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翌日、たくさんの猫たちに囲まれて笑う侑芽の姿があった。

「ふふっ、小次郎ちゃん、食べ過ぎだよ」

白いサイベリアンを撫で、食べ過ぎと言いながら侑芽はおやつをあたえている。

正直悠真は視界にすらはいっていない。

悠真は寂しくスイカという名のノルウェージャンを撫でている。

励ましてくれてるのだろうか、スイカは悠真の手に額を押し付けた。


『あきまへんな、猫に負けとるで』

ーーーうるせーよ


でも事実その通りで、悠真は心の中で泣いた。


『ここは僕の出番やな』

すっと、悠真の目が細まる。また道明に乗っ取られた。

ーーー余計なことすんな!

体の中で叫ぶが当然届かない。


「『侑芽、僕もその子、なでてええ?』」

侑芽に近づき吐息すら感じるような耳元で尋ねる。

「あ、うん…」

真っ赤になって侑芽はうなづいた。

「『ほんまかわええな、夢中になるのわかるで』」

それは猫に言ったのか、侑芽に言ったのかはわからない。

侑芽は顔を赤くして俯いた。

「…こ、小次郎ちゃんはね、食いしん坊でちょっとわがままで甘えん坊なの」

「『まるで誰かと同じやな』」

一生懸命に説明する侑芽の耳元で囁く。

びくりと侑芽の肩が揺れた。

「もう」

道明は笑う。そして心の中でつぶやいた。

『本当にかわええな、ヘタレの悠真には勿体無いくらいや』

ーーーなっ、お前何言って!

焦る悠真にまた笑う。

「『さて、そろそろ時間や、メシにしいひん?』」

「そ、そうだね、いこっか」

バイバイ小次郎ちゃんと言うと、小次郎は他の客の元へと歩いていった。

おやつくれないなら用はないと言うだけかもしれないが。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢


モールのレストラン街を2人で歩く。

道明は迷うことなく侑芽の手を握った。

曰く『はぐれへんように』

悠真なら逡巡するところだが、道明は気にしない。

「『侑芽は何食べたい?』」

道明が赤い顔の侑芽に尋ねる。

「えっとね…いつもはね」

侑芽が案内する。

結局、チェーンのイタリア料理店に入り、パスタセットとドリアを注文した。

「『ここ、良くくるん?』」

「うん」

ーーー誰と?

「『誰と?』」

頭の中の悠真の声と、悠真の姿の道明の声が重なった。

「……1人で」

恥ずかしそうに侑芽。

1人で猫カフェに行き、そのあと1人で食事をし、ウィンドウショッピングを楽しみ帰る。

侑芽は1人時間をエンジョイしていた。

悠真は胸を撫で下ろし、道明は笑う。

ーーー次は俺を誘ってくれ!

「『次は僕を誘ってな?』」

再び声が重なった。


注文した品が届き、道明はパスタを口にしながら、侑芽を見つめる。

小さな口に運ばれる熱々のドリア。

熱すぎたのかはふはふ言っている。

「『本当にかわええな』」

それは手本でもなんでもなく、自然とこぼれ落ちていた。


ああ、そうか…僕は…

ーーーは?

頭の中で悠真。

『すまんな、悠真。侑芽、欲しくなってしもうた』

ーーーはあっ!?

頭の中で悠真が怒鳴る。うるさい。

ほっといてくれやと道明。

『貰うで』

それは宣戦布告だった。


そんなこと微塵も知らずに侑芽はドリアを頬張る。

「『ほんま美味そうやな、一口もらえへん?』」

フォークを置き、道明は夢を見つめ言った。

「『昔のように、な、ええやろ?』」

知らんけど…とは言わない。

道明は昔の侑芽を知らないが、悠真が知っていると言うことを知っている。

「しょうがないなー」と侑芽はドリアを掬い道明に差し出した。

ーーーやめろ!

悠真の声は届かない。

道明は大きく口を開けそれを食べた。

「『ドリアも美味いけど、侑芽に食べさせてもろたんが一番やわ』」

「もう」

侑芽は照れたように笑った。


ーーーなんとかしねえと

悠真は考える。

体は乗っ取られたまま、侑芽も気づいている様子がない。

ーーー本当に全てが乗っ取られる

恋の指南役なんてとんでもない。

まさに悪霊だ。

あ、悪霊って自己紹介してたな。


道明は笑っている。

それは楽しそうに。

釣られるように侑芽も笑っている。

悠真は無力な自分を呪っていた。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢


1人で侑芽が遊んでいた時と同様に食事の後、モール内を歩いた。

「『この服、侑芽に似合うんちゃう?』」

「そうかな?」

「『こうたろか?』」

「いや、買わなくていいってば!」

まるでカップルのような2人を悠真はぼんやりと見ていた。

ーーーそこは俺の場所なのに…

だけど声は届かない。


不意に侑芽はペットショップで立ち止まった。

キラキラした瞳で子犬を見つめる侑芽に「『かわええな』」と道明は呟く。

「本当可愛いよねー」

侑芽は子犬のことだと思い返してから、ふと違和感を覚えた。

「そういえばゆうちゃん、昔、犬、苦手だったよね?」

子犬相手でも逃げ回っていた頃を思いだし吹き出す。

ーーーいつの話してんだよ!!

「『いつの話しとるねん』」

思わず声が重なった。


次に彼女が足を止めたのは本屋だった。

「『なんか欲しいもんでもあるん?』」

尋ねる道明に「この本、ゆうちゃん好きだったやつだよね?」と絵本を手に取った。

ーーーよく、覚えてるんだな

「『よく、覚えてるんやな』」

また声が重なったが、感情は真逆だった。

「だって、ゆうちゃんのことだもん」

にっこりと優しく笑う侑芽に、悠真は流れぬ涙が流れるのを感じ、道明は胸が苦しくなった。

「『そか』」



もう少し続くのじゃ

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