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ハシブトに言ったことを、僕は後悔していた。
職員室に戻った僕達は、脇坂を探していた。
脇坂は、いつも通りパソコンで仕事をしていた。
何も気にしていないのか、いつも通り脇坂は茶色のスーツでパソコンに向かっていた。
周りの先生は、ほとんど出払っていて脇坂の他に二人の教師がやはり仕事をしていた。
それは静かな職員室の空気。
「脇坂先生、よろしいか?」
前に出て、胸を張って歩いてきたハシブト。
ハシブトの声に、脇坂が顔を上げた。
「ハシブト、どうした?あまりその喋り方、高校生としてふさわしくないぞ」
脇坂はちゃんとハシブトの方を向いていた。
「ぬしは、孤独なのだな?わしが癒してやろう」
「何を言っている。馬鹿なこと言っていないで、部活に戻りなさい」
「ぬしの娘は亡くなったのか?」
そう言うと、脇坂の顔が明らかに変わった。だけど、すぐにパソコンに向かった。
「馬鹿なことを言っていないで、早く部活に戻りなさい」
「亡くなったのだな?」
「何が分かるんだ?」
「ハシブト、やめよう。先生、すいませんでした」
僕が、無理矢理切り上げようとハシブトの手を引いたときに、ハシブトの手は払った。
「大丈夫だ、先生、わしが癒してやろう」
両手を広げて、ハシブトが笑顔を見せた。その笑顔は、とても温かく癒されるものだ。
美野里も嵯毅も、僕も安志も癒されたハシブトの癒しの笑顔。
両手を広げて、心落ち着く不思議な笑顔に脇坂は立ち上がった。
「ハシブト……」脇坂がハシブトに近づいていく。
ハシブトは、笑顔で脇坂を見せていた。
「私はお主の孤独を癒したい。お主は孤独なのだろう。さあ、わしの胸に……」
「ふざけるな!」
だけどハシブトの言葉を聞く前に脇坂は、怒鳴った。
険しい顔で言い放つ脇坂の顔を初めて見た。大人としての迫力があった。
いつもは真面目で、大人しい脇坂の怒り顔は半端ではない。
威圧するような顔で、言っていた脇坂の顔にハシブトは一歩も引かない。
「どうしたのだ?」
「何が分かる、お前に!たった一つの家族を失った悲しみが!」
吐き捨てた脇坂先生の一言で、そのまますれ違ってしまった。
ハシブトは、うつむいたまま立ち尽くしていた。
「ハシブト……」
僕が声をかけた瞬間、ハシブトはずっとうつむいていた。
そんなハシブトは、力なく落ち込んでいた。
前髪が垂れて、顔がよく見えない。
「大丈夫か?」
「わしは、まだまだ力不足なのだな」
その時のハシブトの口調は、やはり弱弱しいものだった。




