にぃに
前書きで何書くかでめっちゃ時間使ってるんですけど、どうしたらいいですかね?
『さあさあ皆々様ご注目!!!!
今、勝者が煙の中から姿を現します!!!
この激戦を制し、妖狐と戦うのは一体どちらなのでしょうか!!!??』
隠者の叫びと共に一気に観客席に緊張が走り、誰もが場内の煙に注目する。
数秒後……煙が晴れ、勝者が姿を現わす。
『さあ!!皆さん!!勝者がその姿を現しました!!!!
歓声と共に讃えましょう!!!
此の凄まじい戦いを制したのは……
チルトォォォォォォォォォ!!!!!』
「しゃああ!!」
蒼銀はついそんな叫び声をあげてしまう。
勝ちたい相手に勝った。
その叫びは、彼の喜びをそのまま出したかのように爽やかな物だった。
そして、喜び以上に彼は、
楽しそうな顔をしていた。
恐らく彼奴はまた挑んで来るだろう。
今度はあの精霊を最初から出して来るかもしれない。
今度は水蒸気爆発の対策もして来るだろう。
出力勝負になっていたら負けていただろう。
そんな思考が叫んだ後に彼を襲って来る。
勝利の余韻等直ぐに冷め、また直ぐに思考を始める。
(一度父さんにアイデアを貰うのも悪くないだろう。
父さんには余り意見を貰ってないしな)
周りの歓声も、賞賛も置き去りにして、
彼は新たな力のヒントを求めてログアウトしてしまう。
その後、ヒーローインタビューが出来ず、
しかも突然退場した彼のフォローに、隠者は動くこととなる。
哀れなり……
「ただいまー!お弁当買ってきたよぉ〜」
「飲み物も買ってきました」
「わーい!!どれにしようかなぁ
あれ?マスターどこ行ったの?」
「確かに居ませんね。
灰トさん。マスターが何処に行ったか聞いてませんか?」
「もふゅくん?ふぉれならひるどふぉーるにひったよぉ?」
「なるほど……ギルドホールですか」
「相変わらず優しいね……マスターは」
「まあね!モフ君だからね!!」
「何でハイトが自慢気なの〜?」
「私達が誇らしいのと一緒かと」
「なるほどぉ〜。
じゃあ灰トもマスターの事好きなんだね!!」
「ふぇ!?
えっと……まあ……///」
「やっぱり!!ねぇねぇ。何処を好きになった?
私はねぇ……」
此処は屍兎のギルドホール。
ギルドホールには、ギルドメンバーがやられた場合の復活地点になる復活室と呼ばれる部屋が設けられている。
そして、当然屍兎のギルドホールにも、其れはあった。
其処には、其のギルドホールの主である月兎が座っていた。
彼は復活室に設置されてある木の椅子に座り、ある少女を待っていた。
暫らくすると、復活室に設置されている複数のベットのうちの一つの上に紅い光が舞う。
光達はベットに集まり始め、やがて人型に形を変えていき、最終的に髪の色と耳の形のみがリアルと違う、彼の妹になった。
彼女は、ゆっくりと目を開いていくと、周りを見渡す。
見渡している途中で、目の前に兄が現れる。
「なっ!!……なぁっ!」
其れに気づいた途端、彼女は顔を真っ赤にして起き上がり、ベットの上で後ずさり距離をとる。
「な、何でいるのよぉ!!?」
「そりゃあ、此処はウチのギルドホールだからな。俺が居てもおかしくないだろ」
「他の皆は!?」
「慎吾は事後処理と、今回の儲け分の商業ギルドと、記者ギルドとの分け前の交渉。
灰トとドクロとハクは弁当でも食ってんじゃねぇか?
海斗は戦いが終わった後は戦闘の反省を独りでするだろうから……今頃自室に籠もって
研究中だろうな。もしくは誰かにアイデアを聞きに行ったかだな」
「集団行動って発想が無いの?」
主人の元を離れ、主人の金を無断で使い弁当と飲み物を買う刀二人。他のメンバーの弁当を食欲に任せて食べ尽くしてしまう兎。
特に誰に伝えることなくログアウトし、父親に意見を求めている魔法オタク。
唯一基本マトモな男は交渉や事後処理に回されている。
そして、本来彼等を束ねて指示を出す役目のギルドマスターは、完全放任。
「まあ、無いだろうな。ギルドっつっても、別に纏まる必要性は無いんじゃないか?」
この言い草である。
……このバカ兄をギルドマスターにして本当に良かったのだろうか?
そんな疑問を浮かんで消える。
そんな良くある会話は、彼女が沈黙したことで止まり……沈黙が流れる。
「……ねぇ」
「ん?」
「私は……負けたの?」
「…………あぁ」
少し間を置き、月兎が頷く。
「…………そっか……私、負けちゃったんだ」
負ける訳ないと思っていたわけじゃない。
寧ろ、格上相手の戦いだと思っていたし、
実際……戦い始めて直ぐに格上だって理解した。
でも、イフリータを出して、海斗さんが撃ち合いを仕掛けて来た時、油断が出来た。
撃ち合いなら勝てる。そう思い、盾を貼ることも忘れて全力で撃ってしまった。
あの状況で海斗さんは冷静だった。
あの時点で間違いなく勝敗が決まっていたんだと思う。
しかも私はイフリータと使う魔法の細かいコントロールがまだ出来ない。
海斗さんは間違いなくあの鳥をコントロール出来るだろう。
そもそも、最初に撃った小さな鳥は細かいコントロールでは自分が上だと見せつけて
火力勝負の撃ち合いに誘導する為の物だったんだ。
印象的な魔法が多かったのは、新魔法一つ一つの攻略に魔法を大量に消費させる為。
私が魔法の攻略し、海斗さんは新魔法を出していく。
私は、海斗さんと技の応酬をしていると思ってた。
新魔法って言っても、海斗さんにとってはかなり熟練した技だ。
でも、体力を消費しあう技の応酬と錯覚してる私は、海斗さんも自分と同じくらい体力を消費してると勘違いする。
実際は、最初に決めた作戦を終始実行していた海斗さんは、私よりも体力の使用量が少なかったのに……。
最後の大技の撃ち合いで私は体力が尽きただろう。
勘違いしてる私は体力が尽きても、海斗さんも体力が尽きると思って全力を躊躇無く撃ってしまった。
最初の鳥の魔法も他の魔法達も、最後の撃ち合いの為の布石。
強すぎる。
互角等とは程遠い。
私は……勝てるのだろうか。今後。
敗北し、体力を疲弊した事により、思考が落ち込んでいく。
分かっているけど、止められない。
そんな悪循環がふと止まる。
私の頭には余りにも白く冷たい、年齢の割には小さな手が乗せられていた。
其の手は彼女の頭を撫でる。
顔が熱くなっていく。
「にっ、バカ兄!!?///」
一瞬にぃにと呼びかけて留まり、いつも通りの呼び方で、バカ兄の顔を見る。
札越しに見える兄の顔は、昔、慰めて貰っていた時の顔だった。
「ちょっ、やめてよ。子供じゃないんだから……」
制止の声を掛けても、バカ兄は頭を撫で続ける。
「流石に……恥ずかし…」
「……」
「……」
「……」
「ねぇ……にぃに……」
顔を伏せて、にぃにと呼ぶ。
「ん?……」
「ちょっとだけ、甘えていい?」
「……あぁ」
にぃにが頷いたとほぼ同時に、私はにぃにの胸に顔を押し付けて………
「うわぁぁぁぁぁん!!!」
泣いていた。
紅音ちゃんは、主人公の事を慕って居ますが、あくまで兄としてで、恋愛感情ではありません。




