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処刑された側室は、もう皇帝を愛さない。  作者: 白 月虹


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2/13

2話 花開く笑顔

そして、その日の午後。


バーバラのダンスは壊滅的だった。

テンポも動きもチグハグ…ダンスの講師も呆れていた。

それでも教えているのは、マルクスの寵愛を受けていてる側室のため、我慢をしていた。


次の日、そのまた次の日。

アンリネットはバーバラのダンスレッスンに顔を出していた。


そんなある日。


「待って!」


アンリネットが口を挟む。


「あ、あの…ごめんなさい。私、全然上手くなら――」


「私が相手をするわ。」


バーバラは驚きで目を見開いた。


「ですが、アンリネット様のお足を踏んだりしたら!」


講師が横から言うが、アンリネットは目もくれずバーバラの手を取った。


「先生は手拍子をしてちょうだい。」


そう言うと、講師の手拍子に合わせて踊り出す。


「バーバラ、私を見て。下ばかり見てたらダメ!ダンスは男性に委ねれば良いの。足を踏んだら、その男が下手なのよ。」


アンリネットは優しく微笑むと、その言葉と笑顔でバーバラの緊張の糸は切れ、可憐な花が咲いたように微笑み返した。


「そうよ!出来るじゃない。そうやって笑顔でいた方が素敵よ。」


アンリネットもまた、楽しそうな笑顔で踊り続けた。


そんな二人を、壁際で控えてる侍女がヒソヒソと声を立てた。


「最近のアンリネット様どうしたのかしら?」

「バーバラ様の事、あんなに毛嫌いしてたのに。」


そんな声が聞こえる方へ、皇后ヘレーネが向かって来る。


「皇后様!」


侍女たちの声で、レッスンは止まる。


「ヘレーネ様!」


震えるように後ずさりをするバーバラを見て、一歩前に出るアンリネット。


「これは皇后様!このような所へお越しになるなんて。」


丁寧にお辞儀をするが、アンリネットは内心で息を呑んだ。


(ヘレーネ……。)


前の人生で、敵対していた相手。


(気付かれては駄目。)


何事もないように微笑みを浮かべる。

するとヘレーネは二人を見比べて、口元を緩めた。


「随分と仲が良いのね。以前はバーバラ嬢を見れば嫌味ばかり言ってたのに。」


ヘレーネは扇子で口元を隠しながら言う。


「そうですね…私が教育した方が、私の株が上がりますでしょ?そしたらマルクス様も見直してくれるかと思いまして…。」


「ふんっ。そんな事しても、無駄だと思いますけどね。」


ヘレーネはフンっと顔を背けると、何も言わずその場を後にした。


(はぁ…誤魔化せたかしら…。)


そう思っていると、侍女たちの視線を感じた。


「やっぱり!バーバラ様の事ダシにしてるのね…。」

「こんな事しても陛下が振り向く訳ないのにね…。」


そんな声が微かに聞こえた。


そんな空気を変えたのはバーバラだった。


「アンリネット様!ありがとうございます。」


アンリネットの手を取って、バーバラはキラキラした瞳で言った。


「え?えぇ…私は何もしてませんけど…。」


「私が震えて何も言えないのを、庇ってくれました。ヘレーネ様は…少し、怖いので…。」


ヘレーネもまた、マルクスの寵愛を受けているバーバラが目障りだった。

側室になってすぐ、バーバラは階段から落ち、足に傷跡が残る程の出来事があった。


「バーバラは、もっと背筋を伸ばして堂々としていればいいのよ。陛下に愛されてるのだもの…自信を持って。」


自分で言った言葉なのに、胸がチクッとした。


「…ありがとうございます。」


「さぁ、続けましょう!」


ニコリとすると、レッスンを再開した。


確実に、アンリネットとバーバラは一緒に過ごす時間が増えていた。

そんなある日、バーバラの二度目のお渡りが決まった。


東屋でお茶をしているアンリネットとバーバラ。


「今夜…陛下がお渡りに…。」


「…一度目は…そうね、私が妨害したんだったわ…。」


アンリネットは大きくため息をついた。


(私ったらなんだか恥ずかしいわね…。)


「私…陛下が怖いんです。あの大きな体、目つきも…まるで大きな狼みたいでしょ?粗相をしたら食べられてしまいそうで…。」


アンリネットは目を丸くした後、大きな声で笑った。


「あーはっはっはっ!」


「ご、ごめんなさい。」


縮こまるバーバラ。


「良いのよ!ごめんなさい。バカにした訳じゃないの。貴方らしいわね。」


まるで妹を見るような眼差しで、バーバラを見つめるアンリネット。


(私も…そろそろ腹を括らないとね。)


深呼吸する。


「公爵夫人は夜伽についてなんと?」


「えっと…陛下に全て任せなさい。と…。」


「まぁ、それじゃぁなんだか分からないわよね!って私も指南書読んだだけだから、参考になるか分からないけど…。」


そう言うと、ヒソヒソと小声で何かを言っては、バーバラが顔を赤くする。そんなやり取りが少しの時間続いた。


そしてお渡りの時間。

マルクスはバーバラの部屋へ入って行くのを、柱の影からヘレーネが睨むように見つめていた。


つづく。

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