皆高のデジャブ
前回の、窿太郎の回想が続きます。
因みに、それぞれの適性魔法については「後書き」にて一人づつ紹介して行きます!
今回は鳴海です。
魔法の設定や世界観などは後後の「後書き」に雑談形式で載せますが、「んなもん、まどろっこしいわぁぁ!」と言う方は、第3章手前に載せる「世界観もろもろ」をご覧下さい!!
「って、そうじゃねぇ!俺ら森に行かなきゃいけねぇんだぞ!魔物いるんだぞ!アブねぇだろうが!」
選定された第二王女チーム以外は謁見の間から追い出され、剣の稽古をする練習場に移動させられていた。
その瞬間に、ハッと我に返った皆高が窿太郎に向かってわめきだしたのだ。
「どうどう、落ち着きたまえ。というか、俺に言われてもどうしようもないだろう」
「そうですよ〜。案外魔物とか可愛いうさぎさんとかだったりして」
「俺としてはますますダメだー!」
「え、何お前、動物好きだったか?」
「当たり前だ!」
「いやいや、お前基準で語るんじゃない」
「あのつぶらな瞳、汚れを知らないその心!笑顔を見せればなぁにと言わんばかりに首をかしげるその仕草!小さな肉球でポテポテ歩くその愛らしさ!懸命に生きるというまっすぐな志!そして、構ってと言わんばかりに甘噛みするその可愛らしさ!そしてそして……」
数時間後。
「ギャァァァァァァァ!なんだこの犬歯の多さはぁぁぁぁぁ!しかも何この早さぁぁぁぁぁぁぁ!」
皆高は、胴体と同じ大きさのサメのような口をガパッと開けた白うさぎに追いかけられていた。
「天野っち、そっち行きましたよ〜!」
「ラジャー」
全速力でこっちに走ってくる皆高を、上の丘から目で追っている鳴海が伝達をくれる。
窿太郎が手をひらひらと手を振ってそれに返事をしていると早速、皆高が半泣きになりながら角から急カーブしてきた。
それはもうキキーッと効果音がつきそうなくらいの方向転換であった。
明らかに身体能力が上がってるだろうとしか言えないスピードで向かってくる皆高と、尋常ではない速さのウサギを見て、
「だからさ、この世界は重力が薄いのか!それとも俺のレベルが低いだけなのか!どっちなんだあ!」
と嘆きながら、窿太郎の足元へダイブした皆高を飛び越し、手にした剣で目の前の空間を薙ぎ払う。
手応えのある重さと鈍い音を聞きながら、真っ二つになった白ウサギが落下すると同時に窿太郎は着地した。
「お見事です。さっきの嘆きがなかったらカッコよかったですよ〜」
「おい!窿ぅ!さっき俺を飛び台にしただろぉ!」
「知らん。そこにあったから使っただけです。お前こそあの小動物への愛情はどこ行ったんだよ、白ウサギちゃんが真っ二つになってるぞ」
窿太郎が指差した先には、鳴海にツンツンと靴先で突かれている、ピンク色の中身が出ている白ウサギの死がいた。
「あんなのがウサギとは認めねぇ!なんだあのサメみたいなギザギザした口と歯は!おかげで死ぬところだったわ!しかもカエルみたいな飛び方しやがって!なんだあの速さ!いろんな動物の要素を掛け合わせすぎなんだよ、バカヤロー!」
「そもそも、お前が外見だけの可愛さに油断して自分から触りに行ったのが原因でしょうが」
「うっ!それはそうだけどよ・・・」
「おまけに口閉じた見た目は可愛いからって、反撃せずに逃げるだけで何の役にも立ちませんでしたね〜」
「ガハッ!」
皆高はドサリと足元の茂みへ倒れ込んだ。
あらら。
言葉の暴力に耐えきれなくなった彼は、胃痛を起こして倒れたようだ。
傍から見たら、ムカつくくらいの能天気な会話を繰り広げている彼らは。
そんなこんなで、『花盛りの森』で絶賛、課題という名のスパルタレベル上げを繰り広げている。
宰相の指示通り騎士団と一緒に踏み入れたこの森は、名前の通りに想像していた花が咲き誇っている森とはかけ離れていた。
昼間なのに鬱蒼としていて暗い。
まあ、森っていうくらいだから当たり前といえば当たり前なのだが。
獣道すらないところを何分か歩いた先で騎士団がテントを立て始めた。
そこで指揮をとっていたのは第二騎士団長。
ちなみに、以前に教えてもらっていた騎士さんは、その部隊の副団長だったらしい。
しかめっ面の隊長や爽やかな雰囲気を崩さないアルヴィスさん、その他せっせと動いている騎士。
神様。
何故、異世界の騎士団はこんなにイケメンが多いのでしょうか。
その遺伝子を少しくらいくれてもバチは当たらないんじゃないだろうか。
その事を皆高と愚痴りつつ、支給された短剣と長剣、そして火起こしの魔法石と水筒を確認した。
まだ暇があったので、休憩所が立ち上げられているのをぼんやり眺めていると、集合の号令がかかった。
騎士はビシッと、生徒はノロノロと団長の前に整列する。
集まった先で団長が窿太郎たちに述べたのは、生徒たちが固まるあの内容だった。
「はあ、あと19体か。しかし!俺は毛皮布団毛布のために死力を尽くす!」
窿太郎はため息をついた後、バッとガッツポーズを作った両手を空高く掲げた。
ふふふ、動物の毛皮毛布。
なんて素晴らしい響きだろう。
これで昼寝も最高のものになるはず!
「ほんっと、ブレないですよね〜。しかし、合計20体の魔物を狩ってこいだなんて無茶振りもいいとこです〜」
「うぅっ。しかも一人20体。騎士たちの補佐なしとか鬼畜以外の何物でもないだろぉ・・・」
鳴海が肩をすくめた。
皆高に至っては泣きべそである。
そう、これが団長から言い渡された課題だ。
生徒らは反論したにもかかわらず、騎士たちの抜いた剣を突きつけられて仕方なく散るようにして狩りを始めたのだ。
反論は許されない、王の命令であった。
団長とアルヴィスさんはその場からすぐに去ったが、騎士たちはテントを囲むように外側を見張り始めた。
おそらく、生徒たちへの牽制だろう。
魔獣の毛皮を持参するまで入れないようだ。
面倒臭い展開だなと内心呟きつつも、窿太郎は気がついてしまった。
相手は魔獣だ。
ということは狩ればその素材が手に入る。
その素材は狩った証拠として必要になるがそれ以外は好きにしていいらしい。
つ・ま・り
魔獣の毛皮を使って、夢に見ていた動物毛皮毛布で熟睡するという夢を叶えることができるのだ!!
しかもアニメとかラノベでは魔獣の毛皮は最高というイメージしかない!
そして窿太郎は夢を達成するために、この狩は殺る気満々なのである。
「うー。鳴海ちゃんと窿がいてくれてよかったぜぇ」
「俺よりレベル高いのに、まだ泣いてんのか。置いてくぞ。俺の毛布のために迅速に行動せねばならん」
「高っちは役立たずなんですから、囮で勘弁してあげますよ〜」
「ひでぇ!それいじめっ子のセリフだぞ!いじめダメ絶対!」
「うるさい。魔物に気づかれるだろうが」
ミシッ
「ギャァァァ!頭割れるっ、ごめっ、ごめんって!」
「うるさいですよ〜、お、ちょうどいいところに猿轡が」
「ぐげっ。んむーーーーーーー!」
そのあと、窿太郎たちは他の場所へ魔物散策に向かった。
静かに風と水魔法を行使する鳴海に続き、皆高も練習がてら火と土魔法で退治していく。
だが、全ての魔法に対する適性のなかった窿太郎は2人にサポートしてもらいながら剣で挑むしか無かった。
その剣さばきに、違和感を感じた鳴海が質問を投げかけても、窿太郎は笑ってはぐらかしているばかり。
追求しようとしても躱される鳴海に、少し不機嫌さが垣間見得るようになった頃。
静かに慎重に進んでいると、後ろから皆高が声をあげる。
「むむっ。んむー」
「前方に人影らしいですよ〜」
「なんで言ってることわかるんだ・・・。というか、高はいつまで猿轡はめてるんだよ」
手が自由になっているにもかかわらず、彼は猿轡を咥えたまま歩いていた。
エムか。エムなのか!
男のエムはお姉様方に引き取ってもらいたい、などとどうでもいいことを思いながら人影を注意深く木の陰から探す。
すると、前方から声が聞こえた。
「おい!泣いてんじゃねぇよっ!行くのが嫌ならそこで一生つっ立ってろ!」
「お前さー何にも役に立たないんだからさー、いい加減諦めなよ。逃げ足速いとか囮にしか使えないんだから俺らに少しは貢献しろよ」
「そ、そうだぞ。俺らの手を煩わせるんじゃねぇ・・・。ノ、ノロマ」
「なんで・・・。ごめっ、殴らないで!」
「うるせぇな!騒ぐんじゃねぇよ、魔物がくるだろうが!」
「ぐっ!ごめん!お願いだからからやめて!」
ゴスッと人間を蹴る鈍い音が響く。
「ハハッ、だからうるさいって言ってるじゃん。それ以上叫んだら口ん中に魔物の死骸つめちゃうよ?」
「ひっ!」
「あ、あははっ!何そのま、間抜けたビビリかた・・・」
……このくだりどこかで聞いたことがあるような。
そして、どこかで聞いたことがあるような声が。
「デジャブですね〜」
「あの子、ついさっきまでの俺と一緒じゃねぇか」
いつのまにか猿轡をとっていた皆高と、鳴海が窿太郎の隣で茂みに隠れながら目を光らせている。
「どこが一緒だ。あれは完璧な悪意だろう」
「いや、お前らももさっき悪意を持ってやってたよな?」
「ん〜、そんなに持ってなかったですよ〜?」
「ああ!やっぱりちょっとは悪意持ってやってたのか!ひでぇ!」
皆高が抗議すると同時に、茂みからがさりと音を立てて立ち上がった。
「あ、こらっ!」
窿太郎は小さな声で引き止めたが、もう隠しようがないほど相手4人にガン見されてしまっている。
突然の出現にあっけにとられていたいじめっ子3人組は、我に返ったのか一気にわめきだした。
「テメェなんだよ!どっから出てきた!」
「どうどう、俺はなんもする気ないって。落ち着けよ。でもいじめはダメ絶対!」
何が「何にもする気はない」だ。
説教する気満々だろうに。
「うるせぇ!さっさとどっか行かねえと殺すぞ!」
窿太郎はその言葉にピクリと指が反応したが、堪える。
「弱いもんイジメしてるやつなんか怖くもなんともねぇよ!どうせ上の人間にはへこへこするつもりだろうが!」
「あ"?調子乗ってんじゃねぇぞ、偽善ぶりやがって!使える駒を使って何が悪い!」
「なぁ、こいつうるさいからここでボコボコにしない?」
「ちょ、丁度いいよね。サンドバックになってもらよ・・・。ストレス発散になる、かも」
「お前らなぁ!」
ああ言えばこう言う三人組に皆高が熱く抗議していたが、窿太郎と鳴海は面倒ごとは嫌だと彼を引っ張ってその場を立ち去ろうとしていた。
だが。
「・・・テ」
耳にしたのはかすれて聞き取りにくい、絞り出した声だった。
注意深く聞いていなければ聞き逃してしまいそうなその音は、しかし窿太郎の耳には届いていた。
だから、もう見過ごすことは出来なくなった。
鳴海達にゴメンと呟き、この後の窿太郎の行動を予想した鳴海が目を見開いた。
しかし、彼女が何かを言う前に窿太郎は立ち上がって皆高の前へ出た。
「よく見れば、いつかの団子三人組じゃないか。久しぶりだな」
窿太郎は無意識にそう口に出していた。
意識的に笑顔を作って。
目の前の三人組はどっかで聞いたことがある声だと思っていたら、以前悠真の足を引っ張っていた団子三人兄弟だったのだ。
窿太郎「なぁ、結局、鳴海の適性って何だったんだ?」
鳴海「ふふふ、水と風、あとは闇ですよ〜」
窿太郎「闇!?それって、かなりレアじゃないか」
鳴海「イエス!闇魔法か光魔法を持ってるだけで他 の適正魔法も能力が上がるというチートぶりですからね〜」
窿太郎「あー、だからレベルが8だったのか。それが無かったら5か6レベルだったんじゃないか?」
鳴海「そうですよ〜。我ながらくじ運がいいす〜。ふふふ、これなら隠密行動も可能ですね。あんな事やこんな事も……」
窿太郎「ちょっと待て。お前何するつもりだ」
鳴海「ふふっ、人の噂は面白いですよね〜。あの子とあの子が付き合ってたり、浮気してたり。弱みを握るのって楽しいです!!」
窿太郎「そんな恍惚の表情で言われても……。まぁ、程々にな」
鳴海「あらら〜。天野っち、そんなのんびりしてていいんですか〜?」
窿太郎「なんだそれ、嫌な予感が……」
鳴海「昔、くーちゃんと一緒にお風呂入ってたとか」
窿太郎「ブフォッ!!おい、誰の情報だそれ!?」
鳴海「あれ、本当なんですか?幼稚園の頃とはいえ、破廉恥です〜!皆さーーん、聞いてくださーい!!天野っちがーー、幼稚園の頃からくーちゃんにいやらしい事をーー」
窿太郎「やめろぉぉぉぉ!!」




