第19話 ダンジョン運営化計画
ローゼンベルク不動産、応接室。
ダグラス、アイリス、レオン、ロギ。
四人が向かい合って座っている。
ロギは設計図を膝の上に置いたまま、
腕を組んでいる。
「聞かせてもらおう」
ダグラスが言った。
「黒龍をどうするつもりだ」
レオンは資料を広げた。
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【黒龍討伐収益】
最良 3,000,000G
平均 1,500,000G
最悪 500,000G
※魔石破損・素材損傷・回収失敗含む
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「思ったより安いな」
ダグラスが眉をひそめた。
「安いです」
レオンは静かに言った。
アイリスが首を傾げた。
「?」
ダグラスも首を傾げた。
「?」
「黒龍だけでは儲かりません」
沈黙。
「では何で儲ける」
レオンが次の資料を出した。
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【年間基本収益】
採掘収益 :800,000G
素材加工収益 :1,200,000G
解体・精製収益 :700,000G
ダンジョン運営収益:1,300,000G
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合計 :4,000,000G
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「ダンジョン運営収益?」
ダグラスが資料を指差した。
「それは何だ」
「本題です」
レオンは続けた。
「皆さんは」
「ダンジョンを攻略しています」
「ああ」
「ですが」
少し間を置いた。
「運営していません」
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資料が追加された。
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【運営収益の内訳】
素材保管サービス
解体代行
加工設備貸出
宿泊施設利用料
訓練施設利用料
他クラン受入手数料
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「これらを整備します」
ダグラスが資料を見た。
「他所の冒険者を入れるのか」
「入れます」
「危なくないか」
「危ないです」
「ならなぜ」
「利益になるからです」
ダグラスが少し笑った。
「お前はそういうやつだな」
「仕事ですので」
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次の資料。
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【組織改革案】
第一軍 :精鋭討伐部隊
第二軍 :育成・中堅部隊
育成部隊:新人専用部隊
支援部隊:解体・加工・事務
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「軍隊か?」
「クランです」
ロギが吹き出した。
レオンは続けた。
「現在は全員が同じ仕事をしています」
「問題あるか?」
「育ちません」
ダグラスが黙った。
「A級四人がC級二十七人と同じ依頼を受けています」
「これでは力が分散します」
「では黒龍はどう使う」
「利用します」
アイリスが反応した。
「利用?」
「はい」
レオンは資料を指差した。
「第一軍の加入条件を」
「黒龍討伐参加とします」
ダグラスが目を細めた。
「……昇格試験か」
「はい」
アイリスが少し笑った。
「いい」
「黒龍が」
レオンは続けた。
「ブランドになります」
「採用の理由になります」
「昇格試験になります」
「育成目標になります」
「他クランとの差別化になります」
「そして集客の看板になります」
ダグラスはしばらく資料を見ていた。
「つまり」
「黒龍がいるから強いクランになれる」
「ということです」
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ロギが立ち上がった。
設計図を机に広げた。
大きな図面だった。
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クラン本部(第一期)
58人対応
将来100人超対応設計
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食堂。
宿舎。
加工棟。
事務棟。
倉庫。
解体場。
来客区画。
監視室との接続通路。
ダグラスが固まった。
「でかいな」
「狭い」
ロギが即答した。
「なんでだ」
「ワシが低いからじゃ」
ダグラスが振り返った。
「それは関係あるか?」
「ない」
レオンが静かに言った。
「将来の百人規模を想定しています」
「今は大きく見えますが」
「五年後には足りなくなります」
ロギがさらに図面の端を指差した。
「将来増築区画もある」
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第二加工棟(増築予定)
職員宿舎(増築予定)
来客宿舎(増築予定)
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「完全に企業じゃないか」
「クランです」
ロギが言った。
「でかいクランじゃ」
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レオンが最後の資料を並べた。
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【物件価格】
1,200,000G
【建築費】
15,000,000G
【補助制度】
討伐拠点整備補助 :500,000G
新人育成施設補助 :300,000G
危険区域開発助成 :700,000G
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助成総額 :1,500,000G
【実質建築負担】
13,500,000G
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「一千三百五十万ゴールド……」
ダグラスが額に手を当てた。
「融資があります」
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【融資条件】
ギルド保証付き
年利:3%
返済期間:10年
月額返済:約130,000G
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「払えるか?」
レオンは次の資料を置いた。
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【収支試算】
年間基本利益 :4,000,000G
維持費 :▲2,000,000G
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年間純利益 :2,000,000G
黒龍収益(臨時・一回あたり)
最悪 :500,000G
平均 :1,500,000G
最良 :3,000,000G
※年二回出現
※素材損傷・魔石破損リスクあり
年間総利益
最悪時:2,500,000G(基本2,000,000G+黒龍500,000G)
平均時:5,000,000G(基本2,000,000G+黒龍3,000,000G)
最良時:8,000,000G(基本2,000,000G+黒龍6,000,000G)
回収期間
最悪 :約5年
平均 :約3年
最良 :約2年
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ダグラスは資料をじっと見ていた。
しばらく黙っていた。
「思ったより現実的だな」
「はい」
レオンは頷いた。
「黒龍は臨時収入です」
「本業は運営です」
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ダグラスが資料を閉じた。
「一つ聞く」
「はい」
「黒龍を二回討伐したら」
「建物代は回収できるか」
レオンはページをめくった。
「違います」
次のページを開いた。
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第二拠点計画(案)
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「頭金です」
沈黙。
アイリスが小さく言った。
「いい」
ダグラスが笑った。
「お前らしいな」
レオンは資料を閉じた。
「ご検討ください」
ダグラスはしばらく天井を見ていた。
五十八人のクラン。
黒龍のいるダンジョン。
一千万を超える建築費。
それでも。
「お前」
ダグラスが言った。
「黒龍を倒す話をしてないな」
「はい」
レオンは静かに言った。
「育てる話をしています」
沈黙。
「……やる」
静かに言った。
「決断が早いですね」
「遅いより早い方がいい」
ダグラスはレオンを見た。
ダグラスが立ち上がった。
「契約はいつできる」
「書類の準備に一週間ほどかかります」
「急いでくれ」
ダグラスはアイリスを見た。
「第一回の討伐」
「全員集める」
「わかった」
アイリスが頷いた。
「スケジュール組む」
「頼む」
ダグラスはレオンに向き直った。
「世話になる」
「仕事ですので」




