第14話 「ダンジョン不動産 実務マニュアル」
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■ はじめに
本書はローゼンベルク不動産の新人研修資料として作成された。
ダンジョンを売ることは難しくない。
ダンジョンに合う人を見つけることが仕事だ。
条文を覚える必要はない。
ただし、知らないと損をする。
ローゼンベルク不動産
代表 レオンハルト・ローゼンベルク
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■ 第一章 契約
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【1-1】ダンジョン賃貸借法 基本
条文
ダンジョン賃貸借契約は、貸主・借主双方の署名および
迷宮管理局への届出により効力を生じる。
口頭契約はいかなる場合も無効とする。
(ダンジョン賃貸借法 第2条)
解説
ダンジョンの貸し借りは必ず書面で行う。
「口約束で借りた」は法律上一切認められない。
どれだけ信頼できる相手でも、契約書は必ず交わすこと。
実務コメント
「口頭契約は無効です。これは法律で決まっています。
信頼と契約は別の話です」
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【1-2】重要事項説明
条文
不動産業者は契約前に以下を説明しなければならない。
一、魔物発生率
二、ボス出現率
三、氾濫履歴
四、崩落履歴
(ダンジョン不動産基本法 第4条)
解説
重要事項説明は契約前に必ず行う。
説明を省略した場合、契約後に発覚した不具合は
業者の責任となる可能性がある。
「知りませんでした」では通らない。
本編事例
EP4「ゴブリンは借主負担です」
グランツ不動産が坑道接続を契約書の注釈欄に
米粒文字で記載し、告知義務を形式上果たした案件。
法的には問題なかったが、実質的な説明はなかった。
実務コメント
「告知義務は守ります。それが仕事ですから。
法律上問題なければいいという話ではありません」
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【1-3】告知義務(瑕疵の説明)
条文
貸主は契約前に以下を借主へ告知しなければならない。
一、過去三年以内の死亡事故の有無
二、封印・呪いの有無
三、隣接ダンジョンとの坑道接続の有無
四、ボス魔獣の復活周期
(ダンジョン賃貸借法 第15条第2項)
解説
告知義務を怠った場合、借主は契約を無違約で解除できる。
さらに損害賠償の対象となる可能性がある。
過去の事故・呪い・隠れた上位魔獣の存在は
必ず事前に開示すること。
本編事例
EP4「ゴブリンは借主負担です」
坑道接続という重大な瑕疵が契約書の隅に記載されており、
借主が認識していなかった案件。
「小さく書いてあれば告知した」は法律上成立するが
実務上は問題となる。
実務コメント
「隠すくらいなら最初から言ってください。
後で発覚した方がずっと面倒です」
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【1-4】原状回復
条文
借主は契約終了時、ダンジョンを入居時の状態に
回復する義務を負う。
ただし通常使用による劣化は借主の負担としない。
(ダンジョン賃貸借法 第8条)
解説
原状回復は「借主の故意・過失による損傷」が対象。
経年劣化・自然発生は貸主負担となる。
退去時のトラブルの大半はここから生まれる。
【借主負担の例】
・魔獣の異常繁殖による坑道壁面の損傷
・炉・鍛冶設備による床面の焼損
・無許可の坑道拡張による構造変化
・退去時における魔獣の放置(ゴブリン・スライムの残存)
【貸主負担の例】
・経年による坑道壁面の苔・菌類の付着
・自然発生した鍾乳石・結晶の生成
・魔素の自然変動による床面の変色
本編事例
EP1「ダンジョン不動産」
スライムダンジョンの賃貸契約において、
スライムの密度増加は通常損耗か借主負担かが
判断の分かれ目となる典型例。
実務コメント
「ゴブリンは借主負担です。苔は貸主負担です。
これは法律で決まっています。
覚えておいてください」
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【1-5】魔物密度維持義務
条文
借主は契約区域内の魔物密度を適正水準に維持しなければならない。
スライム系:一フロアあたり五十体を超えた場合、
借主は速やかに駆除措置を講じなければならない。
(ダンジョン賃貸借法 第11条 / 魔獣防除法 第5条)
解説
ダンジョンを放置すると魔物が増える。
増えすぎた場合の駆除費用は借主負担。
ゴブリンは特に繁殖が早いため別途特例が設けられている。
【ゴブリン特例】
発見から七日以内に駆除措置を開始しなければならない。
七日を超えた場合は所有者への通知義務が生じる。
(魔獣防除法 第8条)
本編事例
EP4「ゴブリンは借主負担です」
工房付きダンジョンで通常三十匹のゴブリンが
三百匹近くまで増殖。坑道接続が原因だったが、
借主の管理義務違反も問われた案件。
実務コメント
「ゴブリンは七日以内です。
気づいたらすぐ連絡してください。
手遅れになると費用が増えるだけです」
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■ 第二章 仲介
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【2-1】仲介手数料
条文
仲介業者は、契約成立時に賃料一か月分を上限とする
仲介手数料を徴収することができる。
借主の同意なき手数料の上乗せは違法とする。
(ダンジョン賃貸借法 第3条)
解説
仲介手数料の上限は賃料一か月分。
これを超える請求は違法。
「紹介料」「事務手数料」等の名目での上乗せも同様。
実務コメント
「手数料は賃料一か月分です。
それ以上取る業者には気をつけてください。
当社はいただきません……いただきます。
ただし一か月分です」
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【2-2】更新料
条文
更新料は賃料一か月分を上限とする。
これを超える請求は無効とする。
(ダンジョン賃貸借法 第20条)
契約期間満了の二か月前までに双方から申し出がない場合、
同条件で契約は自動更新される。
(ダンジョン賃貸借法 第19条)
解説
更新の意思がない場合は必ず二か月前に申し出ること。
何も言わなければ自動で更新される。
更新料は一か月分が上限。
実務コメント
「更新のご連絡は二か月前にお願いします。
黙っていると続きます」
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【2-3】立退料
条文
貸主の都合により契約を終了させる場合、
貸主は借主へ賃料六か月分以上の立退料を
支払わなければならない。
(ダンジョン賃貸借法 第21条)
解説
貸主側の都合による退去要求には立退料が必要。
再開発・建て替え・売却等の場合が該当する。
六か月分が最低ライン。交渉により増額することもある。
実務コメント
「立退料の交渉も承ります。
相場より低い提示をされた場合はご相談ください」
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■ 第三章 事故物件
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【3-1】事故物件の定義と告知
解説
ダンジョンにおける事故物件とは主に以下を指す。
・過去三年以内の死亡事故(借主・冒険者含む)
・封印・呪いの存在
・魔王痕の残存
・ボス魔獣の異常復活
これらは告知義務の対象であり、
告知しなかった場合は契約解除・損害賠償の対象となる。
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【3-2】魔王痕の特例
条文
魔王級存在の侵入による損壊は天災に準じた扱いとし、
いずれの当事者も原状回復義務を負わない。
ただし当該損壊が借主の行為を起因とする場合は
この限りでない。
(ダンジョン賃貸借法 第10条)
解説
魔王痕は天災扱いのため、原則として誰も費用を負担しない。
ただし「借主が魔王を呼び込んだ」場合は借主負担となる。
実務上の適用事例はほぼない。
ただし法令として存在するため、念のため把握しておくこと。
実務コメント
「魔王痕の案件は今のところ扱ったことがありません。
ただ、規定は存在します。
念のため覚えておいてください」
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【3-3】呪い・封印物件
解説
封印や呪いが残存するダンジョンは告知義務の対象。
封印の解除リスク・呪いの影響範囲は
契約前に専門家による調査を推奨する。
なお、封印の効力が切れた場合の損害については
現在法整備が追いついていない分野であり、
契約書に個別の特約を設けることが望ましい。
実務コメント
「封印が解けた場合の責任の所在は現在グレーゾーンです。
特約で対応しています」
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【3-4】死亡事故物件
解説
過去三年以内に死亡事故があった場合は告知義務がある。
三年を超えた場合は告知義務が消滅するが、
重大事故の場合は自主的に開示することを推奨する。
なお、冒険者の討伐中の死亡については
「通常のダンジョン利用に伴うもの」として
事故物件扱いにならない場合が多い。
ただし異常な高頻度の場合は別途判断が必要。
実務コメント
「死亡事故の告知は三年が基準です。
ただし重大な案件は三年を超えても開示します。
それが信頼につながります」
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■ 現場の心得
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一、物件を売るな。合う人を見つけろ。
「良い物件はない。合う物件があるだけだ」
二、数字を見ろ。家賃だけ見るな。
「家賃じゃなく収支を見ろ」
三、告知は必ず守れ。
「告知義務は守ります。それが仕事ですから」
四、ゴブリンは七日以内に動け。
「ゴブリンは借主負担です」
五、契約書は読め。読ませろ。
「契約書に書いてあります」
「読んでください」
六、収支で話せ。感情で動くな。
「収支で見れば八ヶ月です」
七、建てて終わりではない。
「ローゼンベルク不動産は建てて終わりではありませんので」
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■ レオン語録
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「良い物件はない。合う物件があるだけだ」
「家賃じゃなく収支を見ろ」
「ゴブリンは借主負担です。苔は貸主負担です」
「告知義務は守ります。それが仕事ですから」
「契約書に書いてあります」
「読んでください」
「仕事ですから」
「当然のように言った」
「現金では、ですが」
「適用できますね」
「建てて終わりではありませんので」
「まずローン返してください」
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※本書はローゼンベルク不動産の内部研修資料です。
無断転載・複製を禁じます。
(ただし役に立つなら構いません)
ローゼンベルク不動産
代表 レオンハルト・ローゼンベルク




