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処刑された側室は、もう皇帝を愛さない。  作者: 白 月虹


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番外編 1

天気も良く、風も心地よい日。

お忍びで国境沿いをアンリネットとマルクスは馬車を走らせていた。


新婚旅行に、約束をしたウィーニーシア族に会いに。


「私も、学園を卒業して以来ですわ。」


「そうか。俺は幼少の時に……。」


そのまま黙ってしまうマルクスに、アンリネットは不安な顔を浮かべた。


「何か、思う所が?」


はっとすると、マルクスは笑顔を向ける。


「いや、そうだな…話しておこう。」


マルクスはアンリネットの手を握ると、ポツリポツリと話し始めた。

隣国でのある出来事を……。


「隣国の王に招待されて、当時の両陛下――私の両親と共に赴いた。」


マルクスは目を瞑る。

幼い時の記憶を思い出すように…。


――――20年前、国境付近。


「この道は落石が多くて、通らない方がいいです。」

「だが、早く馬車はウェスパシアに戻らなければならないのだ。」


従者と道を塞ぐ者が言い合っていた。


「母さま…。」


幼いマルクスは母親の肩に顔を預けていた。


「大丈夫よ、マルクス。」


「でも、もうおばあさまに会えないよね…。」


病で床に伏せている、マルクスの祖母が危篤と言う知らせが届き、急いで城に戻る途中だった。


「母上…出る時はお話も出来ていたのに…なぜ急変したのだ。」


マルクスの父は手で顔を覆っていた。


「――何があっても責任は取れないよ!」

「何も無ければいいのだ!」


そんな声がすると、馬車はまた走りだした。

そうしてしばらく走っていると、コロン、ゴロゴロ…と石が馬車に当たる音が響いた。


そして次の瞬間――ヒヒーン!


後ろの馬に当たったのか、馬が暴れてしまう。


「うわー!」


振り落とされた騎士の悲鳴。


「大丈夫か!?」


心配する騎士の声。


「ダメだ!そっちに行っては!」


その声は、馬車へ向かう馬を止める声。


ドカ!と言う音共に、マルクス達が乗っているキャビンが横転してしまう。


「きゃー!」

「うわ!」


騎士たちが慌てて、キャビンのドアを開ける。


「陛下!大丈夫ですか!?」


「ああ、私は大丈夫だ…。マルクス?エリーゼ?」


「僕も大丈夫です…母さまは?」


マルクスは体をゆっくり起こすと、母親が下に居るのに気づく。


「母さま!」


咄嗟にマルクスを強く抱き締めたエリーゼは、全身を打ち付けて、意識を失っていた。


「エリーゼ!早く医師を!」


一緒に連れていた専属医師が駆けつけ、手当てを始めた。


「命に別状はありません。ですが、城まで動かすのは危険でございます。」


「そんな…。母さま、僕のせいで…。」


「…それは違う。私のせいだ…私が急がせたから…。」


マルクスの父は、マルクスを抱き締めた。

それは怪我をさせた妻と、最後に会えない母への懺悔のように。


途方に暮れていると、一人の青年が近寄って来る。


「誰だ!」


騎士たちは警戒をし、声を掛けた。


「怪我してるの?俺の集落が近くにあるから手当てしようか?」


「……。」


皆が顔を見合わせていると、マルクスが言う。


「僕が着いて行くよ。」


「皇子!危ないですよ。」

「皇子が行くなら俺が護衛しましょう。」


そんな声も騎士の中から聞こえた。


「……いや、マルクスは私と一緒に城へ戻ろう。エリーゼの事は騎士たちと。」


マルクスは不満そうだったが、父親には逆らえず、仕方なく残る騎士の馬に跨った。


「その者、名は?」

「キーリ。」

「私の妻のよろしく頼む。用が終わった時、迎えに行きます。」

「わかった。」


そう言うと、一行は城へ急いだ。



つづく。

新婚旅行編になります。

短いですが、よろしくお願いします。

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