029
剣士二人の失速が勘違いではないことを確信して、魔法使い三人に向けて疾走する。
胴を狙って飛んで来た風の刃を、滑り込んで避ける。
体を起こしながら、お返しに斬撃を飛ばす。
悪くなる現状から活路を見出すために、一か八か魔法使いの一人が向かって来る。
「アスカロン」
口に出した魔法は、手から光刃を飛ばすものであったが、アルフレッドに向かって飛んでいく様子はなかった。
それもそのはずで、光子を纏った腕は肉薄したアルフレッドによって切り飛ばされていた。
悲鳴を上げる暇もなく、首も宙を舞った。
残されたレイネが思わず数歩下がるが、背中に大木が当たる。
訓練は積んでいた、こういった状況も想定していた。
それでもこの惨状を目の当たりにして、覚悟が崩れ去った。
無慈悲に付きつけられた死への恐怖が隠せなかった。
絶望に彩られた瞳には、腕を治癒している最中のバゼルとアルフレッドの後ろから迫るラルゴ。
「やめろーーッ」
大木ごと断ち切られ、上半身が大木と共に倒れる。
「がああああああ」
激昂したラルゴが蹴飛ばされる。
バゼルを巻き込むように
追いついたゴウゼが両手で剣を構え笑う。
「意外な反応だな」
アルフレッドは心底、意外そうに問いかけた。
「なに、ただの一人に蹂躙されているのが面白くてな。剣の腕を磨き、闘気を鍛え、それでも足りなかったから魔法書との契約までしたにもかかわらず、だ。ただの一人に容易く蹂躙される。くくっ、これだから人生ってやつは愉快極まりない」
「ふーん、そんなもんか?」
相槌は適当ながら、魔法書という単語は聞き逃していなかった。
「おや、分かって貰えると思ったんだがな」
「悪いな、弱者の気持ちはよく分からん」
「くはっ」
一笑と共に斬り上げられた直剣に対して、剣を振り下ろし真っ向から迎え撃つ。
ブツっと鈍い音がした、二人の中間地点で大気が上下から挟まれ弾けた音だ。
相手の勢いに弾かれたように、互いに剣を引いた。
今度は、右から剣を振るう。技術の差か、膂力の差か、アルフレッドがわずかに速く剣を届かせる。
剣が交差した地点は、最初よりもゴウゼに寄っていた。
正眼に構えるゴウゼに向けて、アルフレッドは一歩前に出て、横薙ぎに振るわれる。
変わらない勢いで振るわれる剛剣に対して、ゴウゼは構えることしかできていなかった。当然、撃ち負けるはずだった。
ゴウゼは頭の中で、崩された形成をどう立て直すかを考えていた。
その目論見は外れることになる。
アルフレッドの剣が、ゴウゼの剣の側面にぴたりと合わせられていた。
弾くことなく、剣身に沿って剣をスライドしていく。
吸い込まれるように、剣先はゴウゼの胸当てを割り、その内にまで刃を届かせていた。
魔法使いの集団に身を置きながら剣を磨き続けた稀有な男は、諦観にも似た笑みを浮かべ絶命した。
今の斬り合いはアルフレッドにとっても、満足のいくものだった。
余韻に浸る間もなく半歩後ろに下がる。
上から降ろされた衝撃波が、地面を打つ。
「空気の読めない奴だな」
振り返った視線の先に佇むのは、気炎をあげるラルゴだった。
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