114-1 歪な親子関係です
私、七ちゃん。今、とっても困ってるの。 (本日2回目)
「「「…………」」」
だっっっれも喋んない!!
嘘でしょ? は? 何しに来たのこの人達?
苺大福から視線を外せないんだが? え、何? また食べ出せば良い? じゃあ無くなった時に次は何処見れば良いのさ!?
「……食べながらで良いわよ」
「……!」
喋ったのは母親だ。
私が食べたがってると思ったらしい。
違うんだけど、食べなきゃ気不味い流れを作られてしまった。
仕方ないのではむはむ頬張る。
「大福が、大福頬張ってる……きゃわわ……ぐふぇ」
小声で可笑しな声が聞こえて来たのでチラリと見たら、依然変わらぬ母親と、テーブルに突っ伏して痙攣している頭が見えた。
「貴女には、とても悪い事をしてしまったわ」
……この状況で話すのか。まぁ、横の心配とかしてないから別に良いけど。
「許してとは言わない。でも謝りたいの。
━━ごめんなさい」
母親が頭を下げる。
私はそれを見て、食べかけの苺大福をお皿に戻した。
黙っていると、隣にいた父親も真剣な面持ちで私を見て来る。
「長い事、放ったらかしにして、怪我までさせて、━━すまんかった」
……どうしよう。2人分の頭を見て、私は言葉を詰まらせた。
思ってた以上に、何も響かなかったから。
いや、これは響くと思ってた私の落ち度だろう。
「ようは、それだけ?」
漸く出せたと思えば、我ながら薄情な言葉が出てしまった。
立ち上がって、2人が入って来たのとは反対側。庭に面している障子を開ける。
そっちから自室に戻ろうと思って……。
今日……ちょっと風冷たいなぁ。
「ま……っ」
引き止めようとした父親声が、小さく、そして途中で止まる。
紅い目が、此処では無い場所を見ているかのように見開かれていた。
……あ、そっか。思い出した。
うちの縁側は、ガラス戸を付けたり外したり出来る仕様になっている。雨の日とか寒い日に重宝しているんだけれど、今日は天気予報で暑くなるって言ってたから外したんだろう。
だから、此処があの時の場所━━私が斬られた場所だって、思い出すのが遅れちゃった。
ていうか、この反応……ふーん。
「……おぼえてるんだ?」
過去を振り返っていたんだろう意識が、私の方へと向き直る。
怯えた目に、私はとても落胆した。
「私達、もうカオを あわさない ほう が いいよ。おたがい、たのしくも うれしくも無いでしょ」
本当に無駄な時間費やした。
『思い入れもクソも無い』って、元々言ってたじゃん。新しい事実が発覚して、ややこしくなって、勝手に一度消し去って……『許す』って何? ハッ、お優しい事だ。
私には、この人達への興味が無いのに。
「……っ」
許すとか許さないとか、そんな段階に私達は抑も居ないんだ。
興味……この父親の中に居たらしい魔族に対する方が、まだ有るかも。アレには心底殺意を覚えさせられたから。
今度こそ立ち去ろうと思った。
そしたら、父親が勢いよく回り込んで、私の前で土下座した。
両腕が無いし、勢いがあり過ぎたせいで、廊下に『ダァンッ』て……。
膝を突くだけで無く、頭を打ちつけた大きな音が響きわたる。
流石にちょっと吃驚して、私はその場に立ち尽くしたし、まだ背後に居る母親も「是是!?」と、呼び声に悲鳴が混じっている。
「本当は、父親なんて言う資格が無い事は、自分でよう分かっとる」
廊下に頭━━額を打ちつけた勢いが、本当に強かったらしい。台詞の途中から、血が床をジワジワ汚し始めたのが、嫌でも見えた。
「それでも、俺はキミの親をやり直したい! 与えられへんかったもん、全部━━それ以上に与えてやりたい! つーちゃんが言ったように、許さんで良い! 寧ろ憎んでくれて良い! キミを拒絶して、否定せえへんから! 頼む! つーちゃんだけでも! もう一度キミの家族になるチャンスを与えてやってくれんか!?」
母親が横を通り過ぎて、血が出ているのを見たからか、慌てて父親の顔を上げさせようとする。
「是是ッ、良いから! そんな頼み方じゃこの子だって怯えてしまうわ!」




