試験
コルタはほうとため息をついた。外の装飾だけでも豪華だとは思っていたが、内装もすごい。まず、天井が高い。つまり、普通に広い。それと、装飾が外装に負けず劣らず凝っている。ただの柱一本ずつに、それぞれ微妙に異なる、細かい細工が施されていると言ったらわかりやすいだろう。この学校建設にかかった金で、いったい肉を何枚食べられるのだろうかとコルタは考えた。
「何きょろきょろしているの、あっちよ」
おかげで、ローサにため息をつかれてしまった。コルタは列から少しそれてしまっていたことに、今さら気がついた。
「あれ、こっちには行かないんだね」
コルタはまっすぐ行ったところにある大きな扉を見て、首を傾げた。いかにもどうぞ入ってきてくださいという雰囲気なのに、生徒たちの列の波は、違う方向へと向かっている。
「試験は別の場所でやるんでしょう」
そう言い残して、ローサはすたすたと前へ行ってしまった。コルタも急いで後を追った。残念だ、香ばしい肉の匂いがあっちからしていたのに。
密かにそんなことを思っていると、先頭がこれまただだっ広い部屋に入ったところで立ち止まった。そのおかげで、コルタは列の一番前にいる人物をようやく確認できた。コルタは背伸びしながら、ちょっとだけその人を観察した。自分と同じ色だけれど、それよりももっと艶のある黒い髪を緩くまとめている、妙齢の女性だ。顔立ちからして、エストの人だろうか。
「皆さん、静かにしてください」
ざわめく生徒たちを、彼女はその一言だけで静めた。ただものじゃないと、コルタは直感的に察した。どことなくアレキサンドラと似た匂いがする。いや、あの人と同類にしてはこの人に失礼か。
「軽く自己紹介を。私は、ここで数学と魔法理論を教える、リスタ・ペンサーと言います」
リスタと名乗った女性は、懐から巻紙を取り出しながらきびきびと続けた。
「さっそくですが、皆さんにはこれから試験を受けてもらいます。名を呼ばれたら、この扉の先に一人ずつ来てください。試験が終わったら、広間へと向かってもらいます。では、アベイユ・クロワール」
なるほど、一人ずつなのか。ならば、能力を測ったりなんやかんやするのが中心となるのだろう。リスタ先生の心の声を聴いて、試験内容を確認したいところだが、いかんせんここからでは遠すぎるし、騒音も多すぎる。コルタは断念した。
そして、人数が半分くらいに減ってきた頃、ようやく
「クオーレ・アスコルターレ」
と自分の名が聞こえてきた。緊張で体がこわばる。あ、そうだ。コルタは、リスタ先生の横を通り過ぎるときに、少し耳を澄ませてみることにした。何か、わかるかもしれない。しかし、
[何にせよ、将来が楽しみな生徒たちが入ってきてくれて嬉しいです]
という、ありがたいが何の役にも立たないつぶやき声しか耳に入ってこなかった。もう、仕方がない。コルタは、腹をくくって先の部屋へと足を踏み入れた。
「え?」
コルタは、思わず声を上げた。




