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孤独を癒すカラス  作者: 葉月 優奈
一話;傷だらけのハシブトカラス
2/60

今日は十二月二十四日、二学期最後の日であり、クリスマスイブだ。

商店街は、クリスマス一色。飾られた町並みは、この日ならでは。

華やかな町を抜けて、自分の家に戻っていた。

団地街の一角にある僕の家にも、例外なくクリスマスツリーが飾られていた。

ハンカチで包んだカラスを持って自分の部屋に向かうところに、リビングには小さな男の子がいた。

携帯ゲームを持って、ソファーに寝そべっていた。


男の子は、僕を見かけるなり体を起こしてきた。

まるで、僕を珍しそうに見てくるその男の子の視線を僕は嫌いだ。

笑顔で、僕を見てきた男の子に嫌悪感があった。


「おかえり、扇兄ちゃん。今日はクリスマスだね」

「晃か、僕は忙しいからまた後で」

「つれないなぁ、同じ屋根の下に暮らしているはずなのに」


彼の名は『坂本 晃』、小学四年生。

僕と苗字が違うのは、両親が違うから。

今いるこの家族は、特殊で居心地がいいものではない。


「母さんは、今日仕事で夜遅くなるから。扇兄ちゃん」

「あの人は、いいよ」

「何言っているんだよ、君の本当の母さんじゃないか」

「晃は、こんなのでいいのか?」

「この家族には、この家族の形がある。僕たち子どもは、それを受け入れる責任があるけれど権利はない。

何を言っても無駄だよ、愛の前ではどんな理屈も無力なんだから」

晃は小学生とは思えないしゃべり方をするから、不愉快だ。

なんでこんなに子供っぽくないんだ、全くかわいげがない。


ムスッとした顔で、黙って台所に向かった。

システムキッチンの台所で探したのが、爪楊枝。

後は、マスキングテープを救急箱から見つけた。

それを手に、自分の部屋に戻るため廊下へ消えて行こうとした。

だけど、一部始終ゲーム機を持ったまま興味本位で見ていた晃は声をかけてきた。


「まあ今日はクリスマスだし、きっと父さんと一緒だと思うよ。

もしかしたら、僕たちの新しい弟を作るんじゃないの。大人は、そういうのが大好きだから。

そんなことより、扇兄ちゃん」

「なんだよ、晃」

「この後、まさかどこか出かけるんでしょ」『まさか』を強調して言ってきた晃。

「別に」ふてくされて言い返すと、悪そうに晃は笑っていた。


「えー、クリスマスだよ。恋人と愛を深める日だよ、高校生だったらクリスマスデートだよね。

あれれ、扇兄ちゃん。もしかして、恋人いないの?彼女いないんだ~」

「わ、わるかったな!」不満顔で言い返す僕は、学校での失敗を思い出してしまう。

「じゃあさ、じゃあさ、クリスマスパーティとか、まさか誘われているよね?」

「いいだろ、僕は!」

「ふーん、かわいそ」

「僕は忙しいんだ、やることがあるし」

「クリスマスは、誰にでも平等にやってくるからね」

晃の言葉を背に受けて、眉をひそめていた。

晃にかまってしまって、感情的になった自分を悔いていた。

だけど、もうひけない。


「早く僕みたいに、ちゃんとした彼女を見つけたほうがいいよ。

彼女いないとクリスマスや、バレンタインはみじめな思いをするから」

「性格悪いな、お前」

「そんなことないよ、扇兄ちゃん。

僕はむしろ忠告してあげているんだ、扇兄ちゃんがとても不幸そうに見えるから」

「そうかい、晃」

睨みつけるように晃を見ると、テーブルに置いてあった晃の携帯電話が鳴っていた。


「あっ、僕の彼女からだ」

白々しい口調で言いながら、携帯電話を取った。

僕は晃をこれ以上相手にすることもなく、自分の部屋に逃げていた。


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