019
前回に引き続き申し訳ないのですが、今回の更新も一週間引き延ばさせてください。
来週の(6/22)には更新できるようにします。
「やっぱり、契約者だったか」
魔道具店でのできごとを、ミカから聞いたアルフレッドの第一声だ。
彼の脳裏に浮かぶは、先日見たラプラスに刻まれた刺青だった。魔法書の契約者の特徴である、刺青を確認していながら確証を持てなかった。
魔法書と契約した際に、体の一部に刺青が現れることになるが場所と見た目は魔法書によって異なる。アルフレッドはこれまでの人生において、二度契約者と対峙している。彼らに見られた刺青とは見た目も場所も大きく異なっていた。
故に、確証までに至らなかった。
「あと、ここでお別れだって」
「……まじか」
「まじだよ!あれはもう戻ってくる気がない目だった」
戦慄くミカを置いて、アルの思案は別にあった。
「うーむ」
「何か気になることが?」
アルフレッドが気になっているのは、アルフレッドとバゼルが話した時の内容だ。
彼らはラプラスの名前を耳にして、明らかに動揺していた。
「円環の奴らがラプラスの名前に動揺していた。片方は顔に出ていて、もう片方は隠そうとしていた。間違いなく、あいつらの間に、俺らが知らない事情があるぞ」
彼らがラプラスの名前を耳にしたのは、ちょうどミカたち二人が船を離れるタイミングだった、彼らがラプラスの顔を確認していたかは定かではない。
「事情って?」
「事情は分からんが、それがラプラスを諦める理由になるか?」
「ならないけど、さ……。君こそどうしたの、やけにラプラスを誘うのに乗り気じゃないか」
「まあ、な。一人でアルゴナウタイの燃料を担える人材は貴重だろう」
アルフレッドがラプラスをアルゴナウタイに迎え入れたい理由は、実利と浪漫。
「なにより、理由は分からんが『円環』に狙われているなんて、ワクワクしてくるよな」
「うわー、病的だよね。君のその英雄大好きなのってさ」
実力があり、語るだけある背景を持つものを、人はそれを英雄と呼ぶのだ。
隔絶した力を持つという点では、怪物も英雄も同じだ。
怪物と英雄。これらを隔てるのは、理解だ。人々は、強者たちの過去や人生というファクターを使って、英雄という理解できるものへ形を当てはめる。
アルフレッドはそういった、言い知れぬ背景を持つ強者が、英雄が好物なのだ。
そこに、善悪は関係ない。
ミカは可能性として排除しているようだが、今現在分かっているのは『円環の書』とラプラスの間に何かしらのトラブルがあるのだろう、ということだけだ。
どちらが悪いのかまでははっきりしていない。
仮に、ラプラスが極悪人だったとしても、アルフレッドはやはり彼女を旅路に誘うだろう。
「そういうお前こそ、俺以上にあいつを誘いたいみたいだが、どういう風の吹き回しだ?」
「当然でしょ。僕のことを助けてくれたからね」
「助けた?あ、あー。あれか」
ミカが言っているのは、今朝のククリ鳥に襲われた出来事のことだ。
「それより、本当に大丈夫かな?『円環の書』ってあんまりいい噂は聞かないからさ、やっぱり不安だよ。今からでも、船に泊まるように言ってこようかな」
「まあ、大丈夫だろ」
アルフレッドには、確信めいたものがあった。
「村中で襲って来るような奴らではなさそうだった。まして、今この村には俺らがいる。体面上、アルゴナウタイは国家事業だ。その目がある所で、目立つことするほど阿呆じゃないだろ」
「なんにせよ、今できることはバレていないことを祈るしかないな」
楽観的な笑いとは裏腹に、アルフレッドの目には剣呑な色が見えた。
先週は更新できず、申し訳ありませんでした。
まだ暫くは、隔週の更新(6/15)になりそうですになります。(6/22)
少しずつですが、落ち着いてきているので早く週一ペースに戻したいところですね。




