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009[ちょっと風味の違う恐怖]

[ちょっと風味ふうみの違う恐怖]


カーテンを閉め、街灯がいとうの明かりも入らない薄暗い部屋の中

エアコンを効かせてすずしくし、蝋燭ろうそくの光でコーヒーを楽しむ


東条トウジョウが『ヤマッチって今日、茶室に来てなかったよな?』

と、サンちゃんに言う

『そっち行かずに、ユリとたこ焼き買いに行ってたからな

つぅ~か…教室出た後、次に会ったのは食堂だったろうが忘れたのか?』

と、サンちゃんが返す


皆が、個々それなりにダメージを背負う中

「東条め…一人、元気だな」と、私は思う

東条だけは「何も無かったじゃん」と主張して、何時も通りだったのだ


私は、雑木林で遭遇そうぐうした出来事のダメージが残っていて

つくえに突っして、その光景を横目で静かにながめていた。


『じゃ、コレは誰から誰へのメッセージだ?』

東条がビニール袋に残った懐紙かいしを机の上に広げ、文字を指す

・・・「私を止めて下さい。」・・・

ソレは、懐紙に書かれた手書きのメッセージだった


私は興味きょうみを引かれて顔を上げ、だまってソレをのぞき込む


岡田オカダさんと作法の先生、両方から和三盆わさんぼんもらって

たこ焼き貰った御礼にと、そのドチラカをサンちゃんにゆずったのは私だった

身を乗り出し文字を眺めて、首をかしげて悩む


ソレは、シャーペンで薄く書かれている綺麗きれいな文字だった

『岡田さんかな?』と、私は懐紙を手に取り蝋燭の光にかざつぶやいた。


「岡田さん」に心当たりが有ったらしいユリちゃんは

『何を「止めて欲しい」んだろうね?やっぱ、アレかな?』

と、化粧直けしょうなおしをしながら

皆に見える様に、化粧道具で卑猥ひわいな表現をして見せてくれる


シン君がほほめ、視線をらし

私は『マスカラ乾くよ…』と、化粧道具の心配をしてあげた。


私は気分転換の為に「私を止めて下さい。」について考える

「やっぱ、アレかな?イヤ、違うか?

現カノのはずだよな?ん~でも、別れた可能性もある?

そうだとしたら、その可能性もあるけど…でも、声が違った様な?」


私は色々考えて、ユリちゃんの考えに近い可能性もみちびきだしたのだが

しっくりこなくて考えるのに挫折ざせつした。


『よし!現場検証げんばけんしょうに行ってみよう!』

何処どこにですか?』私の言葉にシン君が反応する

『まさかさっきの雑木林?』と、言われたので首を横に振り

『屋上と渡り廊下から見た教室』と笑顔で言う


私は立ち上り、そのままの格好かっこうで外に出ようとして・・・

その場に居た全員に引きとどめられる事になるのであった。


『シロちゃん駄目だめ!ソレは誰がゆるそうとも私が同性として許せない!』

ユリちゃんが扉の前に立ちはだかった

『そうだよ、ギンちゃん!女の子がその格好で歩き回っちゃ不味まずいぞ!』

私が女だって最近まで知らなかった、気付きもしなかった東条が

突然、女の子扱いしてくれる。


アキからは・・・

『俺を置いて行くつもりか?

つか、そもそも…俺よりマシな格好してはいるが…

お前の今の格好も、そのまま歩きまわってたら通報されんぞ?』との事だ


私はずっと脳裏に残り続けている雑木林での事を忘れる為に

その発想を、鼻で笑い飛ばす

『大丈夫だって、そんなに学校に人が残ってないだろうし

誰かと遭遇する可能性も少ないだろ?』と


でも『不味いだろ?流石にその格好だとヤバイだろ?

モラルの無いオッサンが居る学校だぞ、おそわれる可能性が有って!』

と、アキが言った


なさけない事に我が校では、中々の説得力のある発言だった

シン君も女の子みたいにほほを染めつつ、同じ様な事を言ってくれる。


だが、しかし・・・さっきからSっ気を刺激しげきされてしまっていて

私は私を女と最近まで認識してくれていなかったアキに対して、ニヤニヤ笑い

『女子力の低い私の服の中身を見たいやついないだろ?

ん?もしかして…見たいのか?』何て事を言ってしまう


すると、まるで芸人さんがえんじるコントの様に『痴女ちじょおのれは!』と

サンちゃんに後頭部を軽くはたかれてしまった。


ゴロちゃんが大きな溜息を吐いた

ゴロちゃんは私の首根っこを逆手さかてつかみ、後ろから前へ私の肩を抱き

となりの部屋でストーブと扇風機せんぷうき使って、服を乾かしてやるから

服が乾くまで大人しくしておいてくれ

言う事を聞かないと…間違って殺してしまうのも覚悟して意識をうばうぞ』と

私の耳元で優しくささやいてくれる


「うわぁ~…本気だよ、この人」

私は抵抗ていこうする事無く、体をゴロちゃんにあず

『了解、ゴロちゃんの指示にしたがいまぁ~す』と言った。


素材が化学繊維ではあったが、服や下着が乾くのにしばらく時間が掛かった

ちなみに乾いても服がホット過ぎて、冷めるまで待つ事になった


やっと着替える事が出来る様になって、移動可能になったのは

屋上と渡り廊下から見た時や、雑木林での事が有た時から

軽く数時間は経過していた。


くつはまだ、少し湿しめってたかも…」

私は「よし!現場検証に行ってみよう!」何て事を言ってしまった事

ソレを行動に移そうとしてしまった事を後悔していた


そんな中、私達は中庭を歩き最初に校舎に入った場所へと向かっている

「今更行っても、何にも分からないと思うんだけどなぁ~」と思いながら

私は皆を先導するゴロちゃんに従っていた。


何の障害も無く、目的の教室の前に辿たどり着いた

当たり前の事だが、教室の扉は閉ざされ鍵が掛かっている


此処ここの鍵は、流石さすがに加工したアクセサリーじゃ開かないか…』と

ゴロちゃんが残念そうにしているので私は・・・

はしらの中腹に設置された消火器を収納した赤い鉄の箱を開け

その中にマグネットで貼り付けられた、薄くて平たい赤い箱を取り出し

その箱に隠された鍵で扉を解錠かいじょうして、隣りの教室の扉を開けた。


そこは目的地の隣の教室である・・・

私以外の皆が他の学科の生徒である為か?私の行動に皆が驚いていた


私は、皆が驚いている理由に全く気付く事も無く

当たり前の事だったのだが、黙っていても誰も教室に入る様子が見えないので

『ど~ぞ!入りたい放題だぞ』と皆をさそってみた。


すると、サンちゃんが代表して

『何か駄目だめだろ…

実験室とかに勝手に自由に生徒が入れちゃ駄目だろうっつ~か…

そもそも目的地って、隣りの部屋だろ?』と、言う


確かにそうなのだけれど・・・

『勝手に入られてこまるモノは置いてないから大丈夫でしょ?」

と、私は答え…目的地に付いての事は無視する。


皆で実験室と表示された教室に入る

重苦しいカーテンと廊下側に窓が無い事以外、変な所は無い


ゴロちゃんが1人歩き回り、本当の目的地である準備室の扉に手を掛けた

勿論もちろんそこは、薬品棚やくひんだなが有るので、戸締とじまりがしてあるのだけれど・・・

『そっちも入りたい?』と私は訊いてみた


『もしかして…開けられるのか?』とゴロちゃんが言うので

『手伝ってくれたら…ね』と言って

私は開ける気満々で、扉に手を掛けていた。


当たり前の事かも知れないが…

此処に出張って来る様なメンバーにそないに節度は無い


私は躊躇ちゅうちょなく扉の大きなアクリル窓のわくを2か所外し

アクリル板を手前に引っ張って

『ゴロちゃん、ちょっと持ってて』とアクリル板の事を頼み

私はその隙間に手を入れてドアノブを回して鍵と扉を開けた。


扉を開ける前から、私は違和感いわかんおぼえていた

アクリル板の隙間すきまから流れ出て来る風が、やたらと冷たい

そして薬品臭さに混じり、何かの臭いが混じる


私とゴロちゃんは、解錠したものの

扉を開けて入る勇気が中々出なかった


私とゴロちゃんが顔を見合わせ黙って見詰みつめ合っていると

ユリちゃんが私とゴロちゃんの間に割って入り

無言で扉を開けてくれる


取敢とりあえず、そこには何にも無かった、一応無かったけれど・・・

窓際に設置された水道の下はれ、低い温度で準備室は冷え切っていた。

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