表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤独を癒すカラス  作者: 葉月 優奈
一話;傷だらけのハシブトカラス
3/60

――夢はいつも通り、真っ暗な闇にいた自分。

闇の中で、僕は迷っていた。右も左もわからず、光を探す。

すると見えたのが、桜の木。真っ暗の中に桜だけが浮かび上がって見えた。

そして、僕が近づくと桜の花びらが強い風で巻き上がった。

まるで桜の嵐のような幻想的な光景に、僕は立ち止まって見とれていた。


(ここは、なんなんだ?)

闇の中に浮かび上がる桜が、幻想的で美しかった。

いくつもの桜の花びらが舞い散り、石畳の地面をピンク色で照らす。

そんな桜の奥に一人の人が、背を向けていた。

それは時代劇なんかで奉行が着る、肩が出っ張った服を着た白髪交じりの男の背中が見えた。

男から嗚咽の声、震える背中が見えた。


「なぜだ、なぜこんなことに……」

ようやく見つけたその人物に近づこうとしたとき、地面が濡れていた。

それは、血。紛れもなく赤い血が、床を覆っていた。


「あの……ここは?」しかし僕の声は、届いていない。

「寂しいのだ、わしの唯一の生きがい、唯一の望み、唯一の希望。

わしを一人にしないでくれ、孤独になんかなりたくない!」

振り返った老人の腕には、一人の幼い娘が抱きかかえられていた。

その娘は、血だらけで胸に何か所もの槍で刺された跡が見えた。

それを見て、僕は思わず気持ち悪さがこみ上げた。


「わしは、諦めぬぞ。この世に不条理があるのならば、その不条理を変えてでも……」

老人が娘を持った両手を上に掲げたら、突風が吹きつけた音がした。

瞬く間に桜の木が風になびいて、桜の花びらが激しく落ちてきた。

僕の体が、風で飛ばされていく。両手で顔を覆い、必死にこらえようとしたが体が宙に浮く。


「うわっ、なんだこれ!」

見えた老人や桜は小さくなって、闇が広がっている気がした。

最後に見せた、老人の決意の顔はそれでも僕の目に焼きついていた――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ