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処刑された側室は、もう皇帝を愛さない。  作者: 白 月虹


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21話 すれ違う想い

アンリネットは、リリーを探しに部屋を出て廊下を歩いていると、曲がり角から人の声がする。

よく聞き取れないが、マルクスとバーバラだった。


「君の言った通りだ――」


先に聞こえたのはマルクス。


「だから言ったではありませんか〜。お姉様は――好きなんです。だから快く承諾しますよって!」


「あぁ。完成したら――贈ろうと思う。そして――」


「まぁ。本当ですか!――お姉様も喜んでくれますわ!――。」


アンリネットは胸がザワついてその場から離れた。


(私の事?ポプリ作りはバーバラのため?そうよね。愛してるのはバーバラですもの…。)


アンリネットは来た道を戻る。


(…バーバラが喜ぶ物作らなきゃ!)


視界は滲むが、足は止まらなかった。


ポプリ作り当日。


二人きりで温室で作業をしていると、浮かない表情のアンリネットに、マルクスが気づいた。


「体調が悪かったか?」


「え?」


驚いてマルクスを見る。


「元気がないように見える。」


言葉は素っ気なくても、声色は優しかった。

アンリネットはそれだけで良いと思い、首を横に振ると、笑顔を向けた。


「すみません。ポプリをどう仕上げようか、考えてただけなんです。」


「そうか…。」

(あの笑顔ではない。な…。)


そうして、黙々と作り続けてポプリが完成した。


「巾着袋ですが…何色にしますか?柄も色々ありますよ!」


テーブルの上に色とりどり、たくさん並べられた巾着袋を見て、マルクスが一つ手に取った。


「…これにする。」


「これ、ですか…。」

(バーバラっぽくないけど…陛下が良いなら良いか。)


その巾着袋、黄色の生地に鳥の柄が描かれている物だった。


「では、こちらに入れて、最後紐を引っ張って結びましょう。」


「わかった。」


そうして作り終わると、残った花びらを見たマルクスが言う。


「もうひとつ作って良いか?」


「ええ!もちろんですわ!」


マルクスはまた巾着袋を一つ手に取る。


「それ…ふふ、お揃いなんですね。」


水色の生地に、鳥の柄が描かれた巾着袋を見て、アンリネットが言った。


「ん?ああ…嫌だろうか…。」


「全っ然嫌じゃないですよ!陛下とお揃いなんて、嬉しいに決まってます!」


「そうか?…良かった。こっちの黄色のを――」


言い終わる前にアンリネットが遮ってしまう。


「バーバラは幸せ者ですね!こんなに思われて…。陛下ともお似合いですし。私もなんだか嬉しいです!」


「…そうか。」


嬉しそうなアンリネットの顔を見ると、マルクスはそれしか言えず、その後どうやって温室を出たか覚えていなかった。


次の日。

マルクスは意を決してポプリを渡そうと、アンリネットを探していた。


「何故居ないんだ…。」


呟くマルクス。

前を歩く執事長に声を掛けた。


「アンリネットを知らないか?」


「アンリネット様なら、リリーと街へ出かけましたよ。」


「なっ!…そうか…。」


来た道を戻るマルクスの背中は、しょんぼりしていた。


そして次の日、マルクスは一日公務で忙しく、その次の日はバーバラが公爵令嬢を招待したお茶会に、アンリネットも出席したため会えず、その次の日も、アンリネットはバーバラと街へ出かけてしまい会えなかった。


そしてまた次の日……。


「アンリネット様!」


リリーが慌ただしく部屋へ入ってくる。


「どうしたの?」


「こ、今夜…お渡りがあります。」


「…はぁ?」


アンリネットは信じていなかった。


「本当ですよ!」


「えっ!?そんなはずないわ!バーバラと間違えたのよ!」


すると、バタバタとバーバラが部屋入ってくる。


「お姉様!今夜お渡りですって!?」


キラキラさせた眼差しのバーバラ。

アンリネットは瞬きを繰り返していた。


「良かったですね!」


リリーはアンリネットの手を取ると、瞳を潤ませていた。


(なんで?…陛下と体を重ねるの?そんな事有り得ない!何かあるのかもしれないわ…。)


周りの者を他所にアンリネットは、違う覚悟をしていた。


夜になると、マルクスが訪ねて来る。


「陛下…お待ちしておりました。」


「あぁ…。」

(いつもと雰囲気が違うな。)


部屋へ一歩入ると、テーブルの上にはワインと軽食が並べらんでいるの目に入る。


「良かったら、こちらへ…。」


アンリネットはテーブルへ案内する。


「これは…。」


「このチーズ、とても美味しくて…それに合うワインを買って来ましたの!陛下にも食べて欲しくて。」


ニコリとする。

マルクスは、緊張をほぐしたくてワインに手を伸ばした。


世間話をして、しばらくすると、マルクスがガウンのポケットから、アンリネットと作ったポプリを出す。


「それ…。バーバラに渡してないのですか?」


「これは、君に渡したくて作った。」


そう言うとアンリネットへ差し出す。

その顔はワインのせいなのか、緊張のせいか…赤くなっていた。


「あ、ありがとうございます。」


アンリネットは困惑しながら受け取ると、マルクスが口を開いた。


「この数日、君に話がしたくて、お渡りと言う形にしてしまい、すまなかった。」


「いえ。」

(やっぱり、別の目的があったのね。)


アンリネットは緊張を解かず、耳を傾けていた。

この夜が自分の運命を変えるとも知らずに…。



つづく。

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