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処刑された側室は、もう皇帝を愛さない。  作者: 白 月虹


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8/10

8話 眠る君の隣で

冷静を装うが、マルクスの胸の奥はザワついた。


(なぜあんな一言が気になるんだ!

俺から離れるなら良いじゃないか!そうだバーバラも褒めてたバラを育てていればいいんだ…。)


外まで聞こえそうなくらい、足音は大きかった。


一方アンリネットの部屋では…。


「お姉様…あんな言い方。マルクス様が誤解しますよ?」


「良いのよ…本当の事だし、もう、陛下の事は…。」


"諦めた"の一言が言えなかった。


本当は諦められない。

だが処刑を回避するため。

そして妹のように思い始めたバーバラのため。

必死に気持ちを押し殺しているだけだった。


「アンリネット様、少しお休みになられた方が…。」


リリーがそう言うと、「また来ます。」と言って、バーバラとエリスは一礼して部屋から出て行った。


「アンリネット様…エリスの事ありがとうございました。それと…バラを育てるアンリネット様が怪我されたら、私は苦しいですよ。」


涙を零すリリーを見て、アンリネットは息を飲んだ。


「リリー!ごめんなさい!

…ありがとう……。」


侍従関係も無いように抱き合う二人もまた、家族のように見えた。


三日もすると、アンリネットの足も癒え、日が落ちる頃、一人温室のバラの手入れをしていた。


「ふぅー。こんなものかしら?」


久しぶりの土いじりで、すぐに疲れてしまうと、ベンチに座り休憩していた。


すると温室の外に人影――マルクスだった。


マルクスはアンリネットが居るのは知らず、温室の中に入る。


(良く手入れされている。それにいい香りだ……。)


歩いていると、ベンチで居眠りをするアンリネットが視界に飛び込んで来る。


「っ!」


静かに近づくマルクス。


「アンリネット?」


疲れからか全く起きる気配のないアンリネット。


「寝ているのか…。」


隣に座るマルクス。


「…なぜ、そんなに変わったのだ?

俺に…興味が無くなったからか?」


アンリネットの頬に手を添える。


「もう一度、そなたに……。」


言い終える前に、アンリネットの体が傾き、マルクスに寄りかかる。


「っ!」


そこへ、暗くなっても戻らない事に心配したリリーが入って来る。


「陛下!?」


一礼すると、アンリネットを揺する。


「アンリネット様!うぅ、起きない…。

申し訳ございません。エリスを呼んで来ますので、もう少しこのままでも…。」


「良い。」


そう言うと、アンリネットを横抱きにした。


(軽いな…。)


「行くぞ。」


前を歩くマルクスを見ながら、リリーはニヤニヤと、ついて歩いて行った。


その様子、城の中の廊下からヘレーネが憎悪を込めた眼差しで見つめていた。


「あの女……。」


そして、翌朝。

バラ園が荒らされ、殆どのバラが散っていた。



つづく。

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