
しかし、前四位を瞬殺したその実力は本物です!!!
プレイヤーランキング第四位!!!
魔狼こと、ベオウルフゥゥゥウウウウウ!!!!』
救いたい人が居た。
その人は、器用に見えて酷く不器用な笑顔を浮かべて、他人を気遣い自分を省みない人になってしまった。
過ごしたい日常を思い浮かべた。
親友が二人居て、後輩が一人。
平凡な家庭に生まれて、姉は心底楽しそうに笑っていて、母は生きていて父は姉を叩いたりしない。
オレタチが…享受するには、余りにも眩しいな………
分かってる。
きっと、その世界にオレタチの居場所なんかない。
いや、あっちゃいけない。
……そうだな。
姉さんを助けられなかったオレタチには……
………………あぁ。
一章完結後、一度大きく修正を入れます。
少し設定も変わるかもなので、活動報告等で、変更点を言いますが、出来れば読み直して下さい。




