予言
部屋の中は、真っ暗だった。見たことのないほどの漆黒の闇が充満している。これが試験?コルタは軽く困惑した。いったいどういうことなのだろうか。そのとき、
「なるほど。…面白い」
そんな言葉とともに、突然コルタの目の前に鳥が現れた。金色に闇の中に光る、美しい鳥だ。こんなところに鳥とは、ますますわけがわからない。試験官だろうか?コルタは声を聴いてみることにした。よくわからない人外と、いきなり交流を図る勇気が湧いてこなかったのだ。
しかし、何も聴こえてこなかった。
コルタはさらに当惑した。多少の例外はあれ、たいていの意思を持つ生き物からは声が聴こえてくるのに。これはちょっとおかしい。そんなことを思っていると、フェデルタがぐいっと腕に力を込めてきた。
[コルタ、こいつ、あれだよ。不死鳥〈フェニックス〉だよ。ほら、この辺の人間たちに魔法を授けた奴!]
コルタはその声を聴いて、目を丸くした。そんな話、初めて聞いた。そんな伝説級の生き物が、どうしてこんなところにいるのだろうか。そもそも、ここはどういう場所なのだろうか。
もう仕方ない。無言の間にも飽きてきた。コルタは言語的コミュニケーションを試みることにした。
「あの、ここはどこなんですか?」
「心の部屋だ。より詳しく言えば、入った者の内面の真実を映し出す部屋だ」
声にならない声のような音で、不死鳥がご丁寧に説明してくれた。コルタはそれを聞いて、心の中でため息をついた。つまり、自分の中身はどす黒いままということか。全く嫌になる。何が面白いだ。
「それで、あなたが試験を担当してるんですか?」
「いいや、違う。試験の内容はもっと単純だ。自分の内面と向き合いながら、あそこに見える扉から出ていくだけのこと。簡単だろう?」
不死鳥は前方をくちばしで指した。確かに、うっすらと白い光が見える。よく見ないと気がつかないほどの小さな光が漏れていた。
「じゃあ、なぜあなたがいるんですか?」
コルタは純粋な疑問をぶつけた。伝説の獣がわざわざ自分の前に姿を表した理由がわからない。
いや、わかった気がする。コルタは少しうんざりした気持ちを抱えながら、たずねた。
「忠告ですか?」
「もちろんそれもある。だが、それだけではない」
「回りくどいですね」
コルタは素直にコメントした。
「誤解を招かないようにしなければいけないからな。できる限り正確に伝えなければならない」
「なぜ?」
「私たちはそのために創られた」
不死鳥は淡々と言う。コルタは訊いてはならない領域に近づいてきていると感じながらも、好奇心から思わずたずねた。
「誰に?何のためにですか?」
「おまえに伝えるには、まだ早すぎる。私が伝えたいのはこれだけだ。
光は影。影は光。暗闇に橋を渡せ。そして守れ。全てが反転するとき、鏡に映る不屈の薔薇は凛と咲く。黎明のために力を尽くせ。星々と共に、夜明けへいざなえ」
コルタはその言葉を聞いて、しばらく考えた。そして、一つの結論を導き出すことに成功した。
「もう少し、具体的に教えてください。誤解を招かないように頑張っているんでしょう?」
「こればかりはそうもいかん。予言の力は強い。時間軸にも問題が発生する。それでは、達者でな」
そう謎めいた言葉を残して、不死鳥はどこかへと消え去った。
コルタはしばらく、唖然としていた。




