113-2 エンカウントです
想定外とは言え、更新2日も明けてしまったので、朝に続いて夜も更新しました。
この前、墨香の室に行く直前に時眉ちゃんが泣いてた理由は、奥さんに『実家に帰ります』って言われたからなんだって。
そして約5ヶ月経った今そんな事を言われたのかぁ……。
「どんな悪い事したんですぅ? ソープ行ったのがバレたとかぁ?」
私はその瞬間、そっと眉ちゃんから距離を取った。
「ゴルァアア糞後輩!! なんちゅうデマ流すんじゃい! ご利用客じゃ無いでござるよ!! 姫様、信じないでね!?」
「うん、……眉ちゃんは、奥さんひとすじ……だもんね」
「目を逸らさないでー!! 姫様に害虫扱いされるなんて、普通に死ねる案件でござるよぉ!」
可哀想だけど、心の距離って一旦空いちゃうと、戻すの難しいよね。
「眉ちゃん、帰ってこないって いわれただけで、あいたくない とか いわれた?」
「そこまで言われた日には首吊る所存」
「何だ、脈まだ有るじゃ無いですかぁ。実家に突撃しろや」
「……!」
口を開けたまま、眉ちゃんは固まってしまった。そこまで衝撃受けた顔しなくても……。
「い、行っちゃって、大丈夫でござろうか?」
「モジモジしないでくれますぅ? キショいんで」
「それともやっぱり、やましい心当たりが?」
「メイシー、後で道場でござる。姫様、お館様に誓って拙者、やらしい事は妻以外にしてないでござる」
うーん? 何か言い方引っかかるけど、安易にジィジに誓うほど眉ちゃんお馬鹿さんじゃ無いからな。しゃーない……信じてやろうじゃないの。
「うんうん、まずは話しあいするのがダイジだよね」
「話し合いといえば、ご当主様と奥様の目が覚めたらしいでござるよ」
ピシっと。体が固まってしまった。
目を逸らしたかった現実を突き付けられたからだ。
生きてたからな……。いつかは目ェ覚めるって分かってたよ? ……うん。
「姫様、やっぱりお話し合いをされるつもりで?」
眉ちゃんの顔は心配しているソレだ。お茶のお代わりを淹れてくれたメイシーも、心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
「まぁ……一回くらいは」
正直……どう話せば良いのか、分かんないけど。
だって、これまで散々カスだの塵だの言ってた対象は父親本人じゃ無く、体を操ってた魔族。しかも本人は内側から微妙に、私達が殺されたりしないよう小細工してたらしい。
そして気が触れてたっていう母親のアレが演技。……演技じゃ無ければ完全な被害者として見れたのに。まぁ十中八九……兄ちゃんに危害が行かないよう見守ってたんだろうけど。
完全に最低のクズ野郎だと思ってた奴がそうでは無く、完全な被害者だと思ってた方も、そうでは無かった。
……ややこしい。
でも、私をこれまで育ててくれたのはジィジで、あの人達じゃ無いのは、取り消せない事実だ。小石程度には気を掛けられていたんだろう。だけど、あの2人の頭に、私を育てるという考えが無かった事は━━事実なのだ。
その事を…………許さなければいけないんだろうか?
自分の事なのに、分からない。
こんなの時に限って、相談し易い麦穂も水沫君も藤君も、お仕事が忙しくって聞けないし……。兄ちゃんは学校だし……。
「眉先輩♡ 死刑で〜す」
「いきなり何故!?」
「姫様が泣きそうな表情になってるからじゃボケ」
「まっ━━」
…………。
話降ってきた眉ちゃんは、メイシーに引き摺られてどっか連れてかれてるし……。
あ、苺大福の粉で服汚れた。
ティッシュを探すけれど、この部屋の何処にも見当たらない為、自室に戻る事にした。
立ち上がって居間の襖を開けると、
「「あ」」
此処に入ろうとしていたらしい2人の大人と、バッタリ鉢合わせた。
━━……すす〜っ、たぬ。
襖……思わず閉めちゃったけど、音がもうおかしい。私、結構動揺してるな。
「あ、開けてもろても……?」
…………しょうがない。
私は居間の大きなテーブルまで戻って座り、神通力で襖を再度開けた。
視線はまだ残ってる苺大福にしか向けない。
「……どーぞ」
もう、なるようになれ!




