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視界に死体が一つ、背後にも転がっていた。
バゼルも手を斬り飛ばされすぐに復帰は難しいのだろう。斬られた手に治癒魔法らしきものをかけながら後方へ下がっていく。
残る十人が、アルフレッドを逃がさないように包囲している。
一瞬の膠着状態から先手を取ったのは、真っ二つにされたヤシウの隣にいた魔法使いだった。
アルフレッドを視界に捉えつつ地面に手を付ける。
(足元か?)
手に付けた動作から、発せられる魔法の発生点を洞察する。
純粋な剣士でしかないアルフレッドに魔力を探知する手段はない。
だが、魔法を放つのはいつだって生き物だ。いつ、どうやって、どこから、術者の意識が介在する。
予想を元に視線をわずかに足元に向けると、土が盛り上がりはじめている。
顔目掛けて生えてくる土槍を一歩後ろに身を引きながら、全員の位置を確認する。
経験による洞察と常識を逸脱した超感覚によって成り立つ予期。それが、魔法を使えぬ身でありながら、魔法を回避してみせた絡繰り。
視覚は横合いから、槍使いが構えながら進んでくるのも見逃さない。
聴覚は背後から聞こえる、砂が擦れる音を聞き逃さない。
土槍の穂先を切り飛ばして、慣性に従い宙を舞う穂先を掴み最小の動きで投げる。
軽い動作とは思えないほどの豪速で宙を突き進む穂先は、魔法使いの脳髄を突き刺さり絶命へと至らせている。
横から槍が、今までアルフレッドがいた場所に突き出される。
あと半秒速ければ捉えられていたであろうが、アルフレッドの姿はすでに跳躍して空中にあった。
「斬撃の道標」
体を捻り、後ろから接近する三人目掛けて斬撃を飛ばす。
ラルゴとゴウゼは後ろに大きく弾かれつつも、人一人容易く切り裂く斬撃を剣で受けきってみせた。
もう一人は、端に居たことも幸いして横に避けることが出来た。
着地地点にいる槍兵を、ついでとばかりに肩から袈裟懸けに切り伏せる。
着地したアルフレッドに向けて、幾つもの魔法が殺到する。
(随分と揃い過ぎている気がするな)
飛来しくるのは、炎の弾頭、風の刃の二種類の魔法がそれぞれ二発ずつ。アルフレッドが着目したのは、魔法の種類ではなく、その威力や飛ばし方、速度といった細かいところだ。
詠唱などで揃えやすくなっているとはいえ、術者の意識が介在する以上、魔法の威力や射出までの速度、練度はばらつきがあるべき。
そういったばらつきが皆無で、あまりにも揃い過ぎている。同じ人間が放ったと言われた方が、納得がいった。
違和感を頭の片隅に置きつつ、体はよどみなく動き続けている。斬撃を飛ばし、炎の弾頭を切り。中心に圧縮された熱源が爆発する。
爆風に煽られて、魔法ごと切られていた魔法使いが崩れる。
風切り音が耳の横を通り過ぎた。魔法の間を縫って放たれた矢を、首を捻って避けている。
まだ健在の魔法には、袈裟懸けにされ投げやすくなっている死体を投げつける。
爆散した死体。撒き散らかれた血肉を目くらましに、弓兵へと肉薄する。
弓兵が二本目をつがえていたが、間に合わない。
弓兵の見開かれた眼には、胸に突き刺された剣が朧げながら写っていた。
更に前へと進むアルフレッドへ向けて、短剣使いが距離を詰めている。
彼の背後から剣士が遅れて追ってきているのを見る限り、見た目どおりの身軽さというべきか。
援護として、風の刃が再度飛んできている。
(炎の魔法は飛んでこないな。仲間を巻き込まない為か?)
斬撃を飛ばして、風の刃を相殺する。
斬撃を飛ばした隙を狙って突き出された短剣は、小手で受け流し、抵抗も逃亡も許さず斬殺する。
後ろから追ってきていた剣士たちが失速する。
(こいつを殺したタイミングで足にかけていた魔法が消えたな。こいつが他の奴らにもかけていた?そこまで魔法の腕が達者には見えないな。これは何か、仕掛けがあるな)
次の更新も間が空いて申し訳ないですが、10/26の予定です。




