003[類友は集まる方向]
[類友は集まる方向]
草むしり終了後・・・
顧問の先生と作法の先生が準備した冷たいお茶を紙コップ1杯の貰って飲んで
冷房が効いた茶室で涼を取る
あちらこちらで、女の子達が
自らにシュ~っとデオドラントスプレーを吹き掛けていた。
私は不意に思う・・・
私自身が、柑橘系を基本とした香りしか付けない主義なのと
私が意識的に「強いフレグランスの香りをさせる異性」は、勿論
同じく「強い香りを身に纏う同性」の側にも寄らない傾向にあったので
今まで気付かなかったのだが・・・
汗と、色々な香水やら多種多様なデオドラントスプレーの香りが混ざり合うと
悪臭に変化する事が有るみたいだ
私はそんな、ヨロシクナイ香り漂う涼しい茶室の中で
「この香りも混ざってヤバイ香りになってるんだろうな」と思いつつも
柑橘系の香りのするデオドラントシートで汗を拭き
『女の子みたいな事するなぁ~』と東条に突っ込まれながら
心の中で「女だからね」と思いながらも『使うとスッキリするよ』と言って
香水用のアトマイザーに移し替えた、似た柑橘系の匂いのデオドラントウォーターを
脇に背中、胸元に吹き掛けた。
暫くすると汗は引き、茶道部の女の子達の部活動が始まった。
キャッキャと騒ぐ同学年の女の子達や、無邪気な様相で忍び寄る後輩
外堀から上手に攻めて来る、先輩なお姉様達に囲まれて
東条を含む、それぞれに対する餌に釣られ草むしりに参加した男共が
「帛紗の折り方」を無理矢理、半ば強引に教え込まれ…困っている御様子だ
私はソレを横目に・・・
『岡田さんがいらっしゃるから知ってるとは思いますが、違う学科でも歓迎しますよ!』
『いえいえ、御構い無く』
『部活動のある日は、低価格で抹茶と和菓子が食べられますよ?』
『でも、作法を守らなきゃ駄目なんでしょ?』
『そうですね!一応、曲りなりにも茶道部ですからね!』
『ですよね…すみません!遠慮させて貰います。
自分、抹茶飲みながら和菓子を頂きたい派の不作法な人間なんですよ』
『あら?それでも初歩的な作法は知ってらっしゃるんですね…』
『ええ、不作法ながら…抹茶を飲むのは大好きなんです。』
『御抹茶が好きなら、御作法の方にも一歩踏み込んで見ては如何ですか?』
『いやいや、抹茶を飲みながら和菓子を味わえないのはちょっと無理です。』
私は『姿勢が綺麗ですね』と声を掛けてきた
着物を綺麗に着こなす、上品な雰囲気の結構年上な女性「作法の先生」に絡まれながら
先生が点ててくれた、美味しい御抹茶を味わい
多分、リカの分だったであろう・・・
岡田さんが多めに融通してくれた、四国の和三盆で舌鼓を打っていた。
が、しかし・・・
幾ら美味しくても、抹茶と和三盆だけでは飽きてしまうモノ
「そろそろ、帰りたいなぁ~」
私は、可愛らしい形をした一口サイズの小さな和三盆の形を楽しむ振りをしたり
『コレ、美味しいですね…何処のですか?』と、情報収集をして
『京都のが好きだったんですけど、四国のも凄く美味しいですね
今度、ネットで注文してみようと思います。』と、話題を逸らす
私の狙いは的中したらしく、作法の先生は四国出身だったみたいで
本当に嬉しそうな顔をして
『そうでしょうとも!うどんだけでなく、和三盆も四国が本場なんですよ!』と
和三盆を沢山、勧めてくれた。
だが、此処は一つだけ頂き
『美味しい物は、ゆっくり味わいたいんでコレでもう十分です。
他にも用事があるので、そろそろ行かなければイケナイので…』と
食べながら帰り支度を始め
『製造販売者の情報メモさせて下さいね』と、生徒手帳にメモを取る
作法の先生は感心した御様子で、私の和三盆に対する気持ちが伝わったのか?
『開封した余りの物で良ければ、残りを持ち帰られますか?』と
嬉しそうに和三盆を懐紙に包んでくれた
私は先生の手を握る程のオーバーリアクションで喜んで見せて
『良いんですか?嬉しいです!ありがとうございます!』
和三盆を御土産を貰い、一足先に私だけ茶室を出た。
冷房の効いた場所から出ると、湿った重苦しい熱気に押し潰されそうになる
而も…嫌な臭いを嗅ぎ取ってしまい、吐き気を感じてしまう
「もう少し、日が陰ってから帰る事にすればよかったか?」
私は後悔しながら口元を抑え、吐き気を堪えて立ち止る
多分だけど、コノ臭いは日光で熱せられ蒸発している「池の水の臭い」と
雑木林を少し進んだ奥、常緑樹で囲まれた雑木林の外にある
堆肥置き場の堆肥の臭いが混ざったモノなのではないか?と、私は考える
余計な思案をしている内に、冷たく感じる汗が流れ
「ちょっと、この状態って…不味いか?」と、歩き出すと
私を追ってきたのであろう、東条に後ろから腕を掴まれた。
東条に『大丈夫か?』と訊られ
「この糞熱いのに、寒く感じるなんてヤバイ」と危機感を感じつつ
私は気力で姿勢を正し『何が?』と笑って見せる事にする
言わずと知れた事かも知れないが
見栄っ張りな私…「格好が悪いので」虚勢をはってみたのである
でも、即席で簡単なハッタリが東条には効いたみたいで
東条が動揺し、居心地悪そうにしてくれる
私は溜息を吐いて『甘い物の後は、塩分のある物が食べたくならないか?』と
食堂のある方向へと視線を向け『食いに行かね?』と東条を自分から誘ってみる
『おう!行く行く!』と言って、嬉しそうにする東条を見て
私は完全に誤魔化しが成功した事を確信して、速足で食堂へ向かって歩き出した。
指先が痺れ…肺と気管が重く冷たく感じ…冷たい汗がまだ、流れ続けている
私は密かに焦る「此処で倒れでもしたら…泥だらけになってしまうではないか!」
倒れた後、乗って帰る電車での事を考えて私は気力で歩く
『歩くの早っ!』と、東条に言われてしまう程
自然に歩く速度が上がってしまうのを
『早く涼しい場所に行きたいんだよ』と言いながら、私は止める事が出来なかった。
暑い中、私的にやっとの事で辿り着いた食堂で
学校の正門近くのたこ焼き屋で買った「たこ焼き」を持ち込んでいる先輩と出会う
私は『シロちゃん』と呼ばれて、躊躇無く
『ユリちゃん!マヨネーズ掛かって無い所を1個頂戴』と要求し
『まだ熱から…』と冷まして貰い、割り箸で食べさせてまで貰った。
一緒に食堂に来た東条がまた、私が呼ばれた名前が違うのを気にしている様子で
『ギンちゃん、何でシロって呼ばれてんの?』と、小声で訊いて来る
たこ焼きを食堂に持ち込んでいた
「内田 百合(ウチダ ユリ)」先輩は、東条の様子が面白いのか?クスクス笑い
『私が「シロちゃん」を「シロちゃん」って呼ぶのは
私達だけの秘密よねぇ~…ねぇ?サンちゃんも同意見よね?』と
ユリちゃんと一緒に居た私と同級生の「山中 三音(ヤマナカ ミオン)」を巻き込んで
無駄に私の秘密を増やしてくれる
ホントの所、私の呼び名は・・・
敢えて訂正する事無く、ヒューマンエラーを放置した結果の産物なのだが
それを東条に理解してもらえるまで説明するのは面倒なので
ユリちゃんが準備してくれた言い訳を流用して秘密と言う事で放置する。
『そうそう…今夜、肝試しするけどシロちゃんも来る?
ゴロちゃん来るから、来るよね?
サンちゃんのたこ焼きを私に食べさせて貰ったんだから、絶対来るわよね?』
私は一瞬「アレま…サンちゃん怒ってるかな?」とサンちゃんを見て
怒っていなさそうなので、本当のたこ焼きの所有者のサンちゃんに
『美味しかったよ』と言ってから
ユリちゃんの強引な御誘いに対して
東条に視線を向け、一緒に行きたそうなので『連れを誘って良い?』と訊ね
OKが出たので、東条の意思を一応、再確認し了解を得て
東条の様な、何にも知らない人が目にしても
実質、私の事を「レズビアン」と疑うサンちゃんが見ても
赤面する様な行動をユリちゃんに対して取り
「東条とサンちゃん」2人の男子高校生の平常心を混乱させる様に
『今夜、ユリちゃんのベットで一緒に寝られるならOKさ』
なぁ~んて台詞を恥ずかしげもなく
人様を混乱させるのが大好きなユリちゃんの為に、大奮発した。




