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処刑された側室は、もう皇帝を愛さない。  作者: 白 月虹


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34話 町民の思い

朝になると、東の町へ向けて出発した。


「これはマルクス陛下!こんな所まで、ありがとうございます。」


町長が丁寧に迎える。


「すまない…色々考えてはいるのだが、良い案が出なくて…。」


「そんな事…物資も支援金も頂いているのに…。

作物を育てるのを生きがいな者も居るので、不満が募ってしまったようで…。」


町長は申し訳なさそうな顔をする。

マルクスはそんな町長の肩に手を置いた。


「周辺を調査していいか?」


「もちろんです。ですが、今は町民に会わない方が良いです。」


「そんなに。か…。」

(皆の生活を守れない皇帝など、嫌われて当然か…。)


ふっ。と笑みを零すと、マルクスは兵たちを連れて、河を中心に調査を開始した。


「やはり地盤は固いのか…。」


いくつか掘った後が見られた。


「そうですね…我々も手は尽くしているのですが…。」


兵士が言った。


「……。」

(この地盤を掘れるのは……いや、しかし…。)


ナディシアの名前が頭を過ぎるが、すぐに首を振った。


そこへ二人…水を汲みに町民が現れた。


「おい!軍のやつらか!?」


振り返るマルクス。


「私は、マルクス・ドゥ・ウェスパシアだ!」


「あ?」

「ばか、あの人皇帝だぞ!」

「は?皇帝が何してんだよ。」


そんな会話が聞こえる。


「水不足の事、すまないと思ってる。水汲みの手伝いをしたい。」


マルクスが声を上げる。


「…ここ一年、雨はバケツ一杯分しか降ってない。一生、皇帝陛下様が水汲みするのか?」


「それは…。」


マルクスは言い淀む。


「出来ないだろ?

俺たちはここで生まれ育った。簡単に故郷を捨てられないんだ……。それに、明日は雨が降るかもしれないだろ?」


一人の男が涙目になりながら言った。

そんな言葉に、マルクスは何も言えずにいた。


何往復か水を町へ届けてみても、町の暮らしは何も変わらない。皆、無言で屯所へ戻って行った。


次の日、屯所ではマルクスを筆頭に水不足の事について、話し合いがされていた。


「掘るのがダメなら、石を積み上げていくしかありませんよ。」


「それも考えた…だが時間と人手が限りない。」


「町を移すしか…。」


「それでは、町民は納得しないだろ。」


マルクスと兵たちの話し合いは止まってしまった。


すると一人の兵士が慌ただしく入って来た。


「陛下!お客様です!」


「何?…誰だ?訪ねてくる者などいないはずだが。」


そう言いながら外へ出ると…そこに居たのは…。

ドインスタッド公爵と、鉱夫たちだった。


「なぜ、貴方がここに…。」


マルクスが不思議そうな顔をしていると、ドインスタッド公爵は、得意気な顔をして答える。


「我々の力が必要かと思いまして。

マルクス様は、いずれ私の息子にもなるのですから、協力するのは当然です。」


「なっ!ナディシア嬢が皇后になる話、私は賛成していない!」


マルクスが声を荒らげる。


「しかし、ここを掘れるのは私の鉱夫たちだけです。町民の暮らしの方が大切なのでしょう?」


「くっ…。」


「それにゼノス殿からの手紙もあります。」


そう言って公爵はマルクスへ手紙を渡した。

そこに書かれているのは、協力を承諾した事と、ゼノスの方でも策を練っていると言う事が書かれていた。


「成功した暁には、ナディシアを皇后にして頂きます。」


マルクスは、しばらく考えたのち…。


「………わかった。だが成功した時だけだ。」


「ありがとうございます。

それでは、作業に移らせて頂きます。」


ドインスタッド公爵が一礼すると、鉱夫たちに指示を出し、屯所から去って行った。


(……くそ。こんなはずではなかったのに…。アンリネット…。)


─────


一方、丁度その頃、アンリネットの元にマルクスから手紙が届いていた。


「アンリネット様!陛下からお手紙が届いております。」


リリーがアンリネットに手紙を渡す。


「え!お忙しいでしょうに…。」


現状とマルクスの心中を考えると、アンリネットは素直に喜べなかった。


それでも丁寧に封を開け、何が書かれているのか、ドキドキしながら便箋を取り出した。


【 アンリネットへ


城から出て、数日しか経っていないのに、

もう君に会いたいよ。


だが東の町でトラブルが起きてしまって、戻る目処が経たないため、いつになるかわからない。


屯所で見る星は、とても綺麗だから、君も絶対喜ぶと思う。いつか一緒に…。


早く君に好きだと伝えたい。

  マルクス 】


(これ!恋文みたいじゃない!)


アンリネットは一瞬で顔を赤くした。

リリーはそんなアンリネットを見て、中身を読まなくても、わかったような気がして、うんうん。と頷いていた。


「アンリネット様、早くお返事をお書きしませんと…。」


ニコニコするリリー。


「そ、そうね。便箋は……陛下から貰ったものを使うわ。封筒を用意してくれる?」


「承知しました。」


リリーはそう言いと、部屋から出て行った。


(まだお父様の話は、陛下まで届いてないのね。それなら書かない方が良いわね。)


手紙を書き終え、封筒に入れると、二人は誰に運んで貰おうか悩んでいた。


「ゼノス様は、お城の留守を預かっているし…。」

「郵便で出すと、何日かかるかわかりませんしね…。」

「んー……。」


二人は、あっ!と顔を見合せた。


「頼んだわよリリー。」


「はい!」


アンリネットの手紙を託されたリリーは、お城へ向かった。



つづく。

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