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処刑された側室は、もう皇帝を愛さない。  作者: 白 月虹


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15話 希望の便り

「陛下!ヘレーネ様が!…目を覚まされました!」


「そうか!今行く。」


アンリネットとリリー以外の者たちは、ヘレーネの部屋と向かった。


「アンリネット様…。」


リリーが心配そうにアンリネットの手を取ると、アンリネットもまた握り返した。


「大丈夫よ。すぐに疑いも晴れるわ。」


務めて明るく振る舞うアンリネットに、リリーの心は痛むだけだった。


「ヘレーネ!」


マルクスが勢いよく部屋へ入ると、ヘレーネは体を起こして微笑んだ。

少し違和感を感じたが、目を覚ました事に安堵していた。


「マルクス…心配かけてごめんなさい。」


「いや。それより大丈夫か?」


「ええ。それより侍女に聞いたわ…アンリネット嬢が疑われてるって。」


ヘレーネは悲しそうな顔をしながら続けた。


「私が居なくなったとしても、マルクスの愛を得られる事はないのに…なんて愚かな…。」


「…俺の愛?」


「そうでしょ?私と、バーバラ嬢が居なくなればと思っ――」


ヘレーネが言いきる前に、マルクスは遮るように口を開く。


「はっ!アンリネットからは、もう…諦めたと言われた。だからもう追いかける事も、愛される事もない。」


「え…。そんなはずありませんわ。あんなに陛下、陛下と視察先の街にまで行ったのに!」


ヘレーネは信じられない。と言わんばかりの様子だった。

そんな会話を見ていたバーバラが、ひょこっと二人の間に顔を出した。


「ヘレーネ様、血を吐く程の毒だったのに、お元気ですね。」


「なっ!?」


ヘレーネはわざとらしく咳をすると、そのまま横になった。


「どこが元気なんですか!?」

「そうよ!ヘレーネ様は、被害者よ?」


ヘレーネの侍女たちが、バーバラへ詰めよると、マルクスが手で制止する。


「お前たち、バーバラは私の側室だぞ?

無礼ではないか!?」


「お辞めなさい!」


ヘレーネが侍女たちを下がらせる。


「マルクスがいる前では余計な事しないで!」

「すみません…。」


ヘレーネは侍女の耳元へ顔を寄せ囁くと、侍女は小さく頷いた。


「マルクス…今夜は一緒に居てくれるわよね?」


ヘレーネは瞳を潤ませながら言うと、マルクスは頷いた。


「あぁ…。」


そして、執事長と衛兵たちに耳打ちをすると、部屋を出ていった。


「バーバラも、部屋へ戻れ。」


「…はい。ヘレーネ様、お大事に…。」


そう言うとエリスと、ヘレーネの侍女と共に部屋を出た。


「…マルクス、二人きりの夜は久しぶりね。」


「そうだな。夕飯を運ぶように言ったから、一緒に…。」


「まぁ、嬉しいわ。」


そうして、二人きりの夜が終わろうとしていた。


その頃アンリネットは――

地下牢にいる訳ではないため、リリーと一緒に夕飯を食べ、お喋りをしたり、部屋から出られないだけで、なんの不自由もなかった。


「……あんな小瓶知らないわ。」


アンリネットが呟くと、リリーに聞こえたのか、頷いた。


「あ、ごめんなさい。独り言のつもりだったのに。」


「いえ!こちらこそ…本当に掃除をして…その後誰も…」


――!


二人は同時に何かが浮かび顔を合わせた。


「お茶をしてる時、なんでヘレーネ様一人だったのかしら…。」


「おかしいですよね!?

毎日、あの侍女たちが金魚のフンように着いて歩いてるのに。」


二人は考え込むと、リリーがはっと何かに気づく。


「侍女が小瓶を置いたとか!?」


リリーの言葉に、アンリネットは目を瞬いた。


「まさか…。」


そう言いかけて、また考え込む。


「……でも、それなら辻褄は合うわね。」


「えっ!?」


「私の部屋から小瓶が見つかった理由も、ヘレーネ様がお一人だった理由も。」


「なら、早く犯人は侍女と――」


勢いよく立ち上がるリリーを、アンリネットは手で制した。


「待って!相手は侍女と言っても皇后付きの侍女よ?ここは陛下の沙汰を待ちましょう。」


疑惑が確信へと変わる日は、そう遠くはなかった。


そして翌朝――


コンコン。ドアをノックすると、執事長が鍵を開け、扉を開けた。


「おはようございます。朝食をお持ちしました。」


一礼すると、侍女たちが入ってくる。


(朝食か…。)


二人の緊張の糸が切れる。


「私の分は、これですね。」


リリーが自分の分を配膳しようとした時、執事長が優しく腕を掴んだ。


「っ!?」


「これを、アンリネット様へ渡して。」


他の侍女に悟られないよう、リリーの手に紙を握らせた。


「はい。」


そうして皆が出て行った後、アンリネットに紙を渡した。


「執事長様からです。」


「何かしら?」


開けて読んでみる。


【貴方と、貴方の侍女が犯人ではない証拠を探している。もう少し待っていて欲しい。

その暁には、ポプリ作りを一緒に。

  マルクス 】


会いに来れないマルクスからの手紙だった。


「えっ!?」


思わず立ち上がると、固まったままその手紙を、リリーに見せた。


「…アンリネット様!良かったですね!」


まるで友達が好きな人からデートの誘いを受けたような、リリーは自分の事のように喜んでいた。


「いや、でも、え?陛下がポプリ?」

(待て待て落ち着いて…社交辞令よ。そうよ不安がってると思って言ってくれたのよ…。)

「いやいや、それでも陛下が私を気遣うなんて!」


アンリネットは自問自答していた。

その様子をリリーは、うんうん。と頷きながら見ていたのだった。



つづく。

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