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第三十話 幼馴染は被害者で加害者

 調停後、リリアは王都を離れることになった。


 オルセーヌ男爵家は不正書簡と虚偽所見書の件で処分を受け、リリア本人にも証言義務違反と不適切な関与の責任が問われた。ただ、彼女が後に証拠を提出し、放火計画には関わっていなかったことから、重い刑罰は避けられた。


 代わりに、彼女は北東の修道療養院で二年間、奉仕を行うことになった。


 出発前、リリアは私に短い手紙を送ってきた。


『謝罪はいたしません。ただ、自分が奪おうとしたものを忘れないために、子どもの療養に関わる場所で働きます』


 私は返事を書くか迷った。


 許したわけではない。


 だが、彼女が自分の弱さを誰かに守らせるだけでなく、自分で責任を負おうとしているなら、それを否定する必要もない。


 私は一枚だけ便箋を出した。


『リュシーへの接触は、当面望みません。ですが、あなたが証言したことは、娘を守る助けになりました。その事実は記録します』


 それだけを書いた。


 リリアからの再返信はなかった。


 数日後、ギルベルトから聞いたところによると、リリアは出発の日、南翼療養室を最後に訪れたらしい。


 彼女はそこで、リュシーのために作られた低い寝台と、小さな薬棚を見た。


 そして、しばらく泣いていたという。


 その涙が誰のためだったのか、私は知らない。


 自分のためかもしれない。


 リュシーのためかもしれない。


 失った居場所のためかもしれない。


 ただ、人は被害者であり、同時に加害者にもなり得る。


 リリアは父に利用された。


 だが、リュシーの部屋を奪う話に乗った。


 その両方を見なければならない。


 私自身も同じだ。


 冷遇された妻だった。


 けれど、リュシーに父親の顔色を読む生活をさせてしまった母でもある。


 だからこそ、私はこれからの行動で責任を取る。


 過去を消すのではなく、未来の寝床を温めることで。

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