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108-1 隠居と当主です

ほぼお手紙です。



(手紙)


 拝啓、父へ


 これを読んでおられるという事は私、鞍馬 是是は悲願を達成したのでしょう。


 私は、魔族に体の主導権を奪われて死ぬ未来を、7歳の頃に視て受け入れておりました。

 私の千里眼で、億以上に及ぶこの結末を避けるための行動を模索したのですが、これが1番、家族を守るために最適な運命(もの)だったからです。


 私の中に入り込んだのは、1人の陰陽師と契約した魔族でした。

 何故魔族と陰陽師が結託したのかは、残念ながら視る事が叶いませんでした。


 態々、厳重に封印を掛けてまで読ませへんようにしたんは、これを読み、私の中に入り込んだ存在を貴方が退治した場合、確実に貴方が龍の次期頭領に殺される結末を視た為です。

 私の千里眼では、貴方は夜凪が10歳の時に殺し合い、相打ちになりました。又は、相打ちにならずとも数年に渡り魂を蝕む呪をかけられ、件の龍が死ぬ際、共に命が尽きたのです。

 私が居なくなる世界で、貴方まで死ねば夜凪とつーちゃんが大変苦労します。


 つーちゃんには、結婚して5年ほど経ってから、この話をしました。

 どうかつーちゃんを罰さないで下さい。夜凪の星崩や、貴方が部下に作らせた霊薬だけではあの魔族を退けられないと知っていた為、気が触れた振りをして、止めを刺してほしいと私が無理に説得したのです。


 ただ一つ、心残りが有ります。

 私達夫婦が名も付けず、貴方が付けた名も、終ぞ呼ぶ事すら無かった娘の事です。

 私の千里眼では、あの子がきちんと生まれてくる事はあり得ませんでした。

 ほぼ初期に流れてしまうか、死産でした。それに、女児では無く男児でした。


 完全に誤算でした。あの子に関する事全てがです。あの子自身の未来、あの子の内心、あの子に関わる多くの物を千里眼で視られなかったのが最初です。


 あの魔族は夜凪を傷付ける事を、決定的に夜凪と対峙するまでしなかった為、娘にも大した危害は加えないと思い込んでいました。


 あの魔族と契約していた陰陽師は、未来が見えるのか、何故か一つの、私が視た未来の中でも最悪に近い類のものに近付けたいらしいです。


 その未来には、貴方もつーちゃんも、娘も存在しません。私と、今とは大分性格等の違う夜凪が存在していました。


 だから、生まれて間も無い娘は1番に殺す標的とされたのでしょう。


 私が出来た事は、あの子が殺されないよう無意識に働きかけ気を逸らすか、何かしらの使い道があると魔族に思わせる事くらいでした。


 それでも、あの冬の日は無意識に介入出来ず、非道を止められなかった。あの子を私の武器で、私の手で斬ってしまった。


 貴方がこの体ごと魔族を殺してくれたら良いと願い、あの後奴の集中力をひたすら削がせて頂きました。

 しかし、その程度で罪滅ぼしにならん事は重々承知です。


 本当に可哀想な事をしました。謝って許されるような事やありませんが、『すまんかった』と伝えて下さい。


 最後に、親より先に逝く不義理な息子で、すんません。


 敬具


 鞍馬 是是




 ***



(三人称)


 カサリ、と。

 読み終えた手紙を四つ折りに戻した。

 大雑把かそうで無いか問われれば、死ぬほど大雑把な彩雲がだ。

 表情は見えない。もう1人誰かこの場にいれば、『手紙を綺麗に追った時点で怖くて顔を見れなかった』と言ったに違いない。

 彩雲はただ徐に立ち上がり、


 ━━━━すぐ側で布団に横たわる是是を踏んだ。本気で容赦無く。



「げぶふぉおああ!?」



 その汚い呻き声は、今まで死んだように目を閉じていた是是から出た。

 片方は紅のままだが、霊力が減った為もう片方の目は琥珀色に変わってしまった。

 そんな両目が驚愕で見開かれた後、キョトンと周囲を見回す。


「……はえ? え? …………生きとる?」

「おう、ようやく正気に戻ったか愚息」


 低い声で見下ろす彩雲(父親)は、愛用の黒い扇を己の手でパンパン鳴らせていた。

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