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処刑された側室は、もう皇帝を愛さない。  作者: 白 月虹


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17話 自供

「ヘレーネ、そんな事でクビなんて可哀想じゃないか?」


「ですが…。」


ヘレーネはチラっと侍女を見る。


「今は、君の部屋で気兼ねなく昼食を頂こうとしているのだ。私はパンが無くても良いよ?」


マルクスは務めて優しく言う。

胸元のポケットに手を当てながら。

――そこには、アンリネットから手紙が入っている。それだけで冷静になれた。


「…マルクスがそう言うなら。」


たった30分。

ヘレーネとの会話は、退屈なだけで、マルクスの気分はどんどん悪くなっていった。


(もう、限界だ…。)

「すまない、ヘレーネ。

まだ仕事があるから、この辺で失礼するよ。」


「そうですか…では、夕食に!」


「…そうだね。夕食の時に。」


マルクスはパンを落とした侍女に視線を向ける。だが、俯いたままの侍女とは目は合わなかった。


皆が出ていくと、ヘレーネと侍女たちだけになる。


「ジャッカルって…もしかして…。」


ヘレーネが侍女に問いかける。


「はい…。」


それだけでその場に居る者たちには理解出来た。


「はぁ…その男、喋らない保証はないわよね?」


「…。」


「貴方、その男の事…殺せないの?」


「っ!」


侍女たちが一斉に驚く。


「はぁ…今のは無し。無理よね…。」


ヘレーネは苛立ちを顕にしながら続けた。


「マルクスが何処まで調べているか、わからないから、いっそ、貴方がやりました。って言って来なさい。」


「えっ…そしたら私、どうなりますか?」


「島送りくらいじゃない?」


興味なさげに言い放つ。


「そんなっ。私、ヘレーネ様のために勤めて来たのに!」


「動揺してパン落としたくせに、何言ってるのよ。貴方が罪を認めれば、少しは役に立つでしょうけど!」


「酷い…。」


侍女の手は血が滲む程、握り締められていた。


一方マルクスは、ジャッカルと言う男を地下牢で縛り尋問していた。


「全て正直に話せば、死罪は免れよう。」


「…。」


「何も言わないのなら、あの侍女を連れて来ようか?」


「っ!」


ジャッカルの目がぴくりとする。

そしてその反応を見逃すはずはない。


「気になるか?侍女はもうすぐ皇后に捨てられるだろう…。私たちは真相が知りたいだけなんだ。不可解な事件が多い…皇帝として、秩序を正すのも仕事だ。話してくれないか?」


「…侍女には、罪はない。」


そう言うと、ポツリポツリと話し始めた。


夕方、執事長の元に、赤く目を腫らしたヘレーネの侍女が訪ねて来た。


「どうした!?」


「…お話したい事があります。」


目は潤み鼻を啜りながらでも言葉は強かった。

そうして執事長と共に、マルクスの書斎へ入って行く。


「全てお話しします。」


そう言うと、ヨット事件の侍女の殺害をジャッカルに依頼した事から始まり、今回の毒事件の経緯を話し始めた。


「同じくジャッカルに毒を頼み、ヘレーネ様が自らそれを飲み、陛下たちと合流した後、アンリネット様の部屋に小瓶を隠すと言う計画でした。」


「なんと酷い…。」


執事長がポツリと言う。


「それと、一年半前のバーバラ様を階段から突き落としたのも、私です。」


「あれもヘレーネの指示なのか!?」


「はい…ヘレーネ様の嫉妬は段々増していき、アンリネット様の嫌がらせの仕返しで憂さ晴らししてましたけど、今は嫌がらせが無くなったので…。」


そう言い終わると、マルクスは目を丸くした。


「嫉妬…私が、側室を迎えたからか…。」


「ですが、それは皇帝として、お世継ぎの為には必要な事です!」


執事長が言うと、マルクスが首を振る。


「私は…ヘレーネは夜の務めが嫌なのかと思っていた。」


「それは違います。ヘレーネ様は、


『一度失敗したけど、今度こそは!』


と言っていましたから。」


「…そうか。」


【失敗】と言う言葉に疑問が残ったが、マルクスは今回の事件を重く受け止めていた。


「沙汰は追って出す。

ジャッカルと共に、北の塔へ。あそこならヘレーネも近寄れまい。」


「わかりました。」


北の塔は、城の敷地内にも関わらず、湖の真ん中の孤島に小さくそびえる塔だった。



つづく。


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